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あやしの神社の反魂さん  作者: 九木圭人
行く年来る年
76/78

行く年来る年17

 「えっ……ちょ、ちょっと……」

 そんな妖刀とは対照的に、脳が状況に追い付いていない悠はただ間抜けな――そしてうわずった――声を上げるのが精一杯だ。


 「悠。好きだ」

 畳みかけるような告白。

 それが告白であって、相手は今自分に告白しているのであって、恐らくは酔っているが故である――そこまで導き出すまでに、妖刀は抱きしめた悠を押し倒していた。

 「きゃっ!」

 掛け布団がばふっと音を立てる。

 その上に仰向けになった悠の早鐘を打ち続ける胸の少し上、彼女の顔の左右に妖刀が手をつく――所謂壁ドンというものの、90度俯角を取った姿。


 「あ、あの、妖刀……ちゃん?す、好きって……その……わ、私……?」

 しどろもどろな問いかけに、妖刀は酔っ払いとは思えない真剣な眼差しで見つめ返し頷く。

 「で、でもそんな……そんな突然……」

 「――去年の事だ。告白された時、私は断った」

 その話は悠も知っているし、なんならつい昨日それをネタにしてからかった。

 だが、今はそんな事蒸し返す余裕はない。当の本人の口からその話が再び発せられているのも、ただ黙って聞いているしか出来ない。


 「『他に好きな人がいる』そう言ったんだ、私」

 「そ、そ、そう……」

 その断り文句、この状況、その断り文句をこの状況で話す意味。

 特別勘がよくなくとも明確に理解できる。


 「その好きな人が……悠だ」

 垂れ下がった銀色の髪が悠の肌に触れる。

 それを先触れのようにして妖刀の身体が一気に近づく。

 どくん、と悠の心臓が一際大きく音を立て、咄嗟に両手が妖刀を押し返す。

 「だ、駄目っ!」

 言いながら目を逸らす――見続けていたら断れる自信が無い。


 「どうして?」

 その問いかけにも行き場のない視線を持て余しながら応じる。

 「そ、その……、それやっちゃったら、もう私妖刀ちゃんを……今まで通りに見られなくなっちゃう」

 自分で何を言っているのか分からなくなりながらの抵抗。

 だが、今まで通りの目で見られないのは恐らく事実だ。


 妖刀を意識してしまう。

 自分に好意を抱いている相手であると分かってしまったが故に。

 これから今まで通り暮らしていけるのか、今までの関係に戻れるのかは分からない。だが、今ここで受け入れてしまえば100%後戻りできなくなってしまうだろう。

 ――悠自身、きっぱり拒絶するのは難しいぐらいの感情はもっている。


 「だ、だから……」

 だから、どうしても断りきれない。

 そういうのもありか――心のどこかでそんな声が上がり始めている。

 「だからまだ……、まだ……心の準備が……」

 心の準備が出来ない=準備が出来たら受け入れる。

 肯定する訳ではないが、きっぱりと否定するでもない。ただ先延ばしにするだけのやんわりとした否定に留める。


 それを受けた妖刀の動きがピタリと止まった事の理由は、悠には分かりかねた。


 「よ、妖刀ちゃん……?」

 ピタリと止まってしまった妖刀。

 その呼びかけに答えることなく、ゆっくり、ゆっくりと悠に体を近付け――しかし軌道を逸らして彼女のすぐ隣に崩れ落ちた。


 「え……?」

 妖刀は再び動かなくなった。

 幸せそうな寝息を立てながら。

(つづく)

今日はここまで

続きは明日に。


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