狂気にも似た純粋
愛と憎しみは大事な要素だと思う。
ロディは剣を投げ捨てて、蟲も消し去らせた。
「どうしてそんなことするのよ!」
まさかロディが私を自分よりも大切に思っているなんて思わなかった。
「どうしてだと思う?」
暗くなりだした紫色の空を思い出させるような淡く、悲しい笑顔をしながらロディは聞いてきた。
「……わからないわ」
ロディは、他人を何とも思わないような最低な男で、カスみたいな性格をしていて、浮気男のくせに……何で私に優しいのよ。
そんなのおかしいじゃない……。
「なあ、リア。
どうして俺はこんなに汚れているんだろうな?小さいころから自分だけ汚れて見えて仕方がないんだ」
そして自嘲するように笑う。
ロディは、妖怪で、淫魔で、性格の悪いいやな奴だ。
だけど、私は彼をこう思う。
「あなたは綺麗よ」
容姿は、確かに絶世の美少年だ。
だけど、そういう意味じゃない。
彼がとても純粋でまっすぐして、澄み切った人間のように見えた。
上手く言葉にできないけれども。
勇者は、剣をとりロディを殺そうと近づいた。
もちろん人質にした私の腕もしっかりとつかんでいる。
「待って」
私は、もちろん止めた。
「ロディは殺さないで」
ロディは、一瞬驚き、泣きそうな顔で私を見てきた。
灰色の目が私を見ている。
「聞きたいことがあるの。ネロはどこにいるの?」
シャルルを殺した男は、私が殺す。
容赦なく、ためらいなく、ぶっ殺す。
「まだ孤児院で働いているよ」
「そう。ありがとう。
あなたにはまた会いに来るわ。話したいことがあるの」
ロディは、下品な笑顔を浮かべた。
「そうか……。楽しみにしている」
灰色の目が怪しく光った。
勇者は、ずっと険しい顔をしながら私を見ていた。少しでも気を抜くことが許されないようにずっと張りつめていた。
「私は無事だから殺す必要はないでしょう。もう帰ろう」
私は、勇者の手を握って歩き出した。
勇者も私の手を握り返した。
私たちは、ロディを置いて歩き出した。
自分を殺そうとした男の手を握って帰ろうとする。
きっと正気の沙汰ではないだろう。
そうだ。狂気の沙汰だ。
私は、勇者の全てを許している振りをしているだけなのだ。
勇者に優しい振りをしているだけだ。
ロディが教えてくれた真実が頭から離れなかった。
あの時、ロディに殺されかけた勇者を助けたのも、勇者は自分の手で絶望させながら殺す打算的な計画のためだった。
勇者が私の初恋の少年シャルルを殺した犯人だというなら、私が自分の手でこいつを殺してやる。
ネロを殺し、勇者も殺す。
それが私の描いた復讐だ。
ネロを殺すためには、勇者の協力が必要だ。
勇者を殺すためには、きっとロディの協力も必要になる。その時は、彼に会いに行こう。
勇者の険しかった顔が一瞬で崩れる。
「もう俺を一人にしないでよ」
「……うん。ずっとルーカスの側にいる」
「大好き、リア」
「私もルーカスのこと好きだよ」
バカ。
シャルルを殺した人間なんて好きになれるはずないだろう。
お前みたいな化け物愛せるわけない。
こんな人間、気持ち悪いだろう。
いや、お前なんて人間じゃない。
だけど、今だけは私の言葉に騙され喜びにでも浸っていろ。この単細胞。
いつかお前を絶望させてやる。信頼が深ければ、きっと裏切られた時のショックも大きいだろう。
「リアがそう言ってくれてうれしい」
太陽のような明るい笑顔を浮かべるルーカス。
その笑顔も思いも、輝いて見えた。
彼の狂気にも似た純粋さが私には眩しかった。
読んでくださりありがとうございます。




