手がかり
・薬草
・やすらぎの雫
・矢毒
この実験室にあった「や」で始まる薬品達はこれだけだった。
一番良いのは一つずつ検証してみることだが、それだけの時間があるのかどうか…
「まぁ、考えているだけ無駄だ。とりあえず、試していこう」
僕は近くをうろちょろしていたネズミを4匹ほど捕まえると、それぞれ別の水槽に入れた。
僕がそこまでしたところで思い出したように桜が尋ねてくる。
「そういえば…どうやってその生物に感染させるのですか?」
「………本当だ。どうすんだよこれ…」
…全く考えていなかった僕だった。
そうだよ、試すには生物が必要じゃないか。
でもそのためには感染するのを承知で奴らに近づかなければいけない。
しかし、それでもし感染してしまったら治す手段がない。
完全なる詰みだった。
…いや、あるぞ。あの方法ならいけるはずだ。
「ある…」
「え…?」
確かめるようにつぶやいた僕へ桜が疑問の声をあげる。
そう、一つだけあるのだ。
あの生物をこのネズミに感染させる方法が。
灯台下暗し、その方法は凄く身近にあったのだと僕は今更思う。
「じいさんが…いるじゃないか……!」
そう、ここに来たのはじいさんが感染してしまい、それを治す手がかりを探す為だ。つまり、じいさんは既にあの生物を皮膚上に付着させている。ならば、その生物を拝借すれば良いではないか。
僕はそれを実行すべく、携帯を手に取った。
通信をいれてから2日、僕らの元へ小包が届いた。
中からは厳重に密閉されたシャーレが入っている。そう、じいさんの皮膚から採取し繁殖させ、目視できるほどに増えた生物が入っているのだ。
僕は細心の注意を払いながらそのシャーレを開ける。
一緒に入っていた保冷具が効いたのだろうか?生物に動く気配はない。
その生物の集団を実験用と観察用の5つに分け、それぞれ別のネズミの背中へと置く。
だが、最後の1匹だけ手元が狂ってしまい生物群を水槽の中へと落としてしまった。
「あっ、しまっ…!」
拾おうとするのも間に合わず、その生物群を見つけたネズミはあっという間に平らげてしまった。
仕方ない、これも実験のうちだ。そう開き直り僕は4匹目の背中にもう一度、今度は落とさないように生物を置き、実験の第二段階へと移るのだった。
実験二日目。
生物の影響は明らかに出ていた。
まず、ネズミの動きが鈍い。何をするにもゆっくり、足を引きずるような感じで動いている。個体差があるのだろうか?2匹目と4匹目はまだ元気に見える。
1匹目に薬草、2匹目にやすらぎの雫、3匹目に矢毒を塗りこの日の実験は終わった。
実験三日目。
ネズミの様子は一変していた。
すべてのネズミに症状が現れていた。
まず1匹目、薬草の効果が無かったのか昨日より少し重症に見える。鈍かった動きはさらに鈍くなり全然動かない。
昨日まで元気だった2匹目にも症状が現れていた。しかも、1日遅れで発症したというのに1匹目と同じくらいの重症に見える。
3匹目に至っては絶命していた。しかし、見た限り生物の活動というよりかは昨日塗った矢毒によって絶命した可能性が高い。
そして、4匹目。こちらも症状が現れていた。しかし、比較的1匹目と2匹目よりは軽く、まだ現れ始めに見えた。
この日も、それぞれのネズミに薬草などを塗り実験を終えた。
そして実験四日目。
驚きの変化を僕は見たのだった。




