愛なんて生まれるわけない1
恋することが許されなかった少年とでも言えるかな。
どうぞ、彼の章です。
ルーカス・ダナフォールという人間は、強い、チート、無敵というイメージがあるかもしれないが、それは間違っている。
俺は、小さい頃はとても病弱で死にかけていた。
奇病にかかり、もうすぐ死ぬだろうと医者から宣告されていた。
7歳になった頃には、もう歩くことさえできず、ベッドの上で過ごし、血を吐き、熱を出し、咳をする日々を送っていた。
毎日、苦しさのあまり早く死にたいとばかり思っていた。死こそが、痛みからの解放だった。
やがて、死にかけた俺のもとにジル・キャットという魔女が遊びにくるようになった。
ジル・キャットという少女を俺はずっと大嫌いだった。
殺したいくらい嫌いだった。
ジルが世界で一番不幸になればいいと思っていた。
彼女は、美少女であったが、その性格はひどかった。
まさに絵に描いたような悪女であった。
魔女であった彼女は、人並み以上の魔力、呪いを小さい頃から操ることができた。
その力はいつも他人を苦しませるためだけに使っていた。
彼女は、俺を心配してお見舞いに来るというわけではなかった。
苦しんでいる俺をバカにするために来るのだ。
ジル・キャットは、ある日、突然俺の病室にやってきた。当時、俺もジルもまだ八歳だった。
血のように赤い瞳、サクランボ色の唇、緩く巻かれた黒い艶のある髪、雪のように白い肌。整った顔立ちに、ほっそりとした首筋。欠点何て一つもないような美しい少女。
ジルの容姿は絶世の美少女と言ってもいいほど美しかった。悪趣味なくらい大きな透明の指輪が彼女に似合っていない気がしたけれども。
そんな少女が熱の出ている俺の病室のドアをノックもせずに開け、いきなりオルゴールのようにかわいい声で聞いてきた。
「あなたが死にかけているルーカス・ダナフォール?」
少女は、そうルビーのような目を輝かせながら聞いてきた。
「そうだ。君が噂のジルだね。俺のお見舞いに来てくれてありがとう」
そう言って太陽のような笑顔を浮かべた。
イケメンに生まれてきた俺は、女の子達からもてた。こういう風にかわいい女の子がお見舞いに来ることがよくあったため、対応には慣れていた。
ジルは俺の笑顔を見て一瞬だけ困ったような顔をした。けれども、決意したように言葉を紡いだ。
「病気は治るの?」
「いいえ。おそらく俺は十五歳になる前に死ぬ」
医者からは、七年ももたないと宣告されていた。
ジルは一瞬だけ目を閉じた。
一瞬が永遠になる。
ただの一瞬なのに、なぜかそれくらいに感じられた。
そして彼女は悪魔のように赤いを開いた。
その瞳の冷たさに俺はゾッとしてしまった。
「ねえ、あなたの将来の夢は何?」
ジルは優しく、甘ったるい猫なで声でそう俺に問いかけた。
「強い人間かな。大切な人を守れるくらい強くなりたい」
弱い俺は、強い人間に憧れていた。くだらない夢かもしれないけれど、叶えたかった。
「残念でした。あなたに将来はありません」
彼女の目から全ての感情が消えた。
俺には何が起こったのか理解できないほど、ジルは豹変した。
「さっさと死ね。社会のゴミ」
彼女は醜い言葉を吐き捨てる。まるで言葉のナイフで俺を突き刺しているみたいだ。
「病人とか働けなくなった老人とかはただの金食い虫だ。役立たずの失敗作だ。全員、絶滅してしまえばいい」
「……」
俺は言葉を失い、ただ少女の仮面を被った悪魔を見ていた。
しばらくたってから質問した。
「一応聞くけど謝る気はあるのか?」
「私はこれから先、あなたに謝ったりしないわ。例え、私のせいであなたが死ぬことがあっても」
……何というプライドの高さだ。エベレストだってジルのプライドに比べればそれほど高くないものに見えてきた。
