第18話:日間1位からの「防衛戦」
「……ちっ、マジかよ」
深夜21時。最新話を投稿し、いつものように日間ランキングを確認した俺は、思わず舌打ちをした。
そこには、一週間不動だった『せいまも』の頭上に、見慣れないタイトルが鎮座していた。
【1位:聖女の慈愛で世界を救う 〜追放された俺、伝説の竜をモフりながら最強へ〜】
【2位:乙女ゲーの攻略キャラに転生したが、性格終わってる聖女から悪役令嬢を護ります。】
「……1位から、落ちた……?」
同接3万人の配信画面が、一瞬でどよめきに包まれた。
【コメント欄】
::嘘だろ!? せいまもが負けた!?
::相手、誰だよ。……あ、神崎……。
::神崎三郎!? なれ出身のミリオンセラー作家じゃねーか!!
:[軍師]:……フッ。ついに来たか。
:[軍師]:シュウエイサ……。一条の『カドカワレ』と首位を争うライバル出版社の、最大の手札だ。
「シュウエイサ……。あの、ジャンプアップ文庫とか出してる、最大手の一つか」
一条さんからの緊急DMが、スマホを震わせる。
『[親衛隊]:先生、見ていらっしゃいますわね?
シュウエイサが、うちの『せいまも』の勢いを止めるために、抱え込みの看板作家を“なれ”に再降臨させたのですわ。
これはもはや、作家個人の争いではなく、出版社のメンツをかけた戦争です。……負けることは、許されませんわよ?』
俺は奥歯を噛み締めた。
神崎三郎。王道の「ざまぁ」と「モフモフ」の第一人者。
その文章は、俺たちが描く「絶望」とは真逆の、全年齢対象の「究極の癒やしと快感」。
圧倒的な資本力による広告投下と、古参ファンたちの組織票が、ランキングを一気に塗り替えたのだ。
【コメント欄】
::王道には勝てないのか……。
::やっぱり、みんな最後は癒やされたいんだよな。
::せいまも、ここまでか……。
:[剣呑]:おい、何お通夜ムードになってんだよ。
:[剣呑]:王道? 癒やし? ……そんなもん、俺たちの『劇薬』で中和して、吐き出させてやるよ。
「……剣呑の言う通りだ」
俺は、高性能マイクに向かって、これまでになく静かで、しかし鋭い声を放った。
「お前ら。……悔しいか?
俺は、めちゃくちゃ悔しいぜ。
あっちの物語は、読めば心が温かくなるだろうよ。幸せな気分になれるだろうよ。
……だがな、俺たちが作ってるのは、心に一生消えない『傷』を刻む物語だ!!」
【コメント欄】
::綴……。
::【¥10,000】言ってやれ!
:[ござる]:「ぬおおお! 拙者、癒やしなんて求めてないでござる! 絶望を、もっと絶望をくれでござる!!」
「神崎先生が『慈愛』で世界を救うなら……。
俺たちは、その『慈愛』の裏側にある、救いようのない人間のドロドロしたエゴを暴いてやる。
軍師、剣呑、ござる……。そして、ここにいる4万人の共犯者ども!!
今夜の議題だ。
第18話……アルベルトがついに、聖女リリカルの『慈愛の魔法』の正体を暴くシーン。
……あっちの作品が『癒やし』を売りにするなら、こっちは『癒やしの偽善』を完膚なきまでに破壊する描写をぶち込んでやる!!」
【コメント欄】
:[軍師]:……面白い。カウンターパンチだな。
:[軍師]:あっちの『聖女』が本物の聖女なら、俺たちの『聖女』は、その概念すら汚す存在でなければならない。
:[剣呑]:聖女の魔法を受けるたびに、信者の精神が少しずつ削られていく……。
:[剣呑]:幸福感という名の、薬物依存症……。その末路を描写してやろうぜ。
「……よし! その案、採用だ!!
……いいか、神崎先生。……あんたはプロだ。俺なんて足元にも及ばない。
だが、この『なれ』という無法地帯で、毒の味を覚えた読者たちは、もう普通の砂糖水じゃ満足できねえんだよ!!」
俺はキーボードを叩き始めた。
ランキング1位を奪われた屈辱が、そのままアルベルトの「復讐心」と同化していく。
シュウエイサという巨人が送り出した「王道の刺客」。
それに対し、カドカワレの「異端の怪物」と4万人の狂信者たちが、牙を剥く。
「……お前ら!! 拡散の準備をしろ!
明日の21時……この18話を投稿した瞬間、なれのサーバーを熱狂でパンクさせてやるぞ!!」
【コメント欄】
:[親衛隊]:【¥10,000】わたくしたちも、全面支援いたしますわ。
:[親衛隊]:……さぁ、先生。王道を、その暗黒で飲み込んでしまいなさい!!
静かな夜に、激しいタイピング音が響き渡る。
それは、巨大なライバルに挑む、無名のVと共犯者たちの、宣戦布告だっ!
もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします




