第六十八話:絶対的リングの天才! 甲州ほうとうと愛のシャイニング!
――カオス・パーティーを乗せた『源内アパッチ』が次に降り立ったのは、雄大な富士山を望む山梨県・甲府盆地であった。
「はぁ〜、空気が澄んでて富士山が綺麗! なんだか心が洗われるね!」
前田○子が、武田信玄の銅像の前で大きく伸びをする。
「キュルルッ! 富士の湧き水と豊かな大地の恵み! 山梨といえば、絶対に外せない郷土料理があるっすよ!」
カピバラ・タナカが短い前足でエプロンの紐をキリッと結ぶ。
「……私の長すぎる髪が、富士山の樹海に引っかからないか心配です」
スーパー戦国人参(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし)の宗次郎が、重たい髪を引きずりながら歩く。
◆◆◆
一行が訪れたのは、甲府駅前にある老舗『麺魂・風林火山』。
「いらっしゃい! 山梨に来たなら、熱々の『甲州ほうとう』を食っていけし!」
武田菱の法被を着た看板娘、甲斐ももこが、鉄鍋でグツグツと煮込まれた、かぼちゃと平打ち麺たっぷりのほうとうを運んできた。
「キュルルッ! 味噌ベースの汁に、かぼちゃの甘みが完全に溶け込んでいるっすね! タナカ特製・黄金の熟成甲州味噌と、富士桜ポークから出た強烈な旨味脂を掛け合わせるっすよ!」
カピバラ・タナカが短い手足で巨大な木べらを操り、完璧なとろみを持たせた至高のほうとうを仕上げる。
その熱々のほうとうを一口食べた宗次郎の全身から、青白いスパークが弾ける!
「……ッ!! 平打ち麺のもっちりとした食感! スープに溶けたかぼちゃの優しい甘さが、荒れ狂う戦国(と私の肛門)に平和をもたらす! これぞ、武田信玄の陣中食から進化した、究極の癒やしフードッ!!」
しかし、そのほっこりとした空気を、スタジアムの入場テーマ曲のような爆音が切り裂いた!
『チャララーーラーラーラー♪(※某・伝説のプロレスラー入場曲風の音)』
「フハハハッ! そんな炭水化物と糖質の塊のような麺、アスリートの肉体作りには不要だ!」
【甲州の絶対的プロレス天才支店長!キャラクター詳細設定】
◆ 武闘ぶとう 敬司けいじ
キャラ: 『豊臣メガバンク甲州支店長 / ナチュラルボーン・マスター・バンカー』風。
スキンヘッドに蓄えた髭、褐色の筋肉質な肉体を持つ男。豊臣メガバンク内でも「絶対に勝てない(絶対説)」と恐れられる天才。入場するだけで周囲の空気を支配する。「こんな泥臭い田舎料理など、メガバンク特製『超・高タンパクプロテインドリンク(毒霧フレーバー)』に置き換えてやる!」と豪語する。
愛機(武器): なし。彼自身の肉体とプロレスセンスが最強の武器。
口癖: 「イヤァオ!」「プロレスLOVEだ!」「俺の膝が火を吹くぜ!」
「武闘……! ほうとうの温かさをプロテインで済ませるなんて、山梨の魂への冒涜ずら!」
ももこが、お玉を構えて立ちはだかる。
「ヒャハハ! なら俺の『完全栄養・グリーン・ポイズン・プロテイン』と勝負だ! 俺が勝ったら、この店を俺のフィットネスジムにしてやる!」
武闘が口に含んだ緑色の液体を、空中に向かって毒霧のようにブワァァッと吹き上げた!
「……待つっす。ほうとうの本当の『パンプアップ(心の充実)』を、俺が教えてやるっすよ」
カピバラ・タナカが前に出た!
「なんだそのたるんだ毛玉は! 筋肉が足りない! 俺の毒霧プロテインの錆にしてやる!!」
武闘が緑色の液体をタナカに向けたその時!
前田○子が、ほうとうの湯気が舞う中で飛び出した!
「私の仲間を毒霧まみれにしないで!!……タナカのことは嫌いでも、私のことは嫌いにならないでくださいッ!!」
「出たぁぁぁっ! 天才レスラーの前でも絶対に引かない、センターの胆力!!」
クリノジが拍手喝采を送る。
「いくっすよ! タナカ特製・黄金のパンプアップ・極上肉ほうとうっす!!」
タナカが、アスリートも唸るほどのタンパク質(肉)と、ほうとうの優しさを完璧に融合させた一杯を完成させる!
