その時彼は
「昔々あるところにおじいさんと…
おじいさんと………
まぁ、おじいさんが住んでおりました。
おじいさんはガソリンスタンドへ灯油を買いに、
その後コインランドリーで洗濯をしました。
家に帰る途中、おじいさんは路地裏で小さな赤ちゃんを見つけました。
まだまだ生まれたばかりの女の子です。
その赤ちゃんはとても小さく、おじいさんは連れて帰ることにしました。
そして、おじいさんはこの子に名前をつけて大事に育てました……」
「…と、まぁこれがわしと桜の出会いだったんじゃよキューちゃん」
「キュルルル?」
じいさんはキューちゃん以外何もいないこの部屋で、ずっとキューちゃんに話しかけていた。
「はぁ、一樹たちはいつになったら帰ってくるのかのぅ…」
そう、じいさんは絶賛お留守番中だった。
キューちゃんから目を離し、時計を見るともう6時になるところだった。
「おっと、危ない危ない。夜ご飯を作らねばのぅ」
「キュー!」
じいさんがそう言って席を立つとキューちゃんは嬉しそうに部屋の中を飛んだ。
呆れたようにじいさんが、
「そんなにお腹が空いていたのか」
と言うと、
「キュー!!」
とキューちゃんは返事をした。
「キューキュー!」
部屋の中を飛んでいるキューちゃんを見ながら夕ご飯を作っていると、右手が何かに当たって大きな音が鳴った。
何か落としたかなとじいさんが確認すると、
「あれ?これって…」
そこまで見てからじいさんは凍りついた。
(こ、これって桜が大事にしていた花瓶!?何故ここに…?)
そこには桜の花瓶が割れていた。
(え?あれ、もしかしなくてもわし、やばい?)
顔から血の気が引いていくのが分かった。
わし、桜が帰ってきた後生きていれるのか…?
キューキューとご飯をねだるキューちゃんの声は今のじいさんには届いていなかった。




