3-3 Fランク冒険者、勇者に煽り散らす
「お前がアランっていう、クズ勇者か? 俺と戦え」
そう言った途端、ギルド内が凍りついた。
冒険者の視線が、俺に釘付けになっている。
あまり見ないでほしいな。
俺、これからボコられる予定があるんだから。
「クズ勇者とは俺のことか? 雑魚」
「お前以外に誰がいるんだよ。クズがつく勇者はお前しか知らないんだが?」
「……お前の差し金か、リンネ」
俺の後ろにいるリンネさんに気づいたか。
リンネさんが一歩前に出て、俺の隣に並ぶ。
だが、話を始める前に俺が言ってやった。
「違いますー。俺は自分の意志でここにいまーす。……みなさーん! 聞いてくださーい! ここにいる勇者(笑)は、仲間に『弱体魔法』をかけて追放する汚いやつなんでー、覚えててくださーい」
勇者を煽り散らす俺、最高に小物感が半端ない。
でも、スカッとしたわー。
先手は取った。勇者は腹を立てているに違いない。
だが、まだやめてあげない。
「それにー、勇者である彼がー、何でこんなところにいるのかー、仲間だった人に聞いてみたらー、魔王が怖くて逃げてきたんだってさー。ダサいよねー?」
まあ、嘘だけど。
でも、周りにいる冒険者が抱いている勇者のイメージに泥を塗ることはできただろう。
さあ、どう行動する? ゆ・う・しゃ・さん。
「ちょっと、やりすぎよ」
リンネさんがそう耳打ちしてきた。
煽りは十分みたいだな。
(というか、さっきのやばっ! 背筋がゾクゾクゾクっ! てきた。もう一回やってほしいな〜)
リンネさんが、手首をつねってきた。
もしかして、心の中、読まれてる?
それとも、単純に考えていることがわかりやすい?
どっちなんだろうな〜。答えは出なさそうだ。
「仲が良いみたいだな、この雑魚と」
「ええ。彼のお陰で、色々吹っ切ることができたわ」
「なら、見ているがいい。こいつが、地面に這いつくばるところをな。着いてこい、雑魚」
勇者が冒険者ギルドの奥に入って行く。
後ろに仲間らしき人が二人、後を追いかけている。
……あ、いたの? 君たち、存在感なさすぎ。
見た目からして、武術使いと魔法使いだな。
リンネさんが袖を引っ張ってくる。
「あの先に、何があるの?」
「ああ、冒険者ギルドの奥には、訓練場があるんだよ。でも、まともに訓練をする人はいない。あそこでは、リンチが行われてるんだ」
何もしてない人が、気に入らないという理由でいたぶられる。しかも、観客に晒されながらな。
そして、動けないぐらいボコボコにされた人は、冒険者を辞めて、この街から去って行く。
俺はそれを、何十人と見てきた。
「大丈夫なの? 私はアークがとても心配よ」
「大丈夫ですって、彼は勇者です。殺すまではしないと思いますから。……それより、待たせる方が危ない気がしますので、早く行きましょう」
俺たちは訓練場に向かった。
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