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彼女たちの友情

 元々エリは高飛車な女などではなかった。


 2年前の生徒会からの嫌がらせ、それに立ち向かう為には弱いままではいけない。強くなる必要があった。


 外見はいくらでも変えることができる。

 だが中身は違う。エリは元々おとなしい性格の女の子。そのままでは生徒会にあらがうこともできなかった。


 だがそれを打開したのは宅ちゃんが語る、エリの夢だ。


『私はね、将来女優さんになりたいんだ。女優になって、たくさんの人を幸せにしたいの』

 幼い頃、宅ちゃんに語って聞かせた夢だ。


 宅ちゃんはそれを覚えていた。


『だったらエリは、女優さんになって、大勢の人を救うんだ。舞台はオーク学園、演じるのはクレオパトラ。多くの生徒を魅了する、最高の役柄だ』



 それに伴い、イソノとノハラは、エリを最高の女に仕立てていった。全ては彼女らの思惑だ。


 しかしこうなってしまえば、演じるなんて虚しいだけ。

 いま大切なのは、演じることよりも、大切な親友を守ること。もともと見栄も虚勢もない。心からの言葉だ。




 それが分かるからこそ、イソノとノハラは悔しい思いが溢れてくる

 自らが傷つくより、そんなエリの表情が悲しかった。自らの力の不甲斐なさを感じていた。



 その二人の眼前、エリは膝を地面に着いたまま、今川に向き直る。


「お願いします。この2人は退学にしないで」

 上目使いで懇願する。


「そうはいってもな」

 怪訝そうにそれを見下ろす今川。


「お願いします」

 エリが深く頭を下げようとした。


「そんなことするな!」

 不意に怒号が響き渡った。


「えっ!」

 振り返るエリ。


 その視線の先、黒い影が猛然と襲ってくる。


「貴様!」

 声を荒げる今川。咄嗟に目の前に腕をかざす。


 それめがけて、黒い影がムチのように襲い掛かった。


「歩夢……」

 エリが言った。


 彼女の頭の上には上原の足が伸びていた。対する今川の腕に直撃している。


「そんな弱い姿、見せないでもらえるか」

 力強い響き。

 くるりと回転して、エリに向き直る。


「確かにあたしらは多くの仲間を失った。だけどまだ多くの仲間がいる」


 それにうんうんと頷くイソノとノハラ。ゆっくり立ち上がる。


「そうだぜエリ。私たちをなめないでくれよ」

「これぐらいで負ける訳ないんだから」

 そして執行部に向けて気を吐く。


 その様子を呆然と眺めるエリ。


「歩夢、怪我はもういいの?」

 そして訊ねた。


「大丈夫さ」

 にこっと笑顔を見せて、髪を掻き挙げて額をかざす上原。


 そこにはまだうっすらと傷跡が残っている。


「時間が経てば、もう少し目立たなくなるだろうってさ」


 そしてしゃがみ込むエリに向けて右手をかざす。


 それにがっしりと掴まるエリ。


「少しばかり傷跡が残っても、ちゃんと嫁に貰ってやるって、奇特な男もいるしな」



 東雲の襲撃によって傷を受けていた上原だが、治療の甲斐があってほとんど癒えていた。


 彼女としても、この戦争で多くの者を失っていた。


 だが泣いている訳にはいかない。道はまだ続いているから。これから行く道こそが、本当の道なのだから。


 希望はまだ残されているから。打開していかなきゃ、それは掴めないから。


 そしてその思いは、エリの中にも沁み込んでくる。


「そうだな」


 悲しみに浸っていた自分が、馬鹿らしく感じてきた。

 自分にはこんなに自分を大切にしてくれる仲間がいるんだから。


 だったらそれに応じなければいけない。力強く、高貴で可憐に、威厳をもって。



 こうしてエリは、上原と背を併せて眼前の執行部たちを睨む。


「生徒会執行部、及び今川。そこを退かんと、排除するぞ!」

 敢然と通達した。



「チッ、女の分際で」

 それを苦々しく睨みつける今川。


 眼前に構えるのはエリと上原、それとイソノとノハラ。オーク学園でも最強を誇る女4人組。


 対する今川たちは自分を含めて4人。数のうちでは互角。

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