第六十五話:忘却の指南役と激怒の主君! 仙台牛タンとスマートすぎる監査官!
――宮城県・仙台市。伊達政宗の騎馬像が見下ろす青葉城址にて、カオス・パーティーの面々は、クリノジが読み上げる「作者からの手紙(二通目)」を聞いて直立不動になっていた。
「……『最終的に大阪城に捕らえられた姫を救うことだけは忘れないように。あと、主人公は伊達家の剣術指南役で、政宗は仲間。姫と恋仲なのも設定忘れないでね〜。以上、作者より』……だそうです」
「ハッ……!!」
スーパー戦国人参(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし・毛先はまだ微妙にケチャップ臭い)の宗次郎が、雷に打たれたように膝から崩れ落ちた。
「私としたことが!! イタリアでパスタを食い、宇宙でダジャレを聞いている間に、己の主君である政宗様と、最も愛する女性……大阪城で私を待つ『伊達家の姫』の存在を、完全に忘却の彼方に追いやっていたッ!!」
宗次郎が、長すぎる髪を掻き毟りながら慟哭する。
「キュルルッ……。主君の妹を放置して何十話もグルメ旅を満喫する剣術指南役なんて、普通なら即刻切腹っすよ」
カピバラ・タナカが短い前足を組んで呆れ返る。
その時である。
空から、三日月の前立てを輝かせた漆黒の甲冑の男が、凄まじい怒気を纏って降ってきた!
「その通りだ、この大馬鹿野郎がァァァッ!!!」
ドゴォォォォォォォォンッ!!!
男の鉄拳が、宗次郎の顔面にクリーンヒット! 宗次郎は伊達政宗像の台座まで見事に吹っ飛んだ。
「政宗様ッ!?」
「俺はお前を信じて、可愛い妹の救出を託したんだぞ! なのに貴様は! 北海道に二回も行き! 宇宙でネズミの作ったたこ焼きを食い! 髪の毛をケチャップまみれにしていただとォォ!? 妹の恋人として、いや、伊達家の剣術指南役として最低のクズ野郎だッ!!」
眼帯をしたスタイリッシュな伊達男・伊達政宗が、血走った目で宗次郎を指差す。メガバンクに屈していない、誇り高き宗次郎の真の主君である。
「ぐふぅッ……! ぐ、ぐうの音も出ない正論……! すべては作者の行き当たりばったりのせいとはいえ、私の罪です……!」
宗次郎は、お尻のドーナツクッションを抱きしめながら血の涙を流した。
◆◆◆
政宗の愛の説教(物理)が小一時間続いた後、政宗は「大阪城に乗り込む前に精をつけろ」と、一行を仙台名物『牛タン焼き』の老舗『牛魂・伊達男』へと連れてきた。
「いらっしゃい! 政宗様のお墨付き、分厚い牛タンでスタミナつけなさいな!」
法被姿の看板娘、仙台あおばが、炭火の上で分厚くスライスされた牛タンを豪快に焼き上げる。
「キュルルッ! さすが政宗様行きつけの店っす! タナカ特製・黄金の特製塩と、爽やかな青唐辛子の南蛮味噌漬け、そしてテールスープの完璧な定食セットで迎え撃つっすよ!」
カピバラ・タナカが短い手足でトングを操り、完璧なミディアムレアの牛タンを焼き上げる。
その熱々の牛タンを一口食べた宗次郎の全身から、青白いスパークが弾ける!
「……ッ!! 押し返すような弾力の中から、熟成された肉汁の旨味が爆発する! 麦飯との相性はまさに宇宙! 私の荒れ狂う肛門と、姫への罪悪感が、このテールスープの優しさで浄化されていくッ!!」
しかし、その主従の絆を確かめ合う食卓を、無粋なアラーム音が切り裂いた。
「フハハハッ! メガバンクに逆らう田舎大名が、泥臭い炭火焼きで傷の舐め合いか!」
【東北監視のスマート監査官!キャラクター詳細設定】
◆ 蒲生がもう 氏郷うじさと
キャラ: 『豊臣メガバンク東北監視役 / スマート・カプセル至上主義バンカー』風。
「食事も経営もスマートであるべき!」と信じる、秀吉から伊達家監視のために送り込まれたエリート。常にスマートウォッチを見つめている。「こんな煙たい肉料理など、メガバンク特製『無臭・無煙・栄養凝縮スマートカプセル』に置き換えてやる!」と豪語する。
愛機(武器): 『絡繰・スマート・クローザー』。巨大な銀色のカプセル型重機。相手を中に閉じ込め、真空パックにして社会的に抹殺する。
口癖: 「スマートじゃないな」「匂いがつく!」「無駄を省け!」
「蒲生……! 秀吉の犬が、俺たちの牛タンを泥臭いだと!? 炭火の香りは武士の魂だぞ!」
政宗が刀の柄に手をかける。
「ヒャハハ! なら俺の『完全無臭・牛タンフレーバー・スマートカプセル(一粒10キロカロリー)』と勝負だ! 俺が勝ったら、この店も伊達家も真空パックにしてやる!」
「……待つっす。牛タンの本当の『厚み(魂)』を、俺が教えてやるっすよ」
カピバラ・タナカが前に出た!
