第七十七話:ワンパターンの帰還! 土佐の藁焼きと燻製化する長髪!
――宇宙船『源内アパッチ』の艦内。
感動の恋愛ドラマ(全4話)の余韻が完全に冷めやらぬ中、クリノジが死んだ魚のような目で台本をめくっていた。
「……えー、作者様より『次からはいつも通りの通常回です。ワンパターンに行きましょう!』との指令が下りました」
「嘘だろォォォッ!! あの直木賞クラスの愛の結末から、またネズミの料理と私のプロレス技という知能指数ゼロの旅に戻るというのか!!」
スーパー戦国人参(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし)の宗次郎が、長すぎる髪を掻き毟りながら絶叫する。
「キュルルッ! 視聴者もそろそろカピバラのクッキングが見たくなってきた頃っすよ! 気持ちを切り替えて、四国に上陸っす!!」
カピバラ・タナカが、短い前足でエプロンの紐をキリッと結び直した。
◆◆◆
ということで、一行が降り立ったのは高知県・桂浜。
太平洋の荒波を見下ろす坂本龍馬の銅像の前で、前田○子が太平洋の潮風を受けてポーズを決める。
「日本の夜明けぜよ! ワンパターンな展開でも、私のセンターとしての輝きは変わらないわ!」
「……私の長すぎる髪から漂う、味噌とたまり醤油の匂いが、太平洋の潮風と混ざって完全に『煮付け』の匂いになっています」
宗次郎が、ハエを払いながら憂鬱そうに呟いた。
一行が暖簾をくぐったのは、桂浜のすぐ側にある老舗『鰹魂・ぜよ』。
「いらっしゃい! 高知に来たなら、豪快な『鰹の藁焼き(たたき)』を食ってきなさい!」
鳴子を手にした看板娘、土佐かつおが、分厚く切られた鰹の塊を、燃え盛る藁の炎の中に放り込んだ。
ボウッ!! と火柱が上がる。
「キュルルッ! 藁の強い火力で表面だけを一瞬で焼き上げ、香ばしい匂いをまとわせるっすね! タナカ特製・黄金の藁と、高知特産のゆずポン酢、そして致死量のニンニクスライスとミョウガで、脳天を突き抜ける旨味を叩き込むっすよ!」
タナカが短い手足で巨大な金串を操り、完璧な火入れの『鰹のたたき』を完成させる。
その分厚い鰹を一口食べた宗次郎の全身から、青白いスパークが弾ける!
「……ッ!! 皮目の強烈な香ばしさと、中のもっちりとした赤身のグラデーション! ニンニクの暴力的な香りが、ワンパターン展開への絶望を吹き飛ばす! 鰹に含まれる良質なEPAとDHAが、私のボロボロの肛門の血流をサラサラにしてくれるッ!!」
しかし、その豪快な炎の宴を、電子音と冷気が切り裂いた。
「フハハハッ! 店内で藁を燃やすなど、消防法とコンプライアンスのガン無視! 煙と匂いはESG経営の敵だ!」
【土佐の低温調理支店長!キャラクター詳細設定】
◆ 長宗我部ちょうそかべ 元親もとちか
キャラ: 『豊臣メガバンク四国統括支店長 / IH&低温調理至上主義バンカー』風。
「料理も経営も、波風を立てず一定温度で管理すべき!」と信じる男。常にIHクッキングヒーターを持ち歩いている。「この野蛮な藁焼き文化も、すべてメガバンク特製『煙ゼロ・63度設定の真空パック低温調理鰹(無臭)』に置き換えてやるぜよ!」と豪語する。
愛機(武器): 『絡繰・真空低温プレス(からくり・スーヴィード・パッカー)』。相手を真空パックに閉じ込め、息苦しい温度でじわじわと社会的に抹殺する恐るべき重機。
口癖: 「温度管理がなってない!」「煙を出すな!」「マニュアル通りにやれ!」
「長宗我部……! 藁の香ばしい匂いがあってこその鰹のたたきぜよ! 低温調理のヌルい鰹なんて認めん!」
かつおが、藁の束を構えて立ちはだかる。
「ヒャハハ! なら俺の『完全無臭・マニュアル徹底・低温鰹』と勝負だ! 俺が勝ったら、この店を俺のIH専門クッキングスタジオにしてやる!」
「……待つっす。鰹のたたきの本当の『野性味』を、俺が教えてやるっすよ」
カピバラ・タナカが前に出た!
