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第六十六話:失われたシリアスを求めて! 第一話上映会と容赦ないツッコミ!

 ――宇宙船『源内アパッチ』の艦内。巨大なスクリーン(源内特製の絡繰映写機)の前に、カオス・パーティーの面々がポップコーン片手に集まっていた。

「……というわけで、作者から『本当は第一話はこんなシリアスな話だったんだぞ! なんだよきんたま星って! るろ○剣心を目指してたんだよ!』というクレームと共に、第一話の原稿(台本)が送られてきました」

 クリノジが、スクリーンに映し出された第一話の映像を指差す。

「キュルルッ! ということは、今回は『第一話振り返り&オーディオコメンタリー(尺稼ぎ)』の回っすね!」

 カピバラ・タナカが短い手足でポップコーンを口に放り込む。

 スクリーンの中では、まだ髪が短く、眉毛もちゃんとある「普通の人間」の宗次郎が、若侍の攻撃を華麗に受け流していた。

『ほら、足元がお留守になっているよ。怪我はないかい?』

「はぁ〜! この頃の宗次郎さん、ちゃんと爽やか剣士してるぅ!」

 前田○子が目を輝かせる。

「……私の剣術『夢想静水流』は、防御特化だったのですね。今や『黄金・大竜巻旋回ドラゴンスクリュー』や『閃光・黄金魔術シャイニング・ウィザード』といったゴリゴリの攻撃型プロレス技しか使っていませんが」

 現在の宗次郎(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし)が、遠い目をして呟く。

「キュルル。しかも、極厚の絡繰大盾刀『玄武』と無数の火縄銃を隠し持ってたハードボイルドな設定だったっすね。……いつからドーナツクッションと肉弾戦だけになったんっすか?」

「……痔です。すべては、あの忌まわしき切れ痔から、私のシリアスな人生は狂い始めたのです」

 宗次郎が血の涙を流す。

 画面が切り替わり、美しいポニーテールの少女――綺羅姫が、道場に乱入してくる。

『宗次郎の剣は、誰かを傷つけるためのものじゃありません! 一番優しくて強い剣なんです!』

「わぁっ、この子が綺羅姫! 可愛い! でも、この正ヒロイン、出番この一回だけで、あとずっと大坂城の地下に幽閉されてるんですよね?」

 前田○子が容赦ない事実を突きつける。

「ううっ……! 綺羅……! イタリアでパスタ食ってケチャップまみれになっている場合ではなかった……!」

 宗次郎がドーナツクッションを抱きしめて号泣する。

 続いて画面には、レザージャケットを着た伊達政宗や、そろばんを弾く片倉小十郎、プロテインを欲する伊達成実が登場する。

「キュルルッ。この頃から、豊臣が『メガバンク』で伊達が『ベンチャー企業』っていうビジネスパロディの要素はあったんっすね。でも、ここからどうして宇宙の物流(きんたま星)とかGoogle本社に飛んだんっすか?」

「作者の行き当たりばったりですぅ!」

 クリノジがズバッと言う。「るろ○剣心を目指していたとか言いながら、第二話でタナカさんがエプロン姿で料理し始めたのがすべての元凶ですよ!」

「俺のせいっすか!?」

 そして、画面は上方(大坂)のメガバンク本部へ。

 EDMが鳴り響く中、金のネックレスを巻いた秀吉と、淀殿(茶々)、石田三成らが登場する。

『ちょっと三成さん、ハワイ旅行の手配をお願いね! ねっ、ひでちゃん♡』

「ああっ! ここでカトリーヌ(淀殿)が秀吉を『ひでちゃん』って呼んでますよ!」

 クリノジが画面を指差す。

「キュルルッ! 『ひでちゃん』は作者のことでも読者のことでもなく、淀殿のラブラブな愛称だったんっすね! 危うくAIが勘違いして世界観を崩壊させるところだったっす!」

 タナカが安堵のため息をつく。

 物語の終盤、縁側で宗次郎と綺羅姫が語り合うシーン。

『消えない悲しみも、かつての戦の綻びも、この小さな手と笑顔があれば、それでよかったねと笑える気がした。』

「……めちゃくちゃいいシーンじゃないですか。なんでこうならなかったんですか!」

 前田○子が涙ぐみながら抗議する。

「キュルルッ。繰り返すっすけど、この宗次郎さんは今や、眉毛がなくて髪の毛が膝まであるマッチョなスーパー戦国人参っすからね。この純愛シーンの面影はゼロっす」

 タナカが残酷な現実を突きつける。

「……私の、私の青春が……! 過去の罪を背負う孤高の剣客という設定が……!!」

 宗次郎が、長すぎる髪をスクリーンに叩きつけて慟哭する。

「よしっ! 第一話のシリアスな気持ちと設定を思い出したことだし、次回からはいよいよ大坂城に向けて一直線ですね!」

 クリノジが気合を入れる。

「……いえ。作者からの手紙の最後に、『このまま行くともう大坂城行きそうで怖いので、97話で到着してなんやかんやでやりますからね』と書いてあります」

 宗次郎が、絶望的な一文を読み上げた。

「「「「残り30話以上、まだ寄り道するのかよォォォォッ!!!」」」」

 艦内に、カオス・パーティー全員の絶叫が響き渡った。

 第一話の美しいシリアス設定を振り返り、現在のカオスっぷりとの落差に絶望した一行。

 第97話の大坂城到着(予定)まで、彼らの終わらない「尺稼ぎグルメ旅」は、さらなる混沌を極めながら続いていくのである!!

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