「なんだその毛玉は! 俺のスマートな視界に巨大ネズミを入れるな! まとめて真空パックにしてやる!!」
蒲生がカプセル重機を起動させたその時!
前田○子が、炭火の煙が舞う中で飛び出した!
「私の仲間を真空パックにしないで!!……タナカのことは嫌いでも、私のことは嫌いにならないでくださいッ!!」
「出たぁぁぁっ! スマートさの欠片もない泥臭いアイドル魂、絶対的センターの鉄板フレーズ!!」
クリノジが、南蛮味噌をかじりながら拍手喝采を送る。
「いくっすよ! タナカ特製・愛と厚みの黄金極厚・芯タン焼きっす!!」
タナカが、一本の牛タンからわずかしか取れない「芯」の部分だけを贅沢に使った、究極の分厚い牛タンを完成させる!
一口食べた蒲生のスマートウォッチが、カロリー計算を放棄して爆発した。
「……ッ!? な、なんだこの歯を包み込むような柔らかさと、溢れ出す生命の味は!? 無臭と効率だけを追求した俺のカプセルには、この『食らいつく野性味』がないというのかァァ!?」
蒲生は膝から崩れ落ちた。モフモフのカピバラとトップアイドルが、冷徹なスマート至上主義を粉砕したのだ。
「え、ええい! 牛タンの美味さは認めるが、伊達家の取り潰しは決定事項だ! 真空パックにしてやる、『絡繰・スマート・クローザー』!!」
蒲生が叫ぶと、巨大な銀色のカプセルが政宗たちを飲み込もうと突進してきた!
「……やらせませんよ。政宗様からいただいたこの命、そして姫への愛!」
宗次郎が立ち上がる。ケチャップの匂いが微かに残る長髪が風になびき、眉毛のない顔が真っ直ぐに蒲生を見据える!
「行きますよ……。剣術指南役の誇りを思い出した、スーパー戦国人参の圧倒的パワー!」
宗次郎は、迫り来る巨大カプセルに対し、青葉城の石垣を蹴って低空で突進!
「低空・黄金ドロップキックッ!!」
ドゴォォォォォォォンッ!!
カプセルの強化ガラスが、宗次郎の一撃で粉々に砕け散る!
「な、なんだと!? 俺のスマート装甲が……!!」
バランスを崩した蒲生に向かって、宗次郎の黄金の膝が光り輝く!
「姫は……必ず私が救い出します! 閃光・黄金魔術ォォォォォォォッ!!」
ガッシャァァァァァァァンッ!!!
宗次郎の膝が、蒲生の顔面を完璧に捉えた。
メガバンクの野望は霧散し、蒲生は「煙たいのは嫌だァァ!」と叫びながら、広瀬川の方向へ美しい弧を描いて吹っ飛んでいった。
「……これが、伊達家の剣術指南役です」
宗次郎は静かに着地した。
平和を取り戻した仙台の街。
宗次郎、カピバラのタナカ、クリノジ、前田○子、あおば、そして腕を組んで頷く政宗の六人が、横一列に並ぶ。
「皆さん……極上の牛タンと、政宗様からの愛の鉄拳に感謝を込めて。あのポーズで締めましょう!」
宗次郎の合図で、六人は胸の前で愛の形を作った。(政宗も恥ずかしそうにちょっとだけハートを作ってくれた)
「「「「「「カオス・パーティー!! プロレス・ラァァァァブッ!!!!」」」」」」
作者からの強引なリマインドにより、ついに「姫の救出」と「己の素性」という最大の目的を思い出した宗次郎。
スーパー戦国人参の圧倒的パワーと、主君・政宗公の激励を受けたカオス・パーティーの旅は、いよいよ(今度こそ本当に)大阪城へと向けて加速していくのである!!




