世の中には知らないことが沢山あります。
「これは、普通の傷じゃないねぇ…」
僕達は取り敢えず、このトカゲを医者に診せに来ていた。
「普通のじゃない…?」
普通の傷じゃないとはどういうことなのだろうか?
「そ。きっと縄張り争いにでも負けたんでしょうね」
医者のくせにチャラいこの男は適当にそんなことを言った。
「でしょうねって………」
あまりにもこいつが適当なのでア然としていると、桜が助け船を出してくれた。
「それで、この子は大丈夫なのでしょうか…」
「うん?あー、平気平気。一応薬は渡しとくけど大したことはないよ」
そこまで言ってから医者は意地悪そうな目でこっちを見ながら、
「ま、この中で一番致命傷に近かったのはライフル弾の跡だったけどね」
と言い、アッハッハと大声で笑った。
くそっ、この野郎面白がっているぞ。
でも、何も反論出来なくて、居心地が悪くて、僕は医者から目を逸らした。
「はぁ…一樹、気にしなくて良いですよ」
「ありがとう、桜…」
「さ、そろそろ帰りましょう」
「そうだね」
今は麻酔で寝ているが、起きた時のことを考えると大変だ。
「さて、市長に何て言おうか…」
「そうですよね…」
僕達はもう、このトカゲを殺そうとは思っていなかった。
いや、思えなかったという方が正確だろう。
このトカゲは家を取られ、新しい家を探していただけなのだから。
『はぁ!?あのトカゲを飼うぅ!?正気かい君達!?』
「はい。もちろん正気ですよ」
「それに、もう僕達にも馴れましたし…」
『……っ!な、馴れた?』
「はい。すごく懐いていますよ」
『………ふ……………ふ…ふ…………ふふふ………ふ…』
懐いていると聞いた瞬間、市長が笑い出した。
『ふふふふ…ふふぁあーっはっはっはっはっはっ!』
「一体どうしたのですか?」
いきなりの出来事に桜も付いていけていない。
『馴れた!馴れただと!あのトカゲが!!良いね!良いね君達!』
「は、はぁ」
そんなにすごいことなのだろうか?
『まぁ…うん……。良いか』
「………?何がですか?」
『だから、そのトカゲ飼っても良いよ』
ただし、他の人に迷惑をかけないという条件付きで。
「本当ですか!?ありがとうございました!」
良かった。なんとか問題解決だな…
ここで僕達は気付くべきだったのかもしれない。必ず近くにはこのトカゲを襲った奴がいるということに。




