第六十七話:真の第二話上映会! 幻の絡繰大盾刀と、完全に狂った歯車!
――宇宙船『源内アパッチ』の艦内。巨大スクリーンの前で、クリノジがスライディング土下座を決めていた。
「申し訳ありませんでしたぁぁ!! 僕の認識が間違っていました! 第二話でタナカさんが料理し始めたんじゃなくて、第二話もめちゃくちゃシリアスで、しかも設定が練り込まれた最高のベンチャー企業パロディでした!!」
「キュルルッ。クリノジ、適当な記憶で作者様の構成力を疑っちゃダメっすよ。よし、気を取り直して真の第二話を再生するっす!」
カピバラ・タナカが短い手足で映写機のスイッチを押した。
スクリーンに映し出されたのは、筋肉至上主義の伊達成実、データとITを駆使する片倉小十郎、そしてアヴァンギャルドな支倉常長の姿だった。
『小十郎! お前はこれだからダメなんだよ! データばっかり見てるから、大胸筋が育たないんだ!』
『力押しはコンプライアンス違反です。我々伊達家はITとイノベーションで勝負する奥州のベンチャー企業ですから』
「うわぁ! ちゃんとビジネス用語と戦国武将の個性が融合してる!」
前田○子がポップコーンを食べながら感心する。
「キュルルッ。成金メガバンクに対抗する、地方の革新的ITベンチャー。完全に王道の企業エンタメストーリーっすね。……本当に、いつから『きんたま星』とかに行くようになったんっすか?」
続いて、大坂のメガバンク本部。
EDM雅楽が鳴り響く中、秀吉、淀殿(茶々)、加藤清正、そしてハッカーのような黒田官兵衛が登場し、小田原と伊達への『TOB(敵対的買収)』を企てるシーン。
『秀吉様〜! この金屏風、全然「映え」ないから配置変えてよ〜! お願いね、ひでちゃん♡』
「あっ! 出ましたよ! ここで茶々が秀吉のことを『ひでちゃん』って呼んでます!」
クリノジが画面を指差す。
「キュルルッ! そうっす! 『ひでちゃん』は作者のことでも読者のことでもなく、淀殿が秀吉を呼ぶ時のラブラブな愛称っす! もう絶対に間違えないっすよ!」
タナカが力強く頷く。
そして物語は、道場での宗次郎と綺羅姫のシーンへ。
宗次郎が、己の過去の罪(火縄銃の夜叉)を告白し、二人が心を通わせる最高にエモい名場面である。
『……あたしは、あなたが石ころだなんて思いません。ずっと、あたしのそばにいてくださいね』
『綺羅。ありがとう。……でもね、私には、あなたを守るための「絶対防御」の力があるんです』
「キャーッ! 宗次郎さん、カッコいい! 胸キュン展開キタコレ!」
前田○子が身悶えする。
しかし、現在の宗次郎(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし・毛先は豚骨とケチャップのハイブリッド臭)は、無言でスクリーンを凝視し、ワナワナと震えていた。
画面の中の宗次郎は、愛刀『玄武』を構え、綺羅姫の木刀の一撃を完璧にいなす。
『――ガシャンッ!! 奇妙な絡繰が作動し、玄武の刀身が一瞬にして扇状に展開。通常の刀の三倍の厚みを持つ峰が、完璧な「大盾」へと変貌したのだ』
『これが、夢想静水流の絡繰大盾刀、「玄武」です。私は、この小さな手と笑顔を守るためだけに、この力を使うと誓ったんです』
――バチンッ!
上映が終わった瞬間、艦内の照明が点いた。
カオス・パーティーの三人は、信じられないものを見るような目で、現在の宗次郎を振り返った。
「そ、宗次郎さん……! あんな、ロマン溢れる変形ギミック付きの超カッコいい絡繰大盾刀を持ってたんですか!?」
クリノジが絶叫する。
「キュルルッ! 相手の攻撃を無力化する絶対防御の剣術! めちゃくちゃ主人公してるっす! ……なのに、なんで今は素手でドラゴンスクリューとかシャイニング・ウィザードばっかりやってるんっすか!? あの『玄武』はどこ行ったんっすか!?」
タナカが短い前足で宗次郎の胸ぐら(?)を掴む。
「……質屋です」
宗次郎が、ポツリとこぼした。
「「「質屋ァァァ!?」」」
「……旅の序盤で路銀が尽き、痔の特効薬と、極上のドーナツクッションを買うために、質に入れました。今頃は、どこかの好事家の床の間に飾られていることでしょう」
宗次郎の両目から、滝のような涙が溢れ出した。
「どうして……どうしてこうなったんですか!! 私の『玄武』! 私の『夢想静水流』!! そして、あのピュアで美しかった綺羅との純愛!! イタリアでパスタを茹で、宇宙で四角いタコ焼きと戦っている間に、私のシリアスなアイデンティティは完全に崩壊してしまったァァァッ!!」
宗次郎は、己の長すぎる髪を激しく掻き毟り、ドーナツクッションに顔を埋めて号泣した。
「……インディーズ時代はあんなに尖っててメッセージ性もあったのに、メジャーデビューしてバラエティ番組に出始めたら、ただの面白いおじさんになっちゃったバンドマンみたいだね……」
前田○子が、芸能界の残酷な真理でトドメを刺した。
「泣かないでください宗次郎さん! 作者が『97話で大坂城に着く』って約束してくれたんですから! あと30話、プロレス技と食レポで尺を稼げば、きっと綺羅姫とのシリアスな純愛ストーリーに戻れますよ!」
クリノジが必死に慰める。
「キュルル……。果たしてこのギャグ時空から、あのハードボイルドな世界観に戻れるのか、カピバラの野生の勘でも全く読めないっす……」
真の第二話の上映会を経て、自分たちがどれほど脱線してしまったかを痛感したカオス・パーティー。
失われた『玄武』とシリアスを取り戻すため(?)、彼らの大坂城への果てしなき道のりは、後悔と豚骨の匂いを引きずりながら、次なる迷走へと続いていくのである!!




