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第六十九話:ヒャッハーと魔界の扉! 悪徳プロモーターと魔性の毒霧!

 ――カオス・パーティーを乗せた『源内アパッチ』は、山梨を抜けて静岡県・浜名湖のほとりに到着していた。

「オーシャンビュー! 湖の風が最高に気持ちいいっすね!」

 前田○子が、チェックのスカートをひるがえして湖畔ではしゃぐ。

「キュルルッ! 浜名湖と言えば、言わずと知れた『ウナギ』っす! 静岡の最高級茶葉と一緒に、極上の和食を堪能するっすよ!」

 カピバラ・タナカが短い手足でエプロンをキリッと締める。

「……私の長すぎる髪が、ウナギのタレに浸からないように気をつけねば」

 スーパー戦国人参の宗次郎は、髪をお団子状に結い上げて対策バッチリだった。

 ◆◆◆

 一行が訪れたのは、湖畔に店を構える老舗うなぎ屋『鰻魂うなたま・浜松』。

「いらっしゃい! うちのウナギは、身がフワフワで皮はパリッと香ばしいダニ!」

 茶摘み娘の衣装を着た看板娘、静岡うなみが、備長炭の上で肉厚のウナギを焼き上げる。

「キュルルッ! 創業から百年、つぎ足し続けてきた『秘伝のタレ』の焦げる香りがたまらないっす! タナカ特製・静岡産本わさびを少し乗せて、脂の甘みを極限まで引き出すっすよ!」

 しかし、その極上のウナギに宗次郎が箸を伸ばそうとした、まさにその時である。

 パラリラパラリラァァァッ!! ブォォォン!!

 爆音のエンジン音と共に、改造されたトゲトゲの世紀末バイクに乗ったモヒカン集団が、屋台に突っ込んできたのだ!

「フハハハッ! メガバンク特攻隊『豊臣ハイウェイ・スターズ』のお通りだぁ!!」

 バキィィッ!

 リーダー格のモヒカン男(蜂須賀小六)が、鉄パイプでウナギの焼き台を粉砕し、あろうことか『百年の秘伝のタレ』が入った壺を蹴り飛ばした!

「ああっ!? うちの、うちのタレがぁぁっ!!」

 うなみが悲鳴を上げる。

「ヒャッハー!! 汚ねぇ壺のタレなんか全部捨てちまえ! ウナギにはメガバンク特製の『超・化学調味料ドロドロシロップ』をかけて、効率よくカロリー摂取させるんだよ! ヒャッハァァァ!!」

 暴走族たちが、焼きたてのウナギを踏みつけ、周囲の屋台を次々と破壊していく。

「お、おのれ……! 食べ物を粗末にするなんて!」

 クリノジが怒りに震える。

 だが、その時。

 暴走族の放った**「ヒャッハー!」という世紀末の咆哮が、宗次郎の脳内に眠る、かつての『夜叉』と呼ばれた戦場の記憶……そして、心の奥底に封印されていた「悪の心」**の扉をこじ開けてしまった。

「……ヒャッ……ハァ……?」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!

 宗次郎の全身から立ち昇っていた黄金のオーラが、突如として禍々しいドス黒い瘴気へと反転した。

 スーパー戦国人参の証であった膝まである長髪がシュルシュルと縮み、かつての『髪の毛があった頃』のミディアムヘアーへと戻る。しかし、その顔には、血の赤と漆黒のペイントが不気味に浮かび上がっていた。

「そ、宗次郎さん!? 顔に悪魔みたいなペイントが!!」

 クリノジが絶叫する。

 そこに立っていたのは、もはや温厚な剣術指南役ではない。魔界から降臨した悪の化身――**『グレート・ジロウ』**であった。その姿はまさに、全盛期のフサフサだった頃の天才悪役レスラー(グレート・○タ)そのものだ!

「……シュゥゥゥ……」

 グレート・ジロウは言葉を発せず、不気味に首を傾げながら、禍々しい息を吐く。

「ゲギャギャギャッ!! いいぞぉ、ジロウ! 奴らを地獄の底まで叩き落としてやれぇっ!!」

「タ、タナカさん!?」

 前田○子が目を疑う。

 なんと、グレート・ジロウから放たれた悪の瘴気がタナカに伝染!

 いつもの可愛らしいエプロンは消え失せ、タナカは**ダブルの高級スーツに身を包み、真っ黒なサングラスをかけ、口には極太の葉巻のようなニンジンをくわえた『悪徳プロモーター』**へと変貌していたのだ!

「やっちまえジロウ! あんなモヒカン共、パイプ椅子で血祭りにあげて視聴率を稼ぐんだ、キュルル(※邪悪な笑い声)!!」

 悪徳プロモーター・タナカが葉巻を吹かしながら指示を出す。

「なんだこのペイント野郎と、スーツ着たネズミは!? ヒャッハー、轢き殺してやらぁ!!」

 モヒカン暴走族が、改造バイクでグレート・ジロウに向かって突進してくる!

 ――ガァァンッ!!!

「ギャベェッ!?」

 突進してきたバイクの顔面に、ジロウがどこからともなく取り出したパイプ椅子がフルスイングで炸裂! バイクは宙を舞い、モヒカン男は白目を剥いて地面に叩きつけられた。

「ヒィィッ!? な、なんだこいつの凶暴性は!?」

 ジロウの動きには、一切の躊躇がない。倒れたモヒカンの頭を革靴のつま先で容赦なく蹴り上げ、周囲の暴走族の顔面をパイプ椅子で次々とカチ割っていく。まさに魔界の狂気。反則の嵐である!