「私の言っていることは間違っていないわ。ゴミはゴミらしくそのまま朽ち果てなさい。あなたみたいな重荷は、生き続けてもみんなの迷惑になるのよ」
こいつは何かの宗教にでも入っているのだろうか。
さっきから俺に自殺を勧めまくっている。
「そうやって性格が悪くみんなから嫌われている子が死んだ方が世界平和に繋がると思うけど」
俺は冷たい笑顔を浮かべながらさらりと反撃した。
「あいにく私は世界よりも自分の方が大事なの。
私みたいな美しくて、頭のいい人間は地球よりも重みがあるのよ。あなたみたいに、食べて寝るだけのゴミと違って」
「俺を君みたいなカスと一緒にしないでくれ。俺と比べたら、お前みたいな甘やかされて育って腐った子供ただの産業廃棄物だ。ゴミ収集されることを提案する」
「性格はあなたの方が腐敗していると思う。初対面のかわいい女の子にそんなことを言うなんてあなたは本当に男なの?」
かわいい?なるほど、言われてみれば顔立ちは確かに整っている。
ただ心は腐りきっている。
「確かに顔立ちは整っているね。
だけど、俺と比べれば君なんてブサイクの部類に入ると思う」
天使のような笑顔を浮かべてそう言った。俺と釣り合うレベルになるなんて百年早い。バーカ。
「まあ、視力が悪いのね。かわいそうに。
いますぐ目を抉り出してしまったらどう?それにブサイクなのはあなたの方じゃない。生理的に気持ち悪いから社会のために死んでくれない?」
「黙れ、クズ。とりあえず今すぐここから出て行け」
「いいわ。……でもまた来るわ」
意地悪そうな笑顔を浮かべてジルはそう言ってきた。
「どうして?」
まさか、実は俺に惚れているとかだろうか?
「あなたがどれだけ苦しんでいるか見て、バカにするために来るのよ。もだえ苦しみながら死んでいくあなたの姿をぜひ見てみたいものだわ」
「もう二度と来るな」
ジルはやっぱりジルだった。
友達にジルについて聞くと、世界遺産並みに性格が悪いジルのしてきたことが明らかになった。
「ブスのくせにおしゃれもまともにできないの?
この間見たとき、まるでピエロみたいだと思った。世の中には、いくら努力してもちっともかわいくなれない無駄な人間がいることを悟ったわ」って町の人をバカにしたり
「ブサイクに人権はないに決まっているじゃない。存在自体迷惑だからブサイクの国籍をはく奪するべき。
私みたい需要がある人間がすばらしい。私に告白してきた顔なんて見ものだったわ。はははははっ。あんなブサイクが私と釣り合うなんて考えるなんてお門違いだわ」
とけなしていたりしているらしい。
さらにいくつものひどいエピソードがある。
「やる気のないバカに鉛筆を持つ資格なんてない。教科書やノートをもらう資格なんてない。だからゴミ箱に捨ててあげただけです、私は感謝をされるべきで、憎まれるなんてお門違いだ」
と言いながら知り合いの持ち物を破壊し
「人を関わることが苦手だとかウザイ。
そんなの人と関わることがめんどうくさいから言い訳にしているだけでしょう。
私が人とのかかわり方を教えてあげる」
そう言いながらコミュ障の子を公開処刑にした。
「周りを気にして自分の言葉を吐かない奴に自分の名前を名乗る権利なんてない。そんな奴、奴隷と同様よ」と言いながら大人しい子には最悪なあだ名をつけた。
「気持ちを伝えなきゃ人を好きになった意味はないでしょ」
と言いながら知り合いの好きな人をばらし「あなたみたいなブスがイケメンを好きになるなんて気持ち悪いね」とみんなの前で言ったりしたこともあるらしい。
ジルは、魔女であり、国一番と言ってもいいほど魔法が使えた。そのため誰も彼女に報復したり、お仕置きしたり、処刑したりすることができなかった。脅迫をされて恐ろしい目にあっているという人々も何人も聞いた。
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