第八十四話:名護屋城の死闘! 筋肉と算盤、そして戦うディレクター!
――九州、名護屋城。
狂王・豊臣秀吉が朝鮮出兵の拠点として築き上げた、漆黒の巨大要塞。その裏門にあたる断崖絶壁に、伊達家の精鋭たちが音もなく張り付いていた。
「……小十郎。監視システム(見張り)の死角は?」
レザージャケットの雨水を払いながら、伊達政宗が低く問う。
「データ通りです。この裏門の警備ローテーションには、3分間の空白があります。……今です」
片倉小十郎が、雨に濡れる木製そろばん(タブレット)をパチリと弾いた。
「よし。これより、我が伊達コーポレーションによる『名護屋城・物理ハッキング作戦』を開始する! 成実、ブチ破れェッ!!」
「応ッ!! 上腕二頭筋、限界突破ッ!!」
伊達成実が、雄叫びと共に巨大な大太刀を大上段から振り下ろした。
ドゴォォォォォォォンッ!!!
分厚い鋼鉄の裏門が、純粋な筋肉の暴力によって紙屑のように粉砕され、吹き飛ぶ。
「な、何者だッ!? 敵襲ゥゥッ!!」
城内のメガバンク防衛部隊が、けたたましい警報と共に一斉に湧き出してきた。完全武装の槍兵と鉄砲隊、ざっと三百。
「フン。ベンチャー企業の底力、見せてやるぜ」
政宗が、漆黒のレザージャケットを翻し、両手から二丁の大型自動拳銃を抜き放った。
「『起業家連弾』ッ!!」
ズガンッ! ズガンッ!!
政宗が軽やかにステップを踏みながら放つ銃弾が、防衛部隊の急所を百発百中で撃ち抜いていく。さらに、その背後から成実がバーベルのような大太刀を振り回し、暴風のごとく敵を吹き飛ばす。
「大胸筋・大旋風ォォォッ!! プロテインの力、思い知れェ!」
ドガガガァァンッ!! 成実の異常な膂力の前に、敵の盾ごと十数人が宙を舞う。
「……計算通り。無駄な動きが多いですよ、皆さん」
後方支援の小十郎も動く。彼はそろばんをまるでマシンガンのように構えると、指先で珠を超高速で弾き飛ばした。
パパパパパパッ!!
樫の木で作られたそろばんの珠が、恐るべき初速で散弾のように放たれ、敵の火縄銃の銃身を次々と破壊していく! 名付けて『投資利益率(ROI)制圧散弾』である!
(いやいやいやいや!!)
激戦の最後尾で、カピバラ・タナカは震えながら心の中で絶叫していた。
(宗次郎さんの凄まじい銃闘術だけでもお腹いっぱいなのに、伊達家のトップ層も全員戦闘力高すぎっすよ!? 特にそろばんから弾丸が出るって、どういう物理法則っすか!!)
だが、防衛部隊もメガバンクの誇る精鋭である。
正面の三人を避けるように、別働隊数十名が裏路地から迂回し、非戦闘員であるはずの前田○子とタナカへと襲いかかってきた!
「死ねェッ! 伊達のネズミども!!」
鋭い槍の穂先が、タナカと○子へと迫る。
「きゃあああっ!!」
「キュルルッ! 万事休すっす!」
タナカが目を閉じた、その瞬間。
「――カーーーーット!! その動き、台本にありませんよォッ!!」
バシィィィィンッ!!!
鋭い金属音が鳴り響き、襲いかかってきた兵士たちの槍が、根元から真っ二つに切断された。
「……えっ?」
タナカが目を開けると、そこには、眼鏡を光らせた男――クリノジの姿があった。
彼の手には、映画撮影で使う「カチンコ」が握られている。だが、それはただのカチンコではない。刃の部分が極限まで研ぎ澄まされた、チタン合金製の**『斬撃カチンコ』**であった。
「クリノジ!? お前、なんでそんな武器を……!」
「私はこのカオス・パーティーの進行を司るディレクターですからね! 演者に指一本でも触れる奴は、私が編集でカットしますッ!!」
クリノジは斬撃カチンコを双剣のように構え、敵の群れへと躍り出た!
ザシュッ! ザシュッ!!
その身のこなしは、宗次郎の銃闘術とはまた違う、映像クリエイターならではの「無駄のないフレーム移動」の如き俊敏さだった。
「ひ、ひぃぃっ! なんだこの裏方は!?」
怯む敵兵に対し、クリノジは腰から巨大なメガホン(拡声器)を取り出し、最大ボリュームで叫んだ。
「アクション、スタートォォォッ!!」
ギャイィィィィィンッ!!!
指向性の超高周波ソニックが敵部隊の鼓膜を破壊し、数十名が脳震盪を起こして白目を剥き、その場に崩れ落ちた。
(……もう、何も言わないっす)
タナカは、チタン製カチンコについた血糊を払うクリノジを見て、完全にツッコミを放棄した。
(進行役のディレクターまでが、サイボーグみたいな暗殺術を身につけてるっす。この10話限定のシリアス補正、マジでインフレがエグいっす……!)
防衛部隊が次々と無力化されていく中、銃闘術で敵の増援を正確に処理していた宗次郎が、政宗の隣へと着地した。
「政宗様。裏門の制圧、完了しました」
「上出来だ。さあ、一気に名護屋城の地下港まで突き進むぞ!」
政宗が二丁拳銃をリロードし、不敵な笑みを浮かべる。
狂気の太閤・秀吉が座す本丸は目前。しかし彼らの目的は、あくまで「朝鮮出兵の最前線となる釜山への船を確保し、伊達家を海路の危機から救うこと」である。
伊達家の個性豊かな幹部たちと、謎の戦闘力に目覚めたディレクターを交えたカオス・パーティーの進軍は、名護屋城の深部へとさらに加速していくのであった!