「いいぞジロウ! もっとだ! レフェリーの目を盗んで急所を狙え! ゲギャギャギャ!!」

 悪徳プロモーター・タナカが、札束で顔を扇ぎながらゲスいヤジを飛ばす。

「ば、化け物かこいつらは! まとめてかかれ! ヒャッハー!!」

 残った数十人の暴走族が、鉄パイプやチェーンを振り回して一斉にジロウに襲いかかる。

 その瞬間。

 グレート・ジロウの喉仏が、大きく膨らんだ。

「……シュゥゥゥゥ…………プゥゥゥゥゥッ!!!」

 ジロウの口から、静岡特産の高級茶葉を極限まで濃縮した、**鮮やかな緑色の『毒霧グリーン・ミスト』**が空高く噴射された!!

「ぎゃあああああッ!? 目が、目がァァァッ!! 茶カテキンの殺菌作用が強すぎて、悪の粘膜が焼かれるぅぅッ!!」

 毒霧をモロに浴びた暴走族たちが、緑色に染まりながら次々とバタバタと倒れ伏していく。

「トドメだジロウ! 地獄のシャイニングを見せてやれ!!」

 悪のタナカの号令と共に、ジロウが倒れかけたモヒカン・リーダーの膝を踏み台にして跳躍!

「……シュルルルルッ!!(※無言のまま放つ、魔界のシャイニング・ウィザード)」

 ドゴォォォォォンッ!!!

 モヒカンの顔面が陥没せんばかりの破壊力。豊臣の暴走族軍団は、一人の悪魔的レスラーの前に完全に壊滅した。

 しかし、戦闘が終わっても、グレート・ジロウの眼に宿った狂気は消えない。

「シュゥゥゥ……」

 ジロウは次に、震えて腰を抜かしている看板娘のうなみと、前田○子の方へとゆっくりと振り返った。その手には、ベコンベコンにへこんだパイプ椅子が握られている。

「ああっ! ジロウの悪の心が暴走して、無関係な人まで襲おうとしてるっすよ! 最高にヒールだぜ、ゲギャギャ!」

 悪徳プロモーターが狂ったように笑う。

「だ、ダメです宗次郎さん! 目を覚ましてください!!」

 クリノジが、決死の覚悟でジロウの前に飛び出した!

 その両手には、宗次郎が愛用している**『極上の痔用・ドーナツクッション』**が握りしめられている。

「あなたは魔界の住人なんかじゃない! お尻に爆弾を抱えながらも、綺羅姫のために戦う、誰よりも優しい伊達家の剣術指南役・神堂宗次郎じゃないですかッ!!」

 クリノジは、ドーナツクッションをジロウの顔面に全力で押し付けた!

「思い出せぇぇぇっ! あなたの本当の痛みをォォォ!!」

「……!!」

 クッションの柔らかな感触と、常に己の肛門を労ってくれていた温もりが、ジロウの脳内を満たした。

「……私、は……」

 ポロリと、パイプ椅子が地面に落ちる。

 顔面を覆っていた禍々しいペイントが、まるで幻のようにスッと消え去った。縮んでいた髪の毛が再びシュルルルルッと伸び始め、瞬く間に『スーパー戦国人参(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし)』の姿へと戻った。

 同時に、タナカを包んでいた高級スーツも煙のように消え去り、いつもの可愛らしいエプロン姿のモフモフ・カピバラに戻った。

「ハッ……! 私はいったい、何を……」

 宗次郎が両手を見つめる。

「キュルル? なんで俺、葉巻なんてくわえてるっすか? まさか俺、プロデューサー気取りの痛いヤツになってたっすか!?」

 タナカが慌ててニンジンをペッと吐き出す。

「よ、よかったですぅ! 悪の心は消え去りました!」

 クリノジがへたり込み、前田○子が「宗次郎さん、カッコよかったけど怖かったよ〜!」と涙目で抱きついた。

 平和を取り戻した浜名湖畔。

 暴走族は去ったが、屋台とウナギはボロボロになってしまった。しかし、うなみは笑顔で言った。

「ありがとう。秘伝のタレはこぼれちゃったけど、また一からつぎ足していくダニ。あんたたちの強さ、忘れないよ!」

 宗次郎(顔にはうっすら緑の茶葉がついている)、エプロン姿のタナカ、クリノジ、前田○子、そしてうなみの五人が、夕陽の沈む浜名湖を背に横一列に並ぶ。

「皆さん……極上のウナギを守れなかった無念と、危うく魔界に堕ちかけた己の未熟さに反省を込めて。あのポーズで締めましょう!」

 宗次郎の合図で、五人は胸の前で愛の形を作った。

「「「「「カオス・パーティー!! プロレス・ラァァァァブッ!!!!」」」」」

 世紀末のヒャッハーによって魔界の扉が開きかけたものの、愛用のドーナツクッションによって辛くも正気を取り戻した宗次郎。

 悪徳プロモーターの黒歴史を刻んだタナカと共に、カオス・パーティーの旅は、大坂城へと向けて(少しだけ)歩みを進めるのである!!

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