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勇者にいきなり殺されかけた  作者: さつき


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14/40

ハーレム王に俺はなる!!!

 昨日のバイトでの失敗。

 正しい文「こちらがお客様の駐車券でございます」と言って駐車券を渡す。


 私「こちらがお客様の駐車場でございます」と言って駐車券を渡す。

 お客様「……」

 

 魔王が死んだ。

 勇者に一発でやられてしまった。


 魔物たちは、秘密基地に集まり時期魔王を決めるために緊急会議を開くことになった。

 何千万匹もの魔物が洞窟にひしめき合った。

 元魔王の秘書でありこの場の司会者であったジャイロは、頭を悩ませていた。

 魔王が死んだら4匹の幹部の中で一番強い奴が時期魔王なるのが常識だが、今の4匹の幹部は同じくらい強く、自己主張が強い奴ばかりだった。4匹同士お互いに負けたくないと競争意識を抱いているのだ。

 だったら勝負で決めるべきだが、4匹を戦わせ一番強い奴を魔王にするという方法はとりたくなかった。何しろ今度の勇者は桁外れに強いと聞く。戦力はできる限り失いたくない。それと同時に、この4匹のバランス関係も保っていたい。

 一人だけその場に合わない者と目が合った。

 彼の容姿は、魔物というよりも人間に近かった。

 鮮やかな紫色の髪の毛、曇った空のように濁った灰色の目。

 綺麗な線を描く鎖骨、形のいい薄い唇、右目の泣きぼくろ。

 妖しい雰囲気を持つ絶世の美少年がそこにいた。

「彼は誰ですか?」

 近くにいた親友のディルムットに聞いてみた。

「ロディオン・ブレイク。操蟲師という妖魔です」

 一万人に一人の確率で生まれる妖魔は、人間と同じ見た目をしていた。

 けれども、こうして魔物と共に生きる道を選んだということは、人間社会に溶け込みながら生きてはいけなかったのだろう。

「彼は強いですか?」

「ええ。今まで、130人の退魔師と戦い全勝しています。

 勝つだけではなく、130人の退魔師を彼倒しています。魅了して味方に引き入れている者も存在しています」

「なんと素晴らしい技を持っているのか!退魔師に勝つだけでもすごいのに、味方に引き入れることができるなんて」 

 時期魔王は彼にしてみてはどうだろうか?

 そんな考えがジャイロの頭をよぎる。

 強力な勇者が現れた今。単なる魔物を魔王にしてしまったらすぐに負けてしまうだろう。

 ロディオンならば、人間の振りをしながら、勇者に近づき不意打ちすることも可能だ。

 妖魔は魔物でありながら人間に近い種族だと思っていたが、妖魔を魔王にするというのは、おもしろい攻め方なのかもしれない。

「ロディオン・ディブレイクを時期魔王にするというのはどうだろうか?」

 彼は、マイクを手に取り魔物に語り掛ける。

「幹部たちを順位付けというつまらない戦いで失いたくはない。

 よって、今回の魔王は幹部以外から選びたい。

 妖魔というのは、魔物よりもはるかに技術、洗脳に長けている。

 我々は勇者に力では勝てない。だからこそ、違ったやり方で攻めなければいけない。

 ロディオンという妖怪こそ、魔王にするべきではないだろうか」

 ざわめきが大きくなる。

 そのざわめきの中、ジャイロは堂々とした声で述べる。

「よって、元魔王秘書であったジャイロにより、時期魔王は、ロディオン・ディブレイクに決める」

 何千匹もの魔物が、新魔王の誕生を祝って手を叩きだしました。

 世界の終わりを思わすほどの大きな拍手が聞こえた。雄叫び、奇声も交じっている。


「ふっ。ふふふふふふふふふふ」

 いやぁ、ついに来てしまったのか、俺の時代。

 ロディオン・ディブレイクは、最低最悪な下品な笑顔を浮かべながらそう思った。醜い魔物達をバカにしながら、一歩ずつステージに近づいていく。

 だけど、これで俺も立派な化け物共の仲間入りだ。 

 魔法で生み出された光が彼を一斉に照らす。

 彼は、魔物に向かって語り掛けた。

「勇者は強い。だけど、噂によるとあいつはバカだ。

 これからは、力だけではない。頭脳の時代だ。

 俺には優れた頭脳がある。必ず勇者を滅ぼし、人間を支配してみせる」 

 そうだ。

 これから俺を見下してきた女達に復讐をしてやる!

 俺を仲間はずれにして殺そうとしてきた人類に復讐してやる。

 女には精神を壊し、中毒症状を引き起こすほどの快楽を!

 男には死ぬまで社畜としての労働を!

