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第四十四話:暴かれた血脈! 決戦の厨房と、触れ合う二人の手!

 ――帝都のど真ん中に特設された、巨大な料理対決会場『東西大厨房キッチン・コロシアム』。

 全国から集まった美食家やメディアの熱気で、会場は異常な興奮に包まれていた。

 控え室で、タナカは無言で愛用の包丁を研いでいた。その背中は、いつになく張り詰めている。

「タナカさん……いよいよね」

 クリ子が、淹れたての熱いお茶をそっと差し出した。

「……サンキュっす、クリ子」

 タナカが茶飲み茶碗を受け取ろうとした瞬間、二人の指先が僅かに触れ合った。

(あっ……!)

 クリ子が顔を赤らめて手を引っ込めようとするが、タナカはその手を優しく、しかし力強く握りしめた。

「タ、タナカさん……?」

「……緊張してるっすか? 大丈夫、俺とクリ子で見つけた『究極のカニ』は無敵っす。お前は特等席で、俺の勝つ姿を見ていればいいっすよ」

 タナカの真っ直ぐな瞳に射抜かれ、クリ子の胸の奥で、恋の炎がカニの甲羅よりも熱く燃え上がった。

(タナカさん……私、信じてる!)

 ◆◆◆

 ファンファーレと共に、両陣営が厨房ステージに登壇する。

「フハハハハッ! よく逃げずに来たな、東西瓦版の泥這い虫ども!」

 豪奢な和装に身を包んだ海原大山が、地響きのような声で笑う。

「……相変わらず声のデカいジジイっすね」

 タナカが不敵に笑い返す。

「ほざけ! 貴様のような下賤な男に、至高の味が理解できるわけがない! ……いや、下賤ではないか。なんという皮肉な運命よな」

 海原が、ふっと目を細めた。

「どういう意味ですか、海原先生!」

 審査員席から声が飛ぶ。海原は両手を広げ、マイクを通して会場全体に響き渡る声で宣言した。

「教えてやろう! この小僧、タナカの祖先は……かつて我が海原家の厨房で鍋洗いから逃げ出した、落ちこぼれの分家筋! つまり、このタナカには、腐りかけとはいえ『海原の血』が流れているのだ!!」

「「「な、なんだってーーーッ!?」」」

 会場にどよめきが走る。

「タナカさん……海原先生と血が繋がっていたの!?」

 クリ子が両手で口を覆う。

「……フッ。だからどうしたって言うっすか。俺は俺の料理を作るだけっすよ」

 タナカは動じない。しかし、その瞳の奥には、海原という呪縛に対する静かな怒りが燃えていた。

「面白い! ならばその血の呪い、この海原大山が『至高のエビ』で完全に断ち切ってくれよう!」

 銅鑼どらの音が鳴り響き、調理が開始された。

 海原陣営が取り出したのは、南の海で獲れたという、人間の腕ほどもある巨大な『幻の皇帝伊勢海老』だった。それを生きたまま、秘伝の香草と共に灼熱の石窯へと放り込む。

「見よ! エビの旨味を一切逃さず、香りで閉じ込める『至高の石焼き』だ!」

 一方のタナカは、荒波で獲れた『幻の黄金ズワイガニ』を前に、静かに目を閉じていた。

「タナカさん、大丈夫かしら……」

 クリ子が祈るように手を組む。

 カッ! とタナカが目を見開く。

「いくっすよ! 海原の血脈を超える、俺とクリ子の愛の結晶……『究極の黄金カニしゃぶ・雪どけ仕立て』っす!!」

 タナカの包丁が音速を超え、ズワイガニの殻が次々と宙を舞う。透き通るような美しいカニ身が、氷水の中で花のように開いていく。

 宿命の血脈。そして、カニとエビの頂上決戦。

 ついに、審査員たちの前に『究極』と『至高』の二つの皿が運ばれたのだった。

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