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第101話 旅立ちの日、約束の道

世界を救った英雄。


そう呼ばれるようになっても、主人公は何も変わりません。


彼が選んだのは、豪華な暮らしではなく、再び国道を走るという、ごく当たり前の答えでした。

朝露に濡れた国道。


主人公はロードバイクのペダルをゆっくりと踏み込んだ。


タイヤがアスファルトを滑る音。


その音が、不思議と心を落ち着かせる。


「やっぱり、この景色だよな。」


街を振り返る。


復興作業に励む人々。


子どもたちの笑い声。


昨日まで絶望に包まれていたとは思えないほど、穏やかな時間が流れていた。


主人公は小さく微笑む。


「いい街になったな。」


その後ろから、慌てた声が響く。


「待ってください!」


教育係だった。


少し息を切らしながら駆け寄ってくる。


「やっぱり、一人で行くつもりだったんですね。」


主人公は困ったように笑う。


「巻き込みたくないからな。」


「それは却下です。」


教育係はきっぱりと言い切った。


「もう、あなた一人の旅ではありません。」


その直後。


「おーい!」


失敗作が大型バイクでやって来る。


「置いて行くなよ!」


さらに、その後ろにはE-01。


「同行準備、完了。」


主人公は頭を抱えた。


「だから、一人旅なんだけどなぁ……。」


失敗作が豪快に笑う。


「諦めろ。」


「お前の一人旅は、もう終わったんだ。」


その言葉に、主人公は苦笑した。


確かにそうかもしれない。


国道で倒れていた、あの日。


一人だった自分は、もうどこにもいない。


ふと、ポケットへ手を入れる。


黒糖飴。


包み紙の感触が指先に伝わる。


主人公は一粒取り出し、空へ掲げた。


「母ちゃん。」


「俺、まだ旅を続けるよ。」


風が優しく吹き抜ける。


まるで返事をするように。


その様子を見守っていた老人――大富豪が静かに歩み寄った。


「最後に、一つだけ頼みがある。」


主人公は振り返る。


「何だ?」


「いつの日か。」


「この街へ帰ってきてくれ。」


主人公は少しだけ考えた。


そして、笑う。


「帰る場所があるって、いいもんだな。」


老人も笑顔で頷く。


「いつでも待っている。」


主人公はロードバイクへ跨った。


教育係。


失敗作。


E-01。


三人も、それぞれ乗り物へ乗り込む。


《アーク・ガーディアン》は遥か上空から静かに見守っていた。


青年の姿をしたAIが、小さく呟く。


「良い旅を。」


主人公は空へ向かって手を振る。


「おう。」


そして四人は、ゆっくりと国道を走り始めた。


どこへ向かうのか。


何と出会うのか。


まだ誰にも分からない。


それでも主人公は笑っていた。


旅には、答えがない。


だからこそ、面白い。


ロードバイクのベルが軽やかに鳴る。


その音は、新しい物語の始まりを告げる鐘のように、青空へ吸い込まれていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


主人公は再び旅へ出ました。


ですが、第1話の頃とは違い、今は共に歩む仲間がいます。


その変化こそが、主人公自身の成長なのかもしれません。


次回もよろしくお願いいたします。

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