 美しいのに、歪んでいる醜悪な笑みを浮かべながら、ロディオンは魔物をじっくり見ながら思う。

 お前たちは、俺の手足のように働け。

 逆らうもの、逃げるもの、反逆するものは、許さない。

 俺を王として崇め、俺の野望のために生きて死ね。

「俺は人間を許さない。世界中の人間を支配してやる。

 人間をボロ雑巾のように扱い、使えなくなったら処分するつもりだ」

 もちろんお前ら魔物も同じだ。

 そして。

 新世界の神、すなわち

「ハーレム王に俺はなる!!!」


 彼は世界一バカげた夢を口にした。

 ただの小悪党から、大悪党へ。

 歴史に残る最低最悪な犯罪者、ロディオン・ディブレイクが誕生した瞬間だった。



 しかし、それは突然の出来事だった。

「異議あり」

 一匹のゴブリンが手をあげた。

 ただのゴブリンではない。幹部である強いゴブリンだ。

「お前みたいな弱そうなのに何ができる?ここにいる俺達一匹も倒すことができないじゃないか」

 バカにするように俺を見てくる。

「お前にできるのは、精々退魔師を操作するくらいだろう。そんな細い腕で勇者をどうやって倒す?」

 俺も自身たっぷりな挑発的な笑顔で見返した。

 どういうわけか、俺の笑顔はとても下品な笑顔に見えるらしいけれども。

「じゃあ、いいだろう。幹部、アルロイド。

 俺と勝負しないか?もちろん、お前が一番得意な力比べだ」

「受けて立つ」

 知っているか?勝負っているのは、やる前からすでに決着がついているんだよ。

 この勝負はお前の負けだ。


 時期魔王を決めるため、力比べをすることはよくあった。

あらかじめ用意された闘技場で、俺とアルロイドは立った。

俺の身長が180㎝なのに対して、アルロイドは3メートル近くある。

多くの魔物が、俺の負けを予想しているだろう。


「いざ尋常に始め」

 

 次の瞬間、ゴブリンが俺に棍棒を振り回しながら向かってきた。

 俺はその動きをすらりとかわし、棍棒を持っていないゴブリンの左手の一部を掴み一本背負いをする。

 その一撃でゴブリンは、気絶し動かなくなった。

 俺のために尽くさない家畜はいらない。

 冷たい目で、ゴブリンを見ながらそう心で呟いた。

 静寂が辺りを訪れる。

 みんな、今ここで起こったことに対して驚きの色を隠せずにいた。

「俺は強い!!それでも他に異議があるものがいたら、今すぐ名乗り出ろ」

 誰も名乗り出ない。

 新魔王誕生に割れるような拍手が起こった・


 ……とかっこつけていってみたものの、全部俺の計画通りなのだ。 

 操蟲師である俺は、小さな蟲を使って人間や魔物を操れる。

 今日は、この場で2匹の魔物を操った。

 一匹は元魔王の秘書でありこの場の司会者であったジャイロ。この場で、最も強力な発言権を持つものだ。彼を操り、俺を時期魔王にしてくれるように仕向けた。

 そして二匹目は、この倒れているゴブリンだ。俺は、ゴブリンを操り俺に向かって勝負するようにした。そうして返り討ちにすることで、たった今、多くの魔物の信頼を勝ち取った。知名度も低く、見た目も弱そうな俺だが、時期幹部の一人ゴブリンを倒したとなれば文句を言う魔物は格段に減るだろう。

 ゴブリンの動きは俺が操っているから読める。そして、俺の右手には、つい5分前に打ったとある蟲によって筋力が強化されている。ゴブリンを一匹くらい一本背負いするのには問題ない。そしてゴブリンが倒れた途端、すぐに蟲を使い奴を気絶させる。こうするとゴブリンが一撃で倒れたように見えるだろう。

 ようするに、俺にとってはこの場で起こったことは全て茶番でしかなかった。

 だけど、技何て使いようだ。

 操蟲師をなめるな。


 こうして俺はちょっとしたズルを使い魔物のトップとなった。


 とりあえず情報収集から、始めることにした。

「ジャイロ。勇者について知っていることを教えてくれ」

「本名、ルーカス・ダナフォール。金髪に緑の目をした美少年。

 リオダーク国出身。母親は、マドレーヌ・ダナフォール。父親は、ハワード・ダナフォール。母親、父親ともに死亡している。東の魔女と呼ばれたジル・キャットを殺害している。13歳に、勇者となる。数々の魔物を力技で倒し、そして2週間ほど前に魔王も倒した」  

 ふーん。両親が死んでしまうなんて、結構不幸な生活だったのかもしれない。

「そして、最近、勇者に彼女ができたらしいです」

 勇者の彼女。それが本当なら、人質にしよう。

 当然のように俺は極悪非道で卑劣なことをさらりと考えた。

「へえ。そいつの名前は?」

「リア・ローレンス」

 その名前を聞いた瞬間、手が震えた。

 喜びのためか、期待のためか、怒りのためかわからなかった。

 リア・ローレンス。

 その名前は、聞き覚えがあるどころの名前ではなかった。

 黒い髪に、赤い目をした女の子。

 温かい笑顔を今でも覚えている。

 俺の初恋の少女の名前だった。

 純粋な俺を裏切った少女の名前だった。

「はははははははははは。こいつは、傑作だ。

 最高だよ。俺が殺すべき敵の彼女が、俺が探していた相手だなんて」

 長いこと、彼女に出会うことを待ち焦がれていた。

 まさか勇者の彼女になってしまうとは思わなかった。

 醜い俺を見捨てたくせに勇者は選ぶのか?

 そういう本当の残酷さが人間の本質なのかもしれない。

 勇者にも、リアにも、俺が地獄を見せてあげる。

 最高の悲劇の始まりだ。


 灰色の目が不気味に光った。

 大量の蟲がロディのもとへ集まってくる。


 ようやく彼を出せてうれしい。

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