4-1 Fランク冒険者、勇者と戦う
そこは、訓練場というより、円形の闘技場だった。
勇者はその奥で立っている。仲間も一緒だ。
「リンネさんはどうしますか? 観客席もあるみたいですし、上で見ます?」
「私は一番近くで見たいわ。それに、嫌な感じだもの」
まあ、確かにそうだろうな。
闘技場を囲むように設置されている観客席には、俺のことを見下している冒険者ばかり座っている。
きっと、俺がボコボコにされるのを楽しみにしているのだろう。
(別に嫌われることした覚えはないんだけどな〜)
俺はため息をついた。
「それじゃあ、アーク。頑張ってきなさい」
リンネさんはそう言って、壁際に移動した。
応援されているのだから、無様に負けるなんてことは許されない。
せめて、一発。勇者に攻撃を入れてやる。
「おい、早くしろ。雑魚が時間を取るな」
「わかってるよ。いちいち、うるさいな」
俺は前に出ながら、文句を言ってやった。
「そういえば、どう決着つけるんだ?」
「俺が負けることはあり得ないが、そうだな……、戦闘不能か相手の敵意が無くなれば終わりにする」
「わかった」
わかりやすいルールで大変よろしい。
「先手をくれてやる。かかってこいよ、雑魚」
おお、優しいところがあるじゃないか。
なら、遠慮なく、やってやりますか。
スキル『明鏡止水』を九十九パーセントに設定。
さっきまで感じていた雑念が消える。
それに、観客の声は全く耳に入ってこなくなった。
次に、『魔力纏い』を発動し、最大限まで身体を強化する。
そして、最後に『風魔法・風靴』を発動した。
「じゃあ、行くよ、勇者」
地を蹴って、勇者との距離を詰める。
勇者は動く気配はない。
トコトン舐めてやがるな。
だが、その余裕そうな表情、すぐに崩してやる!
(――『縮地』)
かなり近づいていた俺は『縮地』を発動した。
そして、勇者の死角に滑り込む。
(くらいやがれ!)
俺は鞘から剣を抜き、首を斬る勢いで振った。
が、勇者に傷一つもつけられなかった⁉︎
(チッ、防御手段を持ってるのか! 勇者ってのは、本当に頭がおかしい。仲間の魔法じゃないのか?)
俺は勇者から距離を取り、すぐに体勢を立て直す。
「どうした、その程度か? 次は俺の番だな」
そう言った途端、勇者の姿が消えた。
その刹那――、煌めく『何か』が見えて、
「――がはっ……!」
壁に衝突した。
どうやら俺は、反応すらできなかったようだ。
それを、今さっき思い知った。
それに、
――やばい。『危機感知』が警告音を発している。
すぐにここから離れなければ――!
俺は壁に埋もれた身体を無理矢理動かし、その場から退避して――
「……は?」
さっきまであったはずの壁が全て崩れていて、廊下が丸見えになっていた。
(さっきの攻撃食らってたら、死んでたな)
俺は気を引き締めて、勇者に視線を向けた。
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