合言葉は転生!
その時、森の静寂が、無数の足音によって引き裂かれた。
「おい、探せ! 奴は近くにいるはずだ!」
機械的な、しかし抑揚のない不気味な声が木々の間に響く。
見れば、黒いタイツに身を包んだ、何かの戦闘員のような格好の男たちが、ワラワラと森を埋め尽くすように現れた。
彼らは何者かを探すように、鋭い視線を周囲に走らせている。
「まずい!」直樹が青ざめる。
反射的に、直樹と健太は気絶しているテンガローハットの男を抱え、近くの深い草むらの中へと転がり込んだ。
男の重さが恨めしいが、今は声を立てるわけにはいかない。
数秒後、彼らが先ほどまでいた場所のすぐ隣を、戦闘員たちが足早に通り過ぎていく。草木を踏みつける硬いブーツの音が、鼓動のように直樹の耳に響く。
「奴の持ち出したレンズは見つかったか?」
「いや・・・しかし、反応は間違いなくこの辺りだ」
戦闘員たちが立ち止まり、直樹たちの隠れている草むらをジロリと見やった。心臓が飛び出しそうなほどの恐怖に、健太は口元を必死に押さえる。男の荒い呼吸が、静かな森の中でやけに大きく聞こえる気がした。
数秒が永遠に感じられた後、戦闘員たちは再び足音を立てて森の奥へと消えていった。
ようやく訪れた静寂。直樹は荒い息を吐きながら、隣で泥にまみれているテンガロンハットの男を見つめた。
この男は、一体何者なんだ?
二人はしばらくの間、息を殺して動けずにいた。その時だった。
シャリ、シャリ、と何かを噛む音が聞こえてくる。
見れば、泥だらけのテンガロンハットの男が、いつの間にか健太のサコッシュからこぼれ落ちていたおにぎりを、無心に頬張っていたのである。
さっきまで死にかけていたはずの男が、慎重な手つきで米粒一つ残さず完食していく姿に、直樹と健太は呆気にとられて声も出ない。
男は最後の一粒を飲み込むと、満足げに一つ頷き、ようやく二人に目を向けた。その眼光は先ほどまでの鋭さを潜め、少しだけ人懐っこい色を帯びていた。
「お前たち、助けてくれたようだな・・・礼を言う。なにしろ三日前から何も食べていなくてなぁ」
男はテンガローハットを軽く持ち上げ、不敵な笑みを浮かべた。
「俺の名は月影剣。太陽と影を追う探偵だ」
剣は立ち上がり、軽く服の汚れを払った。その動作には、どこか洗練された無駄のなさが感じられた。
「随分と物騒な連中を呼び寄せてしまったようだな。お前たちを巻き込んで悪かった。あとは俺に任せろ」
少年二人は、そのあまりの自信と、どこか芝居がかった物言いに圧倒され、ただ立ち尽くすしかなかった。
次回予告
一時は、窮地を脱したかのように見えた剣達。
だが、アークはそんなに甘くは無かった。戦え剣!
子供たちを守るのだ!!




