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第九十話:地下地脈の死闘! 業火の監査官と夜叉の凶弾!

 ――大陸内陸部、漢城ハンソンの地下深く。

 伊達家の精鋭とカオス・パーティーを乗せた軍用エレベーターが、重々しい金属音を立てて地底空間へと到着した。

 鋼鉄の扉が開いた瞬間、凄まじい熱波が一行を襲う。

 巨大な地下空洞の中心には、マグマのように赤黒く脈打つ超巨大な爆弾――『超・大陸焼却弾』が鎮座し、無数のパイプが大陸の地脈へと突き刺さっていた。

「……起爆プロトコル、最終段階。残り時間、あと三分といったところですね」

 片倉小十郎が、熱で歪むタブレット(木製そろばん)を弾きながら、冷徹に状況を分析する。

「フン。三分もありゃ、電源をぶっこ抜いてお釣りで牛タンが焼けるぜ」

 伊達政宗が、レザージャケットを翻して二丁のオートマチック・ハンドガンを構えた。

「――そう簡単にはいきませんよ、伊達の若虎」

 熱波の向こうから、静かで、しかし底知れぬ凄みを帯びた声が響いた。

 現れたのは、全身を耐熱仕様の黒い『特殊炭素繊維カーボン包帯』でミイラのように覆い隠した男。

 豊臣メガバンク・特命監査官、大谷吉継おおたによしつぐである。

「狂える太閤殿下の悲しみを、貴様らのようなベンチャー企業が理解できるはずもない。殿下は、すべてを失う恐怖に怯えておられる。ならば、我々臣下がこの世界すべてを灰燼かいじんに帰し、殿下の御心を『無』で満たして差し上げるのが、最後の監査しめくくりというもの」

 吉継が、その腕に装着された巨大なドリル状の重火器――『絡繰・地脈穿孔砲レイライン・ボーラー』を構える。

「狂信もそこまで行けば立派なビョーキだぜ。……俺たちがその監査、不渡りにしてやる!」

 政宗が引き金を引き、戦闘の火蓋が切って落とされた。

「『起業家連弾ベンチャー・バレット』ッ!!」

 政宗の放つ銃弾の雨。しかし吉継は全く動じることなく、地脈穿孔砲から超高熱のプラズマ火炎を放射し、弾丸を空中でドロドロに溶かして無効化する。

「熱量が違いすぎるッ! 成実、前衛を頼む!」

「応ッ!! 大胸筋・耐火コーティング(ただの汗)ッ!!」

 伊達成実が、巨大な黒船のアンカーを盾にして業火の中を突進する。しかし、吉継の背後から湧き出したメガバンクの防衛部隊(完全耐熱スーツ着用)が、一斉に火縄銃を構えて成実を取り囲んだ。

 (いやいやいやいや!!!!)

 後方で前田○子を庇いながら、カピバラ・タナカは心の中で激しく絶叫していた。

 (地下空洞の巨大時限爆弾に、ミイラ男のプラズマ兵器!? これ完全にハリウッドのアクション映画のクライマックスっすよ! しかも残り三分って、カップラーメン待つ時間と同じっすよ! 焦燥感がエグいっす!!)

「雑魚は私が引き受けます!! カメラ・ドリー(移動車)、セットォォッ!!」

 タナカの隣で、ディレクターのクリノジが吠えた。

 彼が取り出したのは、映画撮影でカメラを滑らかに移動させるための台車『撮影用特注ドリー』。しかし、それはロケットブースターが搭載された、狂気のホバーボードへと改造されていた!

「レールなしのフリー軌道で行きます! アクションッ!!」

 ギュイィィィィィンッ!!!

 クリノジはドリーに乗り込み、時速100キロに迫る超高速で地下空間を爆走! すれ違いざまに、手にした『斬撃カチンコ』で防衛部隊の火縄銃を次々と真っ二つに切断していく!

 (ディレクターがホバーボードに乗ってカチンコで斬り捨て御免!? もうこの人の役職が何なのか、誰か教えて欲しいっす!!)