一口食べた武闘のスキンヘッドから、感動の汗が噴き出した。
「……ッ!? な、なんだこの筋肉の隅々にまで染み渡るような滋味深さは!? サプリメントで効率だけを求めていた俺の心に、この『手作りの温もり』がヒットマッスルしている……! 俺のプロテインには、この『愛』がないというのかァァ!?」
武闘は膝から崩れ落ちた。モフモフのカピバラとトップアイドルが、冷徹なプロテイン至上主義を論破したのだ。
「え、ええい! グルメ対決の負けは認めるが、メガバンクの支店長として貴様らを逃すわけにはいかん! 行くぞ!」
武闘が両手で独特のポーズ(LOVEの形)を作り、宗次郎に向かって突進してきた!
「……やれやれ。タナカさんのほうとうの余韻を、暴力でぶち壊すのは許せませんね」
宗次郎が立ち上がる。膝まである長い髪が揺れ、眉毛のない顔が鋭く武闘を睨みつける!
「行きますよ……。スーパー戦国人参の圧倒的パワー!」
宗次郎は、武闘の突進に対し、低空で潜り込む!
「黄金・大竜巻旋回ッ!!」
しかし!
「甘いぜぇぇッ!!」
武闘は、宗次郎が脚を掴むよりも早く空中で体を捻り、完璧なタイミングで宗次郎の腕を振りほどいた!
「な、なにっ!? 私のドラゴンスクリューが完全に読まれた!?」
「俺を誰だと思っている! 天才・武闘だぞ! 貴様のプロレス技など、すべてお見通しだ! 食らえッ!!」
武闘が、体勢を崩した宗次郎の膝を踏み台にして、軽やかに宙を舞う!
「閃光・魔術ォォォォォッ!!」
なんと、宗次郎の必殺技であるシャイニング・ウィザードを、本家の武闘が放ってきたのだ!
「ぐわああああッ!!」
強烈な膝蹴りが宗次郎の顔面を捉え、宗次郎は吹き飛ばされた。
圧倒的な強さ。まさに絶対説!
「……ふぅ。まだまだだなぁ、若造」
武闘は着地し、ゆっくりと宗次郎を見下ろした。しかし、その時、武闘の顔が少しだけ苦痛に歪み、自らの膝を庇うような素振りを見せた。
「……武闘、殿」
宗次郎が、フラフラと立ち上がる。
「あなたのその膝……人工関節、もしくはそれに近いほどの重傷ですね? あのシャイニング・ウィザードを放つたびに、あなた自身も激痛に耐えているはずだ」
「……フン。プロレスラーの勲章さ。ボロボロの膝でも、リング(戦場)に立つ限りは最高の技を見せる。それが俺の『LOVE』だ」
武闘がニヤリと笑う。
宗次郎は、その言葉に深く心を打たれた。
「……素晴らしい。あなたのような天才が、満身創痍の体を抱えながらも戦い続けている。……実は、私も同じなのです」
「なんだと?」
「私の……肛門は、すでにボロボロです。戦うたびに激痛が走り、ドーナツクッションが手放せません。しかし、私もまた、守るべき者のために立ち上がり、技を繰り出している!」
宗次郎の言葉に、武闘の目が大きく見開かれた。
「膝と……尻。部位は違えど、お前もまた、己の肉体を削りながら『愛(LOVE)』のために戦う戦士だったというのか……!」
「ええ。あなたのそのプロレスへの愛、確かに受け取りました!」
二人の間に、敵味方を超えた、満身創痍の戦士たちにしか分からない熱い絆が芽生えていた。
武闘は、静かに構えを解いた。
「……俺の負けだ、宗次郎。お前の尻に秘められた強靭な『LOVE』、俺の膝以上の覚悟を見たぜ。メガバンクの命令なんて、もうどうでもいい。お前たちは、大坂城へ行け!」
「武闘殿……! 感謝します!」
平和(と熱い友情)を取り戻した甲州の空。
宗次郎、カピバラのタナカ、クリノジ、前田○子、ももこ。そして、敵であったはずの絶対的プロレスの天才・武闘敬司。
六人は、雄大な富士山をバックに横一列に並んだ。
「皆さん……極上の甲州ほうとうと、満身創痍の戦士たちに敬意を込めて。あのポーズで締めましょう!」
宗次郎の合図で、六人は両手の指で「L」の字を作り、胸の前で完璧な愛の形を作った。
「「「「「「カオス・パーティー!! プロレス・LOVEッ!!!!」」」」」」
天才・武闘敬司との激闘は、まさかの「プロレス愛」による大団円を迎えた。
お尻と膝に爆弾を抱える者同士の共鳴。カオス・パーティーの旅は、プロレスへの愛を胸に、大坂城へと(ゆっくり)進んでいくのである!




