勝負は一瞬。でも後悔は一生続きます。
「ここまで来れば一安心です…」
フシューフシュー
(奴の鼻息が聞こえます。ハァ…足がこんなになっていなければ逃げれるのに…)
「一樹、もう少しのはずだから気をつけるのじゃぞ」
「分かってるよ」
そうとはいうものの、あれからかなりの距離を歩いているはずなのに全然見つからない。
もしかして道を間違えてしまったのか?
まぁ足跡を残しているからそんなはずはないけれど…
しばらく歩き、大きな岩を曲がるとちょっとした広場に出た。
「?」
「どうしたのじゃ?」
「じいさん、足跡が……ない」
「なに…?」
どうしてだ?どうして足跡が消えた?
僕は辺りを見回してみる。そして…
「空か!」
そう。奴は飛んでいるのだ。
「ちくしょう。これじゃ追いかけられない!」
何か!何か手がかりはないのか!
必死な思いで周りを見渡すが手がかりはつかめない。
「こうなったら手当たり次第に…」
「落ち着くのじゃ。そんなことをしても見つからないぞ」
「じゃあどうしろって言うんだよ!桜は怪我をしているんだぞ!」
「まずは落ち着いて真っ直ぐ進もう」
「…その理由は?」
「足跡はこちらを向いておるからの。こちらに進んだ可能性が高いのじゃ」
「…分かった。こっちに行こう」
こうして僕とじいさんは真っ直ぐ進み始めた。
しかし、僕は気がつかなかったのだ。
岩を乗り越えるようにして続いていた奴の足跡に…
(こんな岩陰、すぐにばれてしまいます…)
『!グルルァ…』
(!近づいてくる…見つかりましたか!?)
『グルァウ!!』
「ヤバいです!」
『グルルルァァ!!!』
(痛!腕が…)
「あれ!?奴は何処に!?」
『グルァ!』
「後ろ!?」
「じいさん待って!」
「どうした一樹?」
何か今物音が聞こえた気がする。
注意深く前方を見ると、目の前には大きな獣がいた。
「いた!…けどなんか違くないか?」
確かに羽はある。あるけど、根本的に間違っている。
奴はトカゲだが、こいつはどちらかというと鳥だ。
いや、どっからどう見ても鳥だった。
「じいさん、なんか違うぞあれ」
「そうじゃのう…」
だとしたら桜は何処へ?
『グルァァァァァ!!!!!』
「キャーーー!やめてください!来ないでください!!」
桜!?右のほうから桜の叫び声が聞こえた。
「あっちだったか!?じいさん、早く行くぞ!」
「一樹………まずいことになったぞい」
「どうしたんだよ!?早く行かなきゃ!」
「あいつも桜のほうへ行ってしまったのじゃ…」
「は!?」
見ると、さっきまでいたはずなのに跡形も無くなっている。
「なおさら急がなくちゃダメじゃねーか!」
「そうじゃな。行こうか」
『ギャァァ…』
「くっ…誰か!誰か助けて!一樹!!」
全力疾走していると前方に奴の姿が見えた。
あいつはまだきていないみたいだけど。
「!?桜!!」
桜は今にも食べられそうになっていた。
桜は奴の顎を素手で、かろうじて抑えている状況だった。
と、桜の手が一瞬離れた。
だが、その一瞬が命取りになった。
奴の顎が桜に迫る。
急いで手で守ろうとするも、時すでに遅し。
僕は全力で走った。
ちくしょう!足跡を間違えていなければこんなことには!
僕は桜に向かって叫んだ。
「桜ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
声が届いたのか、力の入っていない桜がこちらを見た。
一瞬笑顔を見せるも、その顔は絶望の表情で埋め尽くされている。
「ダメだ!届かない!」
しかし、あとちょっとのところで僕の腕は届きそうにない。
そんな時、
「一樹!これを使うのじゃ!!!」
じいさんが木の枝を投げてきた。
「!サンキューじいさん!!」
それを受け取った僕は勢いよく奴の目に突き刺した。
『ギャァーーー!!!』
奴が桜の上から退いた、その瞬間を狙って僕は桜を思いっきり引っ張った。
「一樹!」
桜が泣きながらすがり付いてくる。
僕は、そんな桜を優しく抱きしめながら背中をさすってやった。
「大丈夫。もう大丈夫だから」
「いや、そうとも言えそうにないのぅ…」
じいさんがボソッと上空を見ながらつぶやく。
釣られて僕も見上げれとそこには…
「嘘だろ…」
あいつがいた。
背後では奴が、落ち着いたのか新たな敵を見ている。
前方ではあいつが僕達を狙っている。
まさに、絶体絶命だった。
「じいさん。桜を連れて逃げて」
「ダメです一樹!」「了解じゃ」
「おじいちゃん!?」
「じいさん。ありがとう」
じいさんは僕に「死ぬなよ」と囁いてから残ろうとする桜を抱えて走っていった。
死ぬなよ…か。簡単に言ってくれるじゃん?
あいつがじいさんを追おうと、向こうを見る。
そいつに向かって僕は近くにあった石を投げた。
「お前の敵は僕だよ?」
あいつは僕を敵だと認識したのか、こちらを見た。
背後では奴が僕の動きを伺っている。
「さーて、一体どうしたものかね…?」
「おじいちゃん!なんで一樹を見捨てたの!?」
「あやつなら大丈夫じゃ。わしが保証する」
「でも、もしおじいちゃんみたいに死んじゃったら…」(一体どうするのよ!一樹まで居なくなったら私…)
「…ってあれ?なんでおじいちゃん生きてるの?」
「それだと死んで欲しかったように聞こえるのじゃが…まぁあんなことやこんなことがあってじゃな…」
「…おじいちゃん。一週間ご飯なしね」
「何で!?一樹の罰より重いぞ!?しかもご飯!?三食抜きなの、わし!?」
「何か文句でも?」
「それだと、わしが本当に死んでしまいます」
「じゃあ一ケ月に…」
「文句ありません、桜お嬢!!」




