愛の終わり
美しい物語を書きたいと思った。
けれども、美しさというものは醜さの中にしかない気がした。
紅い目をした少女は言った。
「ルーカス、大好きだよ。お誕生日おめでとう」
その言葉を思い出して、怒りを覚える。
ふざけるな!
好きでもないくせに優しくするな。
愛してくれないくせに傍に来るな。
夢なんて見せるな。
期待なんてさせるな!
「そうよ。あなたがわかっている通りだわ。私がシャルルを殺したあなたなんて好きになるはずがないじゃない。
ルーカスなんて大嫌い」
脳裏に別の言葉が蘇った。
心臓が貫かれるような痛みが走る。
こんなのあんまり俺がかわいそうじゃないか。
何、勘違いして浮かれていたんだろう。
二人でいるときにリアが俺に対して抱いていた感情は、全然別のものだった。
俺がリアに対して抱いていたようなものは、リアが抱いていると期待しているようなものは、なかったのだ。
「はは」
自分をバカにする笑いがこぼれ出た。
「ははははははははは。はははははっははははははっははははははっは」
自分の口から狂ったような笑い声がもれた。
笑いながら俺は泣いていた。
涙を流しながら、惨めな自分を笑っていた。
こんなの俺という人間が、ルーカス・ダナフォールというリア・ローレンスという人間に恋をした人間があまりにもかわいそうじゃないか!
リアが好きだったのはシャルルだった。
俺があいつに会うずっと前から、リアはシャルルに惚れていたのだ。
リアの人生の中での俺は、メインヒーローになれずモブキャラか悪役みたいな存在なのだろう。
全部……シャルルのものだった。
俺へのものなんて一つもなかった。
そんなのひどいじゃないか。
俺の方がずっとリアを好きで、好きで、……何度もあいつがくれた言葉を思い出していたのに。
……バカみたいだ。
殺せ。
殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ。
自分の中の感情を殺していけ。
決して報われることのない恋を殺していけ。
醜い嫉妬も、理不尽だと叫びたい気持ちも、悔しさも、痛みも全部押し殺せ。
そうだよ。これでいい。
こうやって押し殺していけばもう俺は傷つかない。
裏切られることもない。
こんな痛みしかくれない恋なんていらない。
俺は、しがみついていた恋から諦めることを決意した。
その決意はすぐ簡単に捨てたくなるけれども、
もう振り向かない。
もう迷わない。
そうじゃないとどうやって生きたらいいかわからない。
何一つ報われることなく、愛されることなく、美化されることもなく、一つの恋が痛みとともに終わっていく。
俺には、もうその恋にしがみつく勇気もプライドも気力もなく、伝えることすらもできない。
自分の感情を一つずつ選び整理していく。そして時が過ぎるのを待つ。
それしか俺にできることはない。
大好きだとすがりつきたかった。
監禁して、脅迫してでも自分のものにすればよかったかな。
リアが揺さぶられるような素敵な愛の告白をしたかった。
無理やり手に入れるくらい強引になりたかった。
泣きながら、リアが私を捨てられなくなるくらいに強くしがみつきたかった。
でも、俺にはそれができない。
プライドか、憎しみか、臆病さか、よくわからないけれども、もう決して恋を告げることなんてできない。
否定され、拒絶され、裏切られても、すがれる強さなんてない。
いつかこの選択を後悔する時が来るのだろうか?
そう思うと怖くてたまらなかった。
手に入らなかった未来を嘆き続けてきっととても深く後悔するだろう。
後悔という名の海におぼれ続けても、救いはきっと見えてこない。
底なしの絶望という名の現実を生き続けるしかないだろう。
それでも。
ねえ、気がついている?
俺の人生のど真ん中であなたは花火のように眩しく、美しく、何よりも輝いていた。
その輝きは今でも色あせることなく思い出せる。
恋人になることができず
友達と呼ぶにはあまりにも遠くて
誰よりも特別なのに、誰よりも遠い存在。
あなたは俺の最高で最低のヒロインで、かわいくて眩しいくらい輝いて、誰よりも愛しい人で。
いつか会えたら俺の理想の人だろう。
次がラストです。