 タナカの心のツッコミが限界を突破する中、戦場の中央では、ついに『夜叉』が動いていた。

「……起爆まであと一分。手間はかけられません」

 神堂宗次郎が、漆黒の短髪を熱風に揺らしながら、吉継の正面へと滑り出た。

「貴様が、我が暗殺部隊を全滅させたという夜叉か。……この業火、斬れるものなら斬ってみせよ!」

 吉継が、地脈穿孔砲の最大出力を宗次郎へと放つ。

 直径三メートルに及ぶ、すべてを焼き尽くすプラズマの火柱。

「……夢想静水流・極の型」

 宗次郎は、逃げない。

 背中から絡繰大盾刀『玄武』を抜き放ち、前面に最大展開する。

「『夜叉のあぎと』」

 ガガガガガガガガガガァァァァァッ!!!

 プラズマの火柱が玄武の極厚装甲に激突し、爆発的な熱と光が地下空洞を包み込む。宗次郎の革靴が鋼鉄の床を削り、後方へ押し込まれる。

 しかし、玄武の斜めの傾斜がプラズマの熱線を上空へと逸らし、宗次郎の体は完全に守られていた。

「なにッ!? 私の最大出力を盾だけで凌いだと……!?」

 吉継が驚愕したその刹那。

 炎のトンネルを突き抜け、盾の裏から躍り出た宗次郎が、吉継の目前に迫っていた。

 両手には、すでに特注の短筒が握られている。

「『終のついのたま』」

 ズダンッ!! ズダンッ!!

 超至近距離から放たれた二発の銃弾。

 一発目が、吉継の地脈穿孔砲の砲身に飛び込み、内部のエネルギー炉を物理的に破壊。

 二発目が、吉継の両腕の関節を正確に撃ち抜き、彼から一切の戦闘力を奪い去った。

「がはァッ……!!」

 吉継が崩れ落ちる。戦場の悪鬼(夜叉)による、完璧な『銃闘術』の勝利。

「……時間は?」

 宗次郎が、熱を帯びた短筒を懐に収めながら、背後を振り返る。

「起爆まで、残り一〇秒!」

 小十郎が、タブレット端末そろばんを抱えて超・大陸焼却弾のコンソールパネルへと駆け寄っていた。

 パネルには、古代の歯車と最新の電子基板が融合した複雑怪奇なロック機構が施されている。

「パスワード解析……間に合いません! ならば、物理ハードで止めます!」

 小十郎は、樫の木で作られたそろばんの珠を一つ、指先で限界まで引き絞った。

 残り時間、五秒。四秒。三秒。

 無数に噛み合う起爆装置の巨大な歯車が、最後の回転を始めようとした瞬間。

「『投資利益率(ROI)絶対停止・一珠ひとたま』ッ!!」

 ピシィィィィンッ!!!

 小十郎の指から弾き出された一粒のそろばんの珠が、起爆装置の数万の歯車のうち、最も負荷のかかる『中心軸コア・ギア』の隙間に、一ミリの狂いもなく正確に打ち込まれた。

 ガキンッ……!! ギギュギュギュギュッ……!!

 悲鳴のような金属音と共に、すべての歯車が完全にロックされ、停止する。

 起爆タイマーの表示は――『0:01』。

「……計算、ぴったりです」

 小十郎が、額の冷や汗を拭いながら、小さく息を吐いた。

「しゃあああッ!! 止まったぜェェッ!!」

 成実が歓喜の雄叫びを上げ、政宗もフッと安堵の笑みを漏らした。

 大陸消滅の危機は、伊達コーポレーションとカオス・パーティーの常軌を逸した力技(と計算)によって、間一髪で回避されたのである。

 静寂を取り戻した地下空洞。

 宗次郎は、床に倒れ伏す吉継を見下ろした。

「……殺すがいい。殿下の絶望を救えなかった私に、生きる価値などない」

 吉継が、包帯の奥で悔しげに呟く。

「……我々は、監査法人ではありません。命まで奪う契約は結んでいない」

 政宗が歩み寄り、吉継を冷たく見下ろした。

「大陸への焦土作戦プロジェクトは、ここで完全に終了だ。我々はこれより海を渡り、大坂城へと向かう。……あの狂った太閤の目を覚まさせ、囚われの妹・綺羅を取り戻すためにな!」

 もはや、メガバンクの刺客を退けるだけの防衛戦ではない。

 狂気の根源を断ち切るための、伊達家からの大逆襲。

 決意を固めた宗次郎の『夜叉』の瞳が、暗い地下から、はるか海の向こうにある大坂の摩天楼を鋭く見据えていた。

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