本当の友達
オーク学園生徒会執行部は、本館とは別にある。学園中央にそびえる鐘楼の真下部分、その5階部分だ。
本来ならそこに生徒は詰めていない筈だが、この日は違った。
生徒会長を筆頭に多くの生徒の姿があったのだ。
一階入り口付近では、数人の生徒が押し問答を繰り広げている。
生徒会役員と、エリザベート親衛隊、通称エリ女の2人だ。
「そこを退け!」
「私らはあの会長に用があるんだ!」
声を荒げるおかっぱと、金髪。
対する生徒会執行部側は、屈強な生徒数人で入り口の警備を固めていた。
その中でも腕に覚えを持つ手練れが生徒会副会長今川。
「会長は今、所要の為お会いにならん。出直して来い!」
他者の出入りを頑なに拒み、声を荒げる。
「さっきから同じこと言ってるじゃねーか」
「そうだ。あの女、嘘ばかりだろうよ」
対する2人も一歩も引かない。ここで引いたら全てが終わる、そう理解してるから。
「なんだと? 貴様ら生徒会に楯突くのか、そんなことをすれば、貴様らも退学だぞ」
無情にも吐き捨てる今川。
それで流石のエリ女2人も、少しばかり戸惑う素振りを見せる。
「上等なんだよ、退学が怖くて、こんなことするか!」
「そうだそうだ。友達の不幸を見て見ぬふりするぐらなら、退学の方がましだ!」
それでも仲間を思う気持ちの方が勝った。堂々と言い放つ。
しかしもちろん、そんなことを執行部が許す訳がない。
「だったら力で排除して、貴様らを退学にするまで!」
吠える今川。
「やれるならやってみろや!」
「女だからってなめんな!」
こうして始まる大乱闘。
「イソノさん、ノハラさん……」
その様子をエリが呆然と眺めていた。
イソノとノハラは、エリからすれば大切な親友だ。
入学当時、弱かった自分を強くしてくれた恩人。
自分に勇気を与えてくれて、世の中を生き抜く強さを教えてくれた親友。
イソノとノハラ自身、元々ヤンキーという種族のあがりで、オーク学園では浮いた存在だった。
だがその3人の出会いは絶妙なハーモニーを奏でた。
3人それぞれのいいところを引き出し、学園でも唯一無二の存在まで上り詰めることができた。
自分たちを規律でがんじがらめしようとする生徒会執行部とも、互角な場所まで成り上がることができた。
だがそれは脆くも崩壊した。
彼女たちをバックアップしていた、多くの仲間を失ったからだ。
それはいわば外堀を埋められたも同じこと。
翼をもがれた鳥も同じ。
いくら強いといっても所詮は女の身だから。
「きゃっ!」
悲鳴が聞こえた。イソノが頬を殴られてしりもちを付いた。
「くっ!」
同じく地面に崩れ落ちるノハラ。
「イソノさん、ノハラさん!」
すかさず駆け寄るエリ。
「まったく、しつこい女だぜ」
目の前では執行部の男たちが、仁王立ちで構えている。
イソノもノハラも、制服は土埃でぼろぼろだ。
対する執行部の男たちはほぼ無傷。生徒会の門番を勤めるぐらいだから、そこそこの腕力は備えている。
それでも2人は引き下がるつもりは毛頭ないようだ。
「くそっ、もう少しなのに」
頬を左腕で拭うイソノ。
「せめてあいつらさえ倒せれば」
ノハラも地面にひざま付き、悔しげに言い放つ。
「もういいよ、イソノさん、ノハラさん」
堪らず言い放つエリ。
2人の前に回り込み、今川の前の地面にひれ伏す。
「あたしはもういい。あなたたちは退学にはならないで」




