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第八十九話:絶望の進捗管理! 鋼鉄の要塞と夜叉の無間連撃!

 ――大陸内陸部、漢城ハンソン近郊。

 焦土と化した平原のど真ん中に、豊臣メガバンクが莫大な資金と労働力を注ぎ込んで建造した異形の軍事拠点、『進捗管理要塞ガントチャート・フォートレス』がそびえ立っていた。

「見ろよ、あれ。城ってレベルじゃねぇぞ。完全に巨大な『要塞工場』だ」

 燃える平原を抜け、要塞を見上げた伊達成実が、肩に担いだ巨大な黒船のアンカーをドスンと地面に突き立てた。

「……ええ。しかも要塞全体が、巨大な絡繰からくりで稼働しています。大坂の狂王の命令を、ただ機械的に実行するためだけの施設です」

 片倉小十郎が、雨と煤に塗れたそろばんをパチパチと弾きながら、冷や汗を流す。

「フン。どんなにデカいシステムだろうが、電源トップをぶち抜けば止まる。行くぜ」

 伊達政宗が、レザージャケットの懐から二丁のオートマチック・ハンドガンを抜き放とうとした、その時。

『――進捗率、未だ30%。遅い、遅すぎる! 殿下の御心を安らげるための「大陸完全焼却プロジェクト」、なぜ今日中に終わらない!?』

 要塞の中腹、防弾ガラス張りの巨大なバルコニーから、拡声器を通したヒステリックな声が響き渡った。

 そこに立っていたのは、豊臣メガバンク・海外進出最高プロジェクトマネージャー、宇喜多秀家うきたひでいえである。

 まだ若いエリート幹部のはずだが、その顔は異常なプレッシャーと寝不足で土気色に変色し、目は血走って痙攣していた。

「宇喜多……! てめぇ、自分が何をしてるか分かってんのか! こんな無意味な焦土作戦、メガバンクの利益にすらならねぇだろ!」

 政宗の怒号に、宇喜多は首をギギギと不気味に曲げて見下ろした。

「利益……? 馬鹿なことを。我々の唯一のKPI(重要業績評価指標)は、『殿下が笑うこと』だ。殿下は火柱を見たいと仰った。ならば、この大陸のすべての命と自然を燃やし尽くし、空を炎で覆い尽くすのが、絶対のノルマなのだァァッ!!」

 完全に狂い切った組織の末路。

 宇喜多が手元のスイッチを押し込むと、要塞の壁面がスライドし、無数の巨大な砲門が政宗たちへと向けられた。

「目標、伊達の不良債権ども! 『絶対ノルマ達成砲クォータ・キャノン』、全門発射ァッ!!」

 ズドォォォォォォォンッ!!!

 要塞から放たれたのは、通常の砲弾ではない。白リン弾のごとく、着弾した瞬間に周囲の酸素を奪いながら超高温の炎を撒き散らす、悪魔のような焼夷弾の雨だった!

「チィッ! 全員、俺の背後に隠れろォッ!!」

 成実が叫び、巨大な鋼鉄の錨を頭上に掲げて『大胸筋・防空傘マッスル・パラソル』を展開する。

 ガガガガァァンッ!!

 錨の装甲で炎と爆発を強引に防ぐが、すさまじい熱量が一行を削っていく。

「これではジリ貧です! 私が対空迎撃カウンターを……!」

 小十郎がそろばんを構えた瞬間、彼らの横を重々しい金属音を立てて駆け抜ける影があった。

「――ブレ補正、MAX!! カメラは絶対に止めさせませんッ!!」

 ガシャンッ! ウィィィンッ!

 それは、ディレクターのクリノジであった。しかし、その姿は異様だった。彼の全身は、重い映画用カメラをブレずに持ち運ぶための『特注・ステディカム強化外骨格エクソスケルトン』で覆われていたのである。

 クリノジは、外骨格の油圧シリンダーを唸らせながら、跳弾して飛んできた巨大な焼夷弾の不発弾を両手でガッチリと受け止めた。

「なんだこの安定感は! どんな悪路でもフレームがブレない! そして、そのまま投げ返すッ!!」

 ウゴォォォォンッ!!

 強化外骨格のパワーで投げ返された巨大な焼夷弾が、要塞の砲台の一つに直撃し、大爆発を起こした!

 (いやいやいやいや!!!!)

