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第九十六話:摩天楼の巨神! 絶望の質量と夜叉の飛翔!

 ――ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ……!!!!

 大坂の街を揺るがす、けたたましい地響き。

 豊臣メガバンク本社ビルが変形した汎用決戦兵器『オオサカゲリオン』は、黒い雨雲を突き抜けるほどの巨体を完全に起こし、大坂の夜空に向けて絶望の咆哮を上げた。

『アォォォォォォォォォォッ!!!!!』

「デカすぎる……! まるで動く山じゃねぇか!」

 伊達成実が、強風に煽られながら巨大なアンカーを地面に突き立てて踏ん張る。

『フハハハハッ! 見よ、この圧倒的な資本力パワーを! ワシは世界だ! ワシこそが真のメガバンクだァァッ!!』

 オオサカゲリオンの胸部コアから、拡声器を通した狂王・秀吉の歪んだ笑い声が響き渡る。

「兄様……! 宗次郎……!」

 安全なビルの屋上へと避難した綺羅姫が、震える両手を握りしめて祈る。

「……計算不能エラー。装甲の厚さは推定五十メートル。我々の持ついかなる火器でも、あの巨体の表面に傷をつけることすら不可能です」

 片倉小十郎が、雨で濡れた木製そろばんを弾きながら、かつてなく険しい顔を見せた。

「フン。ベンチャー企業が巨大独占企業メガバンクに正面から勝てる確率なんて、最初からゼロに等しいんだよ。……だからこそ、やり甲斐があるってもんだろ!」

 伊達政宗が、二丁のオートマチック・ハンドガンを抜き放ち、不敵に笑う。

「狙いは胸のコア一つだ! 全力で宗次郎のバックアップに回れェッ!!」

「応ッ!! 上腕二頭筋・大投擲マッスル・カタパルトッ!!」

 成実が、手にした数百キロの黒船の錨を、オオサカゲリオンの巨大な足首めがけて全力で投げつけた!

 ガガァァァンッ!!

 凄まじい衝撃音が響くが、巨神の足はビクともしない。しかし、その攻撃は「囮」としては十分だった。

『虫ケラどもが! 潰れろォォッ!!』

 オオサカゲリオンが、巨大な右腕を振り上げる。大坂の街のブロック一つを丸ごと粉砕するほどの、超質量の鉄拳が振り下ろされようとした、その時。

「アクション(特機)チーム、動きます!! 空中ワイヤー、セットォォッ!!」

 映像ディレクター・クリノジが、特注の『チタン合金製フィルムリール』を構え、オオサカゲリオンの右腕から肩にかけて、極太のワイヤーロープを瞬時に射出・固定した!

「宗次郎さん! レッドカーペット(導線)は引きました! 行ってください!!」

「……感謝する」

 一陣の黒い風が、ビルの屋上から跳躍した。

 神堂宗次郎である。

 彼は漆黒のマントを翻し、クリノジが張ったフィルムワイヤーの上を、まるで重力が存在しないかのように猛烈な速度で駆け上がり始めた!

 (いやいやいやいや!!!!)

 後方で震えるカピバラ・タナカの心のツッコミが、恐怖と共に炸裂する。

 (数百メートルの巨大ロボットの腕を、ワイヤー一本で駆け上がるってどんなアクション映画っすか!! しかもワイヤーの素材が『映画のフィルム』って、もう科学もへったくれもないっすよ!! でも誰も突っ込まないこのシリアス空間が一番怖いっす!!)

『小賢しいハエめ! 撃ち落とせェッ!!』

 胸部コアの秀吉が叫ぶと、オオサカゲリオンの肩部装甲がスライドし、無数の『対空防衛・絡繰速射砲ガトリング』が姿を現した。

 ガガガガガガガガッ!!!

 宗次郎めがけて、雨あられのような巨大な鉛弾が殺到する!

「……夢想静水流・滝の型」

 宗次郎はワイヤーを駆け上がりながら、背中から大盾刀『玄武』を前面に展開した。

 斜めに構えた極厚の大盾が、巨大な鉛弾の軌道を次々と空の彼方へと逸らしていく。凄まじい衝撃と火花が散るが、宗次郎のスピードは一切落ちない。

「『夜叉の牙』」

 宗次郎は玄武の裏側から、両手の特注短筒を突き出した。

 タァンッ! タァンッ! タァンッ!!

 放たれた銃弾は、オオサカゲリオンの装甲に直撃……するのではなく、装甲の表面で『跳弾リコシェ』を繰り返し、複雑な軌道を描いて速射砲の銃身の隙間(センサー部)へと正確に飛び込んでいく!

 ドォォォォンッ!!

 連鎖的な爆発が起こり、巨神の対空火器が次々と沈黙していく。

 盾による絶対防御と、跳弾を計算し尽くした超絶技巧の射撃。まさに戦場の悪鬼が振るう『銃闘術』の極致であった。

『ええい、鬱陶しい! 払い落とせ!!』

 オオサカゲリオンが左腕を振り回し、自らの右腕ごと宗次郎を薙ぎ払おうとする。

「させねぇッ!! 『起業家連弾・集中投資ベンチャー・フルバースト』ッ!!」

 地上から政宗が、二丁のハンドガンを限界まで連射。弾丸はすべて巨神の左腕の関節部シリンダーに集中し、その動きを一瞬だけ鈍らせた。

「今です!!」

 宗次郎はワイヤーから大きく跳躍。巨神の振り払う左腕を紙一重でかわし、ついにオオサカゲリオンの胸部――秀吉が乗る『黄金のコア』の正面へと辿り着いた。

「……終わらせる」

 宗次郎は空中で玄武を振りかぶり、五十メートルの装甲を誇る胸部コアめがけて、渾身の一撃を振り下ろした。

 ガギィィィィィィィィィィンッ!!!!

 大坂の街全体に響き渡るような、鼓膜を破る凄まじい金属音。

 宗次郎の斬撃は、確かにオオサカゲリオンの装甲に深い亀裂を走らせた。

『……甘いわァァァァァッ!!!!』

 しかし、胸部コアの奥深くで、狂気の太閤がヒステリックに叫んだ。

 亀裂の入った装甲の奥から、不気味な黄金の光が溢れ出し、宗次郎の体を強烈な衝撃波となって弾き飛ばしたのだ!

「くッ……!」

 宗次郎は空中で体勢を立て直し、数百メートル下の大地へと着地する。その顔には、わずかに焦燥の色が浮かんでいた。

「……硬い。物理的な装甲だけでなく、あの狂気の光そのものが、強力な『結界』を形成している」

 宗次郎が短筒を構え直しながら呟く。

『フハハハハ! この「絶対独占結界メガ・バリア」は、ワシの尽きることのない「不安」と「欲望」でできている! 誰にもワシの黄金は奪えん! ワシの心には、誰も触れられんのだァァァッ!!』

 オオサカゲリオンが、勝利の咆哮と共に両腕を天に掲げる。

 その胸部コアに渦巻く黄金の光は、いかなる物理攻撃も寄せ付けない、秀吉の「心の壁」そのものであった。

「チィッ! あのバリアをぶち抜かない限り、中にいる秀吉を止めることはできねぇのか!」

 政宗が歯噛みする。

 狂王の絶対的な孤独が生み出した、難攻不落の巨神。

 いかに夜叉の『銃闘術』が優れていようとも、個人の武力では、この巨大な心の壁を破ることはできないのか。

 全100話の完結まで、残りわずか。

 大坂を火の海に変えるオオサカゲリオンを前に、カオス・パーティーと伊達家は、ついに最大の壁に直面したのである!

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