可憐なる彼女たち
「行くぞ、今川!」
その眼前、エリが動いた。それが目指すは今川の首。
黒髪をなびかせ、エリの拳が飛んでくる。
それをバックステップでかわす今川。
「だったらこれだ!」
その状態で右の蹴りを打ち込むエリ。
それが今川の脇腹を掠める。
「くっ」
苦痛に顔を歪める今川。
それでもエリは攻撃の手を止めない。続けざまの連打を放ってくる。
一方で上原たちも執行部相手に攻撃を開始していた。
「吹き飛べ!」
白いパンツを見せながら、ハイキックを放つイソノ。
「邪魔なんだよ!」
拳を握り締め、乱打を繰り出すノハラ。
「あたしらを怒らせたこと、後悔するんだな!」
華麗な足技を繰り出す上原。
その誰もが女とは思えぬほどの多彩な攻撃だ。
もちろん相手も生徒会の手練れ。
「チッ、このぐらいの攻撃、俺に効かぬわ!」
しかも今川はその辺のヤンキーも手を焼く、武術の達人。
隙を突いて、エリの脇腹に蹴りをぶち込む。
「きゃっ!」
堪らず後方に弾かれるエリ。
その頭上に、黒い影が飛び上がった。
「だったらこいつはどうだ!」
不意な攻撃で、今川の頬が弾ける。
「ぐおっ!」
ずるずると後方に後ずさる今川。口角が切れて血が滴った。
「歩夢」
その間にエリは態勢を構え直す。
「礼には及ばんさ」
上原が拳をかざした。
この4人、1年生当時から仲がいい。だから自ずとコンビネーションも出来ている。
「くそっ、上原」
それを恨めしそうに睨む今川。
その視線の端、執行部役員のひとりが、地面に倒れ込んでいる。上原相手に争っていた手練れだ。
残る2人の執行部も、イソノとノハラの前に風前の灯だ。
ここで早々とエリと上原を討たないと、いずれ4人相手にするのは必定だろう。
ぐっと踏み出し、上原相手に乱打を繰り出す。
それを腕で弾き出す上原。
「小癪な女がぁ!」
今川がバックブローを放った。
すかさずそれを腕をかざして凌ぐ上原。
だが今川は、それを力任せに吹き飛ばした。
「ぐっ」
上原の小柄な身体が弾き飛ばされた。建屋の壁に背をぶつけて苦痛に悶える。
「まずはひとり!」
それ目がけて今川が拳を振りかぶった。それは体重を掛けたヘビーなもの。
上原は背を壁に取られて逃げることもできない。恐怖に瞼を閉じる。
辺りに響き渡る狂音。それでゆっくり瞼を開ける。
目の前では今川が拳を振り出していた。何故かその表情から血の気が引いている。
そのこめかみに叩きつけられたのは整ったおみ足。
エリが放ったハイキックが、今川の脳髄を揺らしていたのだ。
声もなくその場に崩れ落ちる今川。
上原の視線に、高くかざしたエリの右足と太ももからのぞく純白のパンツが映える。
「可憐だな、エリ」
流石の上原も、ぽっと頬が赤くなる衝動を覚えていた。
「なにが可憐じゃと?」
覚めたように言い放つエリ。いつも通りの大胆な言い回しだ。
「よし、私らの勝利だ!」
「エリザベート、サイコー!」
奥の方ではイソノたちも執行部を撃破していた。
これで行く手を阻む障壁は打ち砕いた。あとは内部に乗り込み、生徒会会長源平を見つけるだけ。
「それで終わったと思ってるのか?」
不意に誰かが言った。
「えっ?」
それで嫌な胸騒ぎを覚えるエリ。
砂塵が舞い、砂埃が視界を覆う。
その刹那、真上から黒い影が襲い掛かってきた。




