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第六十三話:鍵集め放棄とローマの休日! 激怒のカルボナーラとへし折られた麺!

 ――宇宙船『源内アパッチ』の艦内。クリノジが、これまでの旅の記録(台本)をパラパラとめくりながら、ふと真顔になった。

「……あの、皆さん。僕たち、何か決定的なことを忘れていませんか?」

「キュルル? 何っすか、クリノジ。みたらし団子のタレのレシピなら忘れてないっすよ」

 カピバラ・タナカが首を傾げる。

「違いますよ! 『大阪城のバリア解除キー』です!! 全国に散らばった鍵を集めないと、秀吉のいる大阪城に突入できない設定だったじゃないですか! 札幌だの宇宙だのアメリカだの飛び回って、鍵集め完全に放棄してますよね!?」

「ああっ……!」

 前田○子が口元を押さえる。「そういえば、第一話から読んでいる熱心なファンの方に『鍵どうなった?』って握手会で聞かれそう!」

「……安心してください。作者の脳内からその設定は完全に消え去りました。大人の事情(行き当たりばったり)というやつです」

 スーパー戦国人参(膝まで届く黄金の長髪・眉毛なし)の宗次郎が、長い髪を三つ編みにしながら悟りの境地で言い放った。「今はただ、美味しいものを食べて私の肛門を労り、プロレス技を決める。それがこの旅の目的です」

「主目的がすり替わってるぅぅ!!」

 ◆◆◆

 ということで、鍵集めを華麗にスルーした一行がパスタを求めて降り立ったのは、イタリアの首都・ローマ。コロッセオのすぐ側にある老舗トラットリア『麺魂めんたま・グラディエーター』である。

Benvenutoいらっしゃい! ローマに来たなら、本場のカルボナーラを食べなきゃダメよ!」

 陽気なイタリアっ娘の看板娘、ローマ・ロミータが、生クリームを一切使わず、卵黄、ペコリーノ・ロマーノ(羊のチーズ)、そしてカリカリに焼いたグアンチャーレ(豚頬肉の塩漬け)だけで仕上げた黄金のパスタを差し出した。

「キュルルッ! これぞ本場っす! タナカ特製・茹で汁とチーズの完璧な乳化エマルジョンテクニックで、ソースを極限までパスタに絡みつかせるっすよ!」

 カピバラ・タナカが短い前足でフライパンをリズミカルにあおり、黒胡椒をたっぷり挽く。

 その熱々のカルボナーラを一口食べた宗次郎の全身から、青白いスパークが弾ける!

「……ッ!! 濃厚な卵黄と羊チーズの塩気が、太めのパスタに完璧にコーティングされている! グアンチャーレの野性味あふれる脂の甘み! 生クリームの誤魔化しなど一切ない、古代ローマから続く真っ直ぐな旨味が、私の腸内環境をコロッセオの如く強固に守り抜くッ!!」

 しかし、その優雅なローマの休日を、無慈悲な電子レンジの「チンッ!」という音が切り裂いた。

「フハハハッ! そんな茹で時間のかかる面倒なパスタなど、我がメガバンクのタイムパフォーマンス理論には不要だ!」

【イタリアの時短支店長!キャラクター詳細設定】

◆ 宇喜多うきた 秀家ひでいえ

キャラ: 『豊臣メガバンク・ヨーロッパ統括支店長 / レンジでチン至上主義バンカー』風。

「食事は3分以内で終わらせるべき!」と信じる男。常にタイマーを首から下げている。「イタリアの非効率なパスタ文化は、すべてメガバンク特製『お湯を入れるだけ・ぶよぶよ即席麺』に置き換えてやる!」と豪語し、あろうことか茹でる前のロングパスタを真ん中でボキッとへし折るという、イタリア人に対する最大のタブーを犯す。

愛機(武器): 『絡繰・レンチン・アルデンテ・クラッシャー』。巨大な電子レンジ型の重機。相手を中に閉じ込め、数秒でドロドロの熱々に変えてしまう。

口癖: 「3分待て!」「パスタは折って鍋に入れろ!」「タイパが悪い!」

「宇喜多……! パスタを折るなんて、マンマへの冒涜よ! 絶対に許さないわ!」

 ロミータが、パスタ鍋を構えて激怒する。

「ヒャハハ! なら俺の『完全タイパ・3分即席ドロドロ・カルボナーラ味』と勝負だ! 俺が勝ったら、この店を電子レンジだけの無人コンビニにしてやる!」

「……待つっす。パスタの本当の『アルデンテ(歯ごたえ)』を、俺が教えてやるっすよ」

 カピバラ・タナカが前に出た!

