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時々  作者: こいこい
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後編 未来時 第二話 道中


回想として、今朝に遡る。

パジャマ姿の裏戸が僕の部屋で僕が今日のための服を選んでいるところから始まる。

「こういうことはさ……もうちょっと早く言ってよー。こっちにも予定があるんだからさー。」

僕の丈や尺を計ったり、クローゼットの中から男物の服を取り出して比べてみたり、とおしゃれって大変なんだな。僕は女の子じゃなくて本当によかったと思うよ。

…というか、

「友達いないのに予定なんかあるのか?」

言ったあとから、罪悪感が込み上げてきた。口をついて出てきたというやつだ。反省するから。睨まないで欲しい。

「あ・る・ん・だ・よ。……というかこんなこと言わせないでよ女子に。」

ジト目で流してくれる裏戸。ありがたい。「あるんだよ」って言ったときのジャブは相当痛かったけど。もうボクシング部に入ったらいいんじゃないか。とか思ってしまう。

閑話休題。

「そういえば、なんでスーツ以外にもパーカーとか男物の服がこんなにあるんだ?」

「…………。」

再度ジト目で睨まれる。またですか。

何故だろう。僕そんな悪いことしたかねぇ……。

何秒か経って、

「……お父さんがね、若作りするタイプの人だったのよ。で、あんなに残ってるわけ。」

と、裏戸は今開けているクローゼットを五つ程順々に指差す。…いや、多すぎだろ。

と、呆然とクローゼットを見つめていたら。思い出したとばかりに裏戸は喋り出す。

「そうそう、これからデートするにあたって注意事項が二つ三つあるんだけれど。いや、四つ五つあるんだけれど。……シトミちゃんの話によればカレンちゃんはデリケートなそうだから、絶対覚えとくこと。」

「そうかい……」

気が進まないな。これから本当にデートに行くのか僕は……?

『異性との付き合い方講座』の実技テストするんじゃないよな?

というか、裏戸はいつの間にシトミやカレンとちゃん付けで呼び合う仲になったんだろう?裏戸とカレンに至ってはどうやってそういう仲になったのか謎である。

諸々含めて一抹の不安を押さえきれない。

「まず、ひとつ目。多くは聞かないこと。女性には秘密が沢山あるからね。うっかり地雷踏まないよう気を、……つけろよ?」

「はい……」

……すげぇ、笑顔で凄まれんだけど。かつあげされてないか、今。

「二つ目、食事のことに関してだけど、『なにがいい?』と言ってカレンちゃんが『なんでもいい』って返したら。それは貴方の技量が試されているの。」

「はあ……?技量?なんで?」

いや、なんでもいいんならなんでもいいんじゃないの?

と返すと、

「わかってないな。君は……」

チッチッチッと口に出して指を振る。

「とにかく、私から指定は出来ないから。お洒落なお店を選びなさい。見た目からお洒落な……」

「わかったわかった。次に進もう。」

店の名前は横文字の方がいいだろうか。……いいだろうね。

そういう場所に行ったことがないから知らんのだが。何事も応用力が大事だろう。ということで。

「三つ目。食事の時にカレンがなにも言わず席を経つときに『なにか用?』とか聞いちゃだめ。」

「いや、報告、連絡、相談。のホウレンソウは大事だろう。」

僕のその提案を聞いて裏戸はあからさまに大きなため息をつく。

「そんなモットーは捨てなさい。悪いことは言わないから。」

それが既に悪いことじゃなかろうか。

「女子との席は常に空気を読むことを第一モットー。ぎこちなくならないことを第二モットーとしなさい。」

「モットーは単位じゃないぞ。」

「……知っとるわ!分かったら、これ着て。さっさと出ること。私は隣の部屋で着替えて寝るから。部屋の前で待っときなさい。」

畳まれた着物を腕に乗っけて、部屋を出ていく。僕はそれを見届けて、

「…了解。」

と呟いた。

裏戸が『寝る』ということはすなわち、カレンと入れ替わるということだ。

……緊張してきた。

「面倒だなぁ、」

とりあえず、呟いて着替え出すことにした。






そして、今に至る。

「で、次はどこに行きたいんだ?」

と尋ねられますカレンの方は清純そうなワンピースでね、麦わら帽子被っててね、天使みたいなんだよねー。

「えーと、ですね。遊園地というところに行ってみたいです。」

遊園地の言い方がまさしく『ゆぅうえんち?』といういささか舌っ足らず風なものだったので、少し萌えてしまった。いかんいかん平常心平常心。

「で、その遊園地なんですが……大丈夫ですか?」

やっぱ無理……。なんだよもう、おしとやかな裏戸なんて想像したこともなかったから。ギャップでヤバい。落ち着け、落ち着けよー。ひっひっふー、ひっひっ……てこれは違うな……。

「大丈夫だ。行こうか。」

平常心を装い。歩き出す。

カレンの方も笑顔で、

「はい♪」

の好スタートに思えたその矢先。

一番近い曲がり角、その影にはシトミの姿があった。チェックのワイシャツ、にジーンズ。セータを襟元で巻いてサングラスとヘッドホンをかけ、カンペをぶら下げている。なんだよ、ノれってか?

えーと、なになに?

『指示出しは私がやるから兄さんは黙って従え』だと?

まあ、それはいいよ。慣れてないから。

『あと、足止まってんぞ。』

な、なんだとぅ…!?

確かに、いきなり足を止めて物陰眺めてたらおかしな人だなそいつは……

「どうしたんですか?交差点なんか見て?」

「え?あ…」

既にシトミは物陰から消えていて戸惑ってしまう。それでも、なんとか頭を絞って、言い訳を思い付かせる。

「あー。猫が、ひゅーって通っていったからさ。」

我ながらとっさの考えにしてはいいんじゃないか?

とか思っていたら、

「猫ですか…」

カレンはなんかローテンションになっていた。

「あれ、どうしたよしょんぼりして。」

「猫アレルギーなんですよね。」

すると、物陰からシトミがひょっこり出てきて真顔でブーイングしながら。

『犬だろそこはぁー…( ・ε・)』

知らねぇよ!!!

なんで、犬って答えるのが常識みたいな雰囲気になってんの!?

なんとか、誤魔化さないと……

「いや、よく考えたら犬だったような……」

どうやったら、犬と猫を見間違えるのか甚だ疑問ではあったが致し方がない。ここは女子であるシトミの意見を尊重させねばならないだろう。

しかし、そう思っていたら。

「私、犬と猫どっちもアレルギーなんですよねぇ……、」

ちょっと落ち込んだー。ヤバいヤバいヤバいヤバい!

ちょっとどうすんだこれ!!

シトミの方へ振りかえる。

そこにはただの曲がり角しかありません。

…いねぇし!!

「すいません、気を使わせちゃって。」

「いやいや、とんでもない。」

つーかシトミのやつはどこいったんだ…指示出すとか言っといておいてけぼりかよ…

そう考えていたら。さっきの物陰から、ヒョイとカンペが差し出される。

あれ、戻ってきた?

『ごめんm(_ _)m』

「やかましいわ!」


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