久しぶりに出会った少年は、人間であることを捨てていた。
胸がキュンキュンするような小説も書きたいな。
その日は、曇り空だった。灰色の雲が町を包み込むようにしていた。
とある飲食店で接客業をしている私は、今日も仕事かと少しだけ憂鬱な気分になりながらも仕事場に向かって歩いていた。
その時、一人の青年と目が合った。
彼は、実験対象を見る科学者のようにじっくりとなめまわすように私を見ていた。
夜明け前を思わせる紫色の美しい髪の毛。自由にはねている髪の毛に遊び心が感じられる。曇った空を切り取ってはめ込んだような灰色の目。ちょうどいい位置にある甘い泣きぼくろ。絶世の美少年と言っても過言ではないほど暴力的な雰囲気を持つイケメンだが、ルーカス・ダナフォールみたいに明るくまっすぐした雰囲気は一切ない。影があるイケメン、下種顔のイケメン、生理的に気持ち悪い美少年などの言葉が彼には合っている。
どこかで見たことがある顔だ。
ああ、そうだ。ずっと昔に私は彼に似た人を見たことがある。
私は、彼から逃げたのだ。
「リア・ローレンス」
彼は、ぞくぞくして腰が砕けそうになるほど色気のある声で、誘惑するように私の名前を呼んだ。
そうして私の方へ近づいてくる。
「君に会いたかったよ」
私は、彼に会いたくなかった。
ロディオン・ブレイク。
私は、彼とあの夜のことを忘れることはできなかった。
彼は、人間ではない。妖怪だ。
キモイ。気持ち悪いと言う言葉が、彼ほどよく似合う人はいないだろう。
うじゃうじゃとした虫を何匹も飼い、虫たちに愛情をこめて語りかけ、濁った灰色の瞳で世界を見ていて、欲望にまみれた気持ちの悪い笑顔を浮かべるのだから。
昔のロディオンは、蟲まみれでとても気持ち悪く、私はできることなら関わりたくないと思っていた。
彼は、指を鳴らし一匹の気持ち悪い蟲を召喚した。
次の瞬間、私の首に針が刺さるような痛みが走った。
意識が朦朧としていく。体が鉛のように重たくてたまらない。
私は体を支配する眠気のようなものに耐え切れず、意識を手放した。
「もう逃がさないよ」
かすかにそんな声が聞こえた。
目が覚めたら、そのロディオン・ブレイクが目の前にいた。
思わず驚きのあまり悲鳴をあげそうになった。
ロディオンは、じっと私を見ている。まるで私の行動を記憶に刻み付けているみたいだ。
彼は、邪悪で醜悪な笑顔を浮かべながら私に話かけてきた。
「君が勇者の彼女であることはもう知っている。勇者に対する人質として、君を誘拐した」
……ということで誘拐されました。
「俺は、ロディオン・ディブレイク。時期魔王になった男だ」
久しぶりに出会った少年は、人間であることを捨てていた。
そして挙句の果てには魔王になっていた。
な、何だ?この恐ろしくぶっ飛んだこの展開は?
「お、おう」
思わず変な返事をしてしまった。
「な、何で魔王になったの?」
「新世界の神、すなわちハーレム王になるためだ。目指すは、世界中の女性制覇だ」
何この人?バカなのか、それとも凡人には考えがわからない天才という人種なのか?
私は、これほどバカげた夢を今まで聞いたことがなかった。
スケールが大きすぎるだろう。
というか、あほらしすぎる。
「ほ、ほう」
静寂が訪れる。
そして、私はあることを思い出した。
「ロディオン・ディブレイク。
あなたは、確か私と一緒の孤児院にいたでしょう」
あんなに気持ち悪かった少年が、こんな色気たっぷりの危険な香りに満ちた青年に成長するとは思っていなかったけれども。
「……君なんて覚えていない。知らない」
灰色の目は、とても冷たく、何か別の感情を押し殺しているようだった。
「そう。なら別にいいわ。ねえ、ロディオン。私……」
しかし、彼は私の声を遮るようにこう言ってきた。
「ロディオンじゃなくて、ロディって呼んで」
灰色の目は、どこか遠くの方を見ているようだと思った。
「ロディ」
私は、彼を愛称で呼んだ。
すると、彼は最低最悪な下品な笑みを浮かべた。
……イケメンなのに気持ち悪いな。まあ、うれしそうだからいいけど。
読んでくださりありがとうございます。
ちなみにロディはかなり好きなキャラです。
次回はたっぶり彼の最悪さを味わってください。