「なんだその毛玉は! 衛生管理マニュアルに違反している! まとめて真空パックで消毒してやる!!」
長宗我部が重機を起動させたその時!
前田○子が、ニンニクの匂いが舞う中で飛び出した!
「私の仲間をマニュアル違反の毛玉扱いしないで!!……タナカのことは嫌いでも、私のことは嫌いにならないでくださいッ!!」
「出たぁぁぁっ! 感動の恋愛ドラマを挟んでも一切ブレない、絶対的センターの伝統芸能!!」
クリノジが、ゆずポン酢を啜りながら拍手喝采を送る。
「いくっすよ! タナカ特製・規格外の火力・極上藁焼き鰹っす!!」
タナカが、マニュアルでは絶対に計れない、炎の揺らぎと職人の勘だけが成し得る究極の香ばしさを持った鰹を完成させる!
一口食べた長宗我部の温度計が、エラーを起こして破裂した。
「……ッ!? な、なんだこの血が沸騰するような、命の燃える味は!? 温度とマニュアルだけで管理していた俺の無臭の鰹には、この『魂を揺さぶる藁の薫り』がないというのかァァ!?」
長宗我部は膝から崩れ落ちた。モフモフのカピバラとトップアイドルが、冷徹なマニュアル至上主義を論破したのだ。
「え、ええい! 食の勝敗は認めるが、お前たちを始末する業務命令は別だ! パックしろ、『絡繰・真空低温プレス』!!」
長宗我部が叫ぶと、巨大な真空重機が轟音を立てて突進してきた!
「……やれやれ。タナカさんの魂の炎を、真空で消し去るのは許せませんね」
宗次郎が立ち上がる。膝まである長い髪が揺れ、眉毛のない顔が鋭く長宗我部を睨みつける!
「行きますよ……。スーパー戦国人参の、ワンパターンへの怒りを込めた圧倒的パワー!」
宗次郎は、迫り来る巨大重機に対し、桂浜の砂浜を滑るように低空で突進!
「低空・黄金ドロップキックッ!!」
ドゴォォォォォォォンッ!!
重機の真空パネルが、宗次郎の一撃で粉々に砕け散る!
「な、なんだと!? 特注の耐熱ガラスが……!!」
バランスを崩した長宗我部に向かって、宗次郎の黄金の膝が光り輝く!
「トドメです。閃光・黄金魔術ォォォォォォォッ!!」
ガッシャァァァァァァァンッ!!!
宗次郎の膝が、長宗我部の顔面を完璧に捉えた。
低温調理の野望は霧散し、長宗我部は「温度が熱すぎるぜよぉぉ!」と叫びながら太平洋の彼方へ美しい弧を描いて吹っ飛んでいった。
「……これが、通常回の安心感です」
宗次郎は静かに着地した。
しかし、すぐ側で燃えていた藁焼きの炎が、宗次郎の長すぎる髪の毛先に引火!
「あつっ!! 火が! 火がぁぁ!!」
クリノジが慌ててバケツの水をぶっかけて消火したが、宗次郎の髪は毛先がチリチリに焦げ、強烈な「藁の燻製臭」を放ち始めてしまった。
「ああっ……! 味噌と醤油の匂いの上に、今度はスモーキーな燻製の匂いが……!! 私の髪が完全に『おつまみ』になっています!!」
平和を取り戻した桂浜。
宗次郎(髪から美味しそうな燻製の匂いがする)、カピバラのタナカ、クリノジ、前田○子、そしてかつおの五人が、海を背に横一列に並ぶ。
「皆さん……極上の鰹のたたきと、実家のような安心感のあるワンパターン展開に感謝を込めて。あのポーズで締めましょう!」
宗次郎の合図で、五人は胸の前で愛の形を作った。(宗次郎の髪から焦げた匂いが漂っている)
「「「「「カオス・パーティー!! プロレス・ラァァァァブッ!!!!」」」」」
怒涛の恋愛ドラマから一転、見事なまでのテンプレ展開で土佐の食文化を守り抜いた宗次郎。
スーパー戦国人参の圧倒的パワーと、香ばしい燻製ヘアを手に入れたカオス・パーティーの旅は、第97話の大坂城へ向けて、これからもブレずにワンパターンを貫いていくのである!!