 燃え盛る大地に伏せながら、カピバラ・タナカは震え上がる毛皮を押さえて心の中で絶叫した。

 (ステディカムって映像を滑らかに撮るための機材っすよね!? なんで強化パワードスーツみたいになって、爆弾を投げ返せる膂力を生み出してるんっすか!! ディレクターの武装化が完全にSF映画の領域に突入してるっす!!)

 砲台が一つ潰れ、要塞の弾幕に一瞬の「穴」が生まれた。

「……計算通り。道が開きました」

 小十郎が呟くより早く。

 一陣の黒い風が、炎の壁を突き抜けて要塞の壁面へと跳躍していた。

「なっ……!? 防衛システム、迎撃しろ!」

 宇喜多が慌てて叫ぶ。

 要塞の壁面に配置されていた自動火縄銃オート・マッチロックの砲塔が、一斉に跳躍する黒い影――神堂宗次郎へと狙いを定めた。

「……遅い」

 空中で、宗次郎は絡繰大盾刀『玄武』を前面に展開。

 ガキキキキィィンッ!!

 弾雨を極厚の盾で弾きながら、彼はそのまま要塞の垂直の鋼鉄壁を蹴り、反重力のごとき身のこなしで上階へと駆け上がっていく。

「『夜叉の歩み』」

 宗次郎は玄武の影から両腕だけを突き出し、特注の短筒の引き金を連続で引いた。

 ズダンッ! ズダンッ! ズダンッ!!

 放たれた銃弾は、壁面の僅かな凹凸で跳弾リコシェし、防衛砲塔の死角からセンサーを正確に撃ち抜いて破壊していく。

「ヒィィッ! ば、化け物か!?」

 宇喜多が後ずさる。

 バァァァンッ!!

 防弾ガラスが内側から砕け散り、宗次郎がバルコニーへと躍り込んだ。

 宇喜多の護衛部隊数十名が長槍を突き出すが、宗次郎は空になった短筒を投げ捨て、懐から新たな二丁を引き抜くと同時に、独楽のように回転した。

「……夢想静水流・破の型」

 タァン! タァン! タァン! タァン!!

 全方位への超高速連射。

 さらに、銃弾を撃ち尽くすと同時に玄武の盾で周囲の敵を薙ぎ払い、再び銃をリロードする。防御、打撃、銃撃が一切の切れ目なく連続する死の嵐。

「『無間むげん』」

 わずか十秒。

 護衛部隊は全員が関節を砕かれ、あるいは手足を撃ち抜かれて、完全に無力化され床に転がった。

「あ……あ、あぁぁ……」

 腰を抜かした宇喜多秀家の喉仏に、熱を持った宗次郎の短筒の銃口がピタリと押し当てられた。

「……進捗管理の時間は、終わりだ」

 宗次郎の瞳には、一切の慈悲はない。戦場の悪鬼の冷たい視線が、宇喜多の心を完全に折った。

「ひ、ひぃぃぃっ! 降伏する! プロジェクトは中止だ! 私の負けだぁぁっ!!」

 宇喜多が泣き叫ぶと、要塞の砲撃システムが沈黙し、不気味な機械音だけが鳴り響く空間へと変わった。

 政宗たちが、静かになった要塞内部へと突入してくる。

「やったな、宗次郎! これでこの一帯の焦土作戦はストップだ」

 政宗が二丁拳銃をホルスターに収める。

「……政宗様。喜んでいる場合ではありません」

 しかし、床に這いつくばる宇喜多が、狂ったような笑い声を漏らし始めた。

「フフ……フハハハ! 確かにこの要塞は落ちた! だが、遅いのだ! 殿下の真の絶望プロジェクトは、すでに最終フェーズに移行している!」

「何だと……!?」

「漢城の奥深く……。殿下の側近中の側近である『大目付』が、大陸の地脈そのものを爆破し、この半島を海に沈めるための『超・大陸焼却弾』の起爆準備を終えている!! 殿下は、国境の消滅という最大の打ち上げ花火を望んでおられるのだァァッ!!」

 その言葉に、政宗と小十郎の顔色が青ざめた。

「狂いにも狂いきってやがる……。大陸ごと沈める気かよッ!」

 政宗がギリッと奥歯を噛み締める。

 秀吉の純粋なる悪意は、もはや戦争という枠を超え、一つの大地を丸ごと消し去るという神をも恐れぬ凶行へと至っていた。

 起爆までのタイムリミットが迫る中、宗次郎の冷酷な双眸が、はるか北の空を覆う禍々しい黒雲を見据えた。

 大陸の消滅を阻止できるのか。

 カオス・パーティーと伊達家の、タイムリミット・バトルが今、最悪の形で幕を開けたのである!

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