第二十四話:デジタルの式神と、黄金の甘辛バインド(京都・陰陽編②)
京都・下鴨神社の境内に、みたらし団子の甘香ばしい匂いと、ピリピリとした青い電脳のオーラが交差する。
古都の結界を守る美しき女子高生陰陽師・安倍晴香が、宗次郎たちを「結界を乱す敵」と認定し、無数のホログラム護符を展開した。
「……古都の平穏、私が律する。『重力縛陣』、実行!」
晴香が青く輝く『DIGI・陰陽符』をスワイプすると、宙に浮いていた護符が一斉に宗次郎たちの頭上に展開し、凄まじい重力波を放った。
「ぐっ……!? な、なんだこの重さは! 体が鉛のように……っ!」
近藤勇が膝をつき、タナカとクリノジは完全に地面に這いつくばってしまう。
「小癪な術を! こんな紙切れ、俺の風で切り裂いてやる! どりゃぁぁっ!!」
土方歳三が雷光をまとった兼定を振り抜き、沖田総司が桜色の三段突きを放つ。
しかし――
シュオンッ!
「……なっ!?」
新撰組の鋭い刃は、青い護符をすり抜けてしまった。
「……無駄です。私の式神は最新のホログラム。物理的な剣では斬れません」
晴香が冷たい瞳で見下ろす。
「ひぃぃっ! 物理攻撃無効のチートキャラっす!! 兄貴、助けてーっ!!」
「……ふふっ。デジタルと呪術の融合とは、現代の陰陽師は素晴らしい技術を持っていますね」
凄まじい重力の中、神堂宗次郎だけはポカポカとした笑顔のまま、ゆっくりと立ち上がった。その全身からは、みたらし団子のカロリーから変換された、濃厚でトロトロの『黄金のオーラ』が立ち昇っている。
「なっ……私の重力結界の中で立ち上がるだと!? あり得ない、計算外のオーラ値です!」
晴香が驚きに目を見開く。
「……最新の術式も素晴らしいですが、古の都が育んだ『伝統の甘辛ダレ』の粘り強さを舐めてはいけませんよ」
宗次郎は両手を広げ、黄金のオーラを天に向けて放った。
「……ごちそうさまでした。黄金・甘辛粘縛陣ッ!!」
ドバァァァァァッ!!
宗次郎から放たれた黄金のオーラが、みたらし団子のタレのようにネットリと広がり、空中に浮かぶ無数のホログラム護符を優しく、しかし強固に包み込んだ。
「……えっ!? 私の式神が……甘くていい匂いのオーラに絡め取られて、動か、ない……!?」
晴香が端末を必死に操作するが、完全にフリーズしてしまった。物理攻撃が効かないデジタル護符も、宗次郎の概念的な「甘辛オーラ」には捕まってしまったのだ。
「す、すげぇ……! みたらし団子のネットリ感で、チート術式を無力化しちゃったっす!!」
重力から解放されたタナカが歓声を上げる。
「……くっ、これまでか。古都の結界も……」
術を破られ、晴香が悔しそうに目を閉じた、その時だった。
「――見つけましたよ、目障りな虫共」
上空から、再び氷のように冷たい声が響いた。
巨大な黄金の算盤に乗って現れたのは、先ほど撤退したはずの豊臣の冷酷なるCFO・石田三成だった。
「あの算盤野郎! また戻ってきやがったのか!」
土方が剣を構え直す。
「……陰陽師の娘。貴女の張っていた結界が邪魔で大坂城から遠隔攻撃ができませんでしたが、結界が緩んだ今、ようやく一網打尽にできます。不良債権と共に消えなさい」
三成が算盤を弾くと、先ほどよりも巨大な「特大・金塊ミサイル」が、下鴨神社の本殿と晴香に向かって一直線に落下してきた。
「ああっ……! 神社が……っ!!」
晴香が絶望の声を上げる。
しかし、そのミサイルの前に、黄金の光をまとう背中と、誠の羽織を着た男たちが立ち塞がった。
「……歴史ある神社と女の子を傷つけるのは、コンプライアンス違反ですよ!!」
宗次郎の『真・玄武』の光の盾と、近藤・土方・沖田の三人の剣撃が、巨大な金塊ミサイルを空中で見事に粉砕した。
「……どうして? 私は、あなたたちを敵だと思って攻撃したのに……」
晴香が呆然と呟く。
「……困っている人を守るのに、理由はいりませんよ。それに、美味しいお団子屋さんが無くなったら困りますからね」
宗次郎が、振り返ってポカポカと笑った。
その温かい笑顔と、みたらし団子の甘い香りに包まれ、晴香の冷たかった瞳に、初めて小さな光が灯った。




