第102話 国道で出会った少女
どれだけ世界が変わっても、国道には様々な人生が交差します。
主人公たちが最初に出会ったのは、世界を揺るがす敵ではありませんでした。
一人の、小さな少女でした。
朝日を背に受けながら、四人は国道を走り続けていた。
頬を撫でる風。
ペダルを漕ぐ心地よいリズム。
主人公は自然と笑みを浮かべる。
「やっぱり国道はいいな。」
失敗作が横に並ぶ。
「景色しかねぇけどな。」
「その景色がいいんだよ。」
教育係は二人のやり取りを見て微笑んだ。
E-01は変わらず周囲を警戒している。
「周辺、安全。」
その時だった。
前方に、小さな人影が見えた。
国道脇のガードレールへ腰掛け、一人の少女が俯いている。
年齢は十歳ほど。
白いワンピース。
小さなリュックを抱えたまま、靴の先だけを見つめていた。
主人公は静かにブレーキを掛ける。
「どうした?」
失敗作も止まる。
「迷子か?」
主人公は少女の前へしゃがみ込んだ。
「おはよう。」
少女はゆっくり顔を上げる。
澄んだ瞳だった。
どこか見覚えがあるような、不思議な雰囲気を纏っている。
「一人か?」
少女は小さく頷いた。
「……うん。」
主人公は優しく笑う。
「腹、減ってるだろ。」
リュックから水とパンを取り出して差し出した。
少女は驚いたように主人公を見る。
「いいの?」
「食べられる時に食べる。」
「旅の基本だからな。」
少女は小さく笑った。
「ありがとう。」
その笑顔を見た瞬間だった。
主人公の胸が僅かにざわつく。
(どこかで……。)
見たことがある。
そんな気がした。
教育係も少女を見つめている。
「とても綺麗な瞳……。」
失敗作は頭を掻いた。
「親はどこだ?」
少女はゆっくり首を横へ振る。
「分からない。」
「気付いたら……ここにいた。」
主人公たちは顔を見合わせた。
記憶喪失。
それとも何か事情があるのか。
E-01が静かに少女をスキャンする。
「生命反応、正常。」
「外傷なし。」
「嘘をついている反応も確認できません。」
主人公は安心したように頷く。
「なら大丈夫だ。」
少女はパンを少しずつ口へ運ぶ。
その様子は、どこか懐かしかった。
主人公はポケットから黒糖飴を取り出す。
「これも食うか?」
少女は黒糖飴を見るなり、目を丸くした。
「……それ。」
主人公は首を傾げる。
「知ってるのか?」
少女は飴を見つめたまま、小さく呟く。
「やっと……見つけた。」
全員の空気が変わる。
主人公の笑顔も消えた。
「今、何て言った?」
少女はハッと我に返ったように首を振る。
「……ううん。」
「何でもない。」
だが。
主人公の胸の違和感は、さらに大きくなっていた。
風が静かに吹く。
その風に乗って。
遥か上空の《アーク・ガーディアン》統合管理AIが、小さく呟く。
「観測不能領域……再び反応。」
その視線の先には。
主人公ではなく。
一人の少女が立っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
新たな旅で最初に出会った少女。
彼女は偶然現れた存在なのか、それとも物語の鍵を握る人物なのか。
少しずつ、世界は新たな真実を見せ始めます。
次回もよろしくお願いいたします。




