それが人間という生き物
勢いにのってもう少し書きたいな(^_-)
どんなに最悪な状況でも、自分がするべきことをしなければいけない。
ロディとノワールの治療をすることから始めた。ノワールは思っていたよりも軽傷だったが、ロディの傷は深かった。
近くの医者を呼びに行こう。
二人とも私を守るために傷ついたのだ。
何であんなことしてしまったのだろう?
……だめだ。そんなこと考えてないで足を動かそう。
一歩ずつ、確実に前へ。
誰を傷つけ、誰を壊そうと失おうと私は進んでいかないと行かない。
こんなところで朽ち果て自己嫌悪に囚われるだけの存在でいたくはない。
やってきた医者は、テキパキと処置をしてくれた。
「二人とも命に別状はないです。後は寝ていれば回復していくでしょう。ノワールの方は二週間もすれば大丈夫でしょう。
ロディオンの方は、完全に回復するまでには一か月くらい時間がかかりそうです」
薬を渡して彼は去って行った。
全てが終わり私の役目が終わった後に、私は彼らから少し離れた廊下で呆然としていた。
戻らない過去を悔いても何一つやり直せない。
その時、聞きなれた声が聞こえた。
「リア。大丈夫?」
ノワールは、肩を押さえ足をひきずりながら私に近づいてきた。
「一人にして」
けれども、ノワールは私の隣に座った。
そうして私の頭をよしよしとでもするように優しく撫でてきた。
全てに守られていた小さい頃に戻った気分だ。
「な、何よ」
まさかノワールに誰かを慰めることができるなんていう能力が備わっているとは思わなかった。感動のあまり泣けるレベルだ。
「勇者に振られたリアを慰めてあげようと思って」
その言葉がグサリと私の傷を抉った。
訂正しよう。やっぱりノワールは、空気の読めない嫌な奴だ。
「ああ、そうですか」
ツンとした態度で返事をしてしまった。
「うん、そうだ。だから、優しい言葉をあげるよ。リアは自分がしたいと思った行動をしただろう。それは、すごいことだ。誰もが心を殺しながら生きているのに、リアは自分が一番だと思う行動をした。例え今は後悔しかないとしても、いつかそんな自分を誇りに思えるかもしれない」
ノワールは、自分の中で言葉を探すようにゆっくりとそう話しかけてきた。
私も自分の心と向き合いながらこういう風に勇者に話しかけていたら、何か変わったかな。こんなことにはなっていなかっただろう。
「それに何もない人生よりも何かあった人生の方がいいだろう」
「……うん」
人生は、明るく、楽しく、いつも好きな人といれるだけじゃない。嫌なこと、悲しいこと、理不尽なことで満ちている。嫌なことがたくさんあることを不幸の証だと思っていた。けれども、ノワールの言葉は私の全てを静かに肯定してくれている気がした。
「人は、綺麗で、優しく、美しいだけの生き物じゃない。欲望があり、醜さがあり、嫉妬したり、自分に負けたり、逃げ出したり、壊そうとしたりする。正しく、利益のある選択だけを選び続けることはできないくせに、後悔したり罪悪感を持ったりする。
それが人間という生き物だ」
そして彼は笑った。
ルーカスが浮かべていた太陽のように眩しい純粋な笑顔でも、ロディのように歪んでいる最低最悪な下品な笑顔でもなかった。夜空に浮かぶ月のようにどこか寂しくて、澄み切っていて、切なく、美しい。それでも私の道を照らすには十分明るい笑顔だ。私を励まし元気にする笑顔だ。
「だから、リアは自分を責める必要はない」
けれども、今の私にはそんなに優しくされる資格すらない気がした。
「何で私なんかに優しくしてくれるの?」
自分を肯定するために、側にいる奴を殺そうとしていた嫌な奴だ。
そして自分の信念すらも貫けず、自分が選んだ道から逃げ出した。
ノワールの頬が真っ赤にそまる。
そして小さく、けれども確かに私に告げた。
「リアが好きだから」
その顔をかわいいと思っても、その言葉を受け止めることができなかった。
「そんなのありえないわ。私は性格が悪いし、自己中心的で優しさの欠片もない醜い奴よ」
私は人を救うよりも、傷つける方が得意な人間だ。これが小説なら、ヒロイン失格、モブキャラ失格、悪役失格、人間失格になるくらいの奴だろう。
「だから、あなたが私を好きになるなんておかしいわ」
「君が好きだって言う僕を信じろよ」
こんな真剣で熱い声をしたノワールを見るのは初めてだった。
彼は、まっすぐ私を捉えるように見ている。
私なんかのために必死になっている。
「リアは卑屈になって、世界を嫌って、本当の自分を知ろうとしていないだけだろう。可能性を無視して、知らん顔して、自己愛に浸っているだけだろう」
「でも、あなたが私を好きなんておかしいわよ」
「僕は、リアが好きって言っているだろう。
この気持ちが偽者なんて疑うな!」
ノワール・ブラックは、とてもいい男だ。
痺れるくらいイケメンで、優しくて、温かくて。
人間味にあふれている素晴らしい奴だ。
「うん」
その優しさにもう少し抱かれていたかった。
泣いている私の髪の毛をノワールはいつまでも撫で続けてくれた。
いろんな場面に挑戦していきたいです。