「なんだその茹でる前の毛玉みたいなネズミは! 衛生的にアウトだろ! まとめてレンジでチンしてやる!!」

 宇喜多が電子レンジ重機の扉を開けたその時!

 前田○子が、ローマの太陽にも負けない輝く笑顔で飛び出した!

「私の毛玉な仲間をチンしないで!!……タナカのことは嫌いでも、私のことは嫌いにならないでくださいッ!!」

「出たぁぁぁっ! コロッセオに響き渡る、絶対的センターの魂の叫び!!」

 クリノジが、ジェラートを食べながら拍手喝采を送る。

「いくっすよ! タナカ特製・黄金の超・アルデンテ・極上カルボナーラっす!!」

 タナカが、パスタの芯に髪の毛一本分の硬さを残すという神業の茹で加減で、至高の一皿を完成させる!

 一口食べた宇喜多の首のタイマーが、ショートして爆発した。

「……ッ!? な、なんだこの噛むたびに弾ける小麦の香りは!? 3分で妥協した俺のぶよぶよ麺には、この『パスタが生きているような弾力』がないというのかァァ!?」

 宇喜多は膝から崩れ落ちた。モフモフのカピバラとトップアイドルが、冷徹なタイパ至上主義を粉砕したのだ。

「え、ええい! こうなれば物理的にドロドロに溶かしてやる! チンしろ、『絡繰・レンチン・アルデンテ・クラッシャー』!!」

 宇喜多が叫ぶと、巨大な電子レンジ重機が轟音を立てて突進してきた!

「……やれやれ。タナカさんの完璧なアルデンテを、レンジで台無しにするのは許せませんね」

 宗次郎が立ち上がる。膝まである長い髪が古代ローマの風になびき、眉毛のない顔が鋭く宇喜多を睨みつける!

「行きますよ……。スーパー戦国人参の、3分もかからない圧倒的パワー!」

 宗次郎は、迫り来る巨大電子レンジに対し、石畳を滑るように低空で突進!

「低空・黄金ドロップキックッ!!」

 ドゴォォォォォォォンッ!!

 電子レンジの耐熱ガラスの扉が、宗次郎の一撃で粉々に砕け散る!

「な、なんだと!? 1000ワットの高出力にも耐えるボディが……!!」

 バランスを崩した宇喜多に向かって、宗次郎の黄金の膝が光り輝く!

「トドメです。閃光・黄金魔術シャイニング・ウィザードォォォォォォォッ!!」

 ガッシャァァァァァァァンッ!!!

 宗次郎の膝が、宇喜多の顔面を完璧に捉えた。

 タイパの野望は霧散し、宇喜多は「パスタは折っちゃダメぇぇ!」と叫びながらトレビの泉の方向へ吹っ飛んでいった。

「……これが、時間をかけることの尊さです」

 宗次郎は静かに着地した。

 平和を取り戻したローマのトラットリア。

 宗次郎、カピバラのタナカ、クリノジ、前田○子、そしてロミータの五人が、コロッセオを背に横一列に並ぶ。

「皆さん……極上のカルボナーラと、放棄されたメインストーリーに感謝を込めて。あのポーズで締めましょう!」

 宗次郎の合図で、五人は胸の前で愛の形を作った。(宗次郎の長すぎる髪がクリノジの顔にバサバサ当たっている)

「「「「「カオス・パーティー!! プロレス・ラァァァァブッ!!!!」」」」」

 鍵集めという本来の目的を完全に忘れ去り、イタリアで美味いパスタを堪能した一行。

 スーパー戦国人参の圧倒的パワーと、破綻したシナリオを気にも留めない強靭なメンタルを手に入れたカオス・パーティーの旅は、次回もきっと行き当たりばったりで続くのである!!

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