第100話 国道、その先へ
ついに第100話です。
ここまで主人公たちの旅を見守ってくださり、本当にありがとうございます。
それでも、この物語はまだ終わりではありません。
主人公が再びロードバイクに跨る時、新たな未来への一歩が始まります。
朝日が街を黄金色に染めていた。
主人公は静かにロードバイクのタイヤへ空気を入れていた。
「やっぱり、この音を聞くと落ち着くな。」
カチ、カチ、と空気入れの音が響く。
チェーンへ油を差し、ブレーキを確認する。
旅に出る前の、いつもの準備だった。
失敗作は腕を組みながら笑う。
「世界を救った英雄が、自分で整備するんだな。」
主人公はレンチを回しながら肩をすくめた。
「こいつは相棒だからな。」
「全部、人任せにはしたくねぇ。」
その言葉に教育係は優しく微笑んだ。
「本当に、このロードバイクがお好きなんですね。」
「好きっていうか……」
主人公はフレームを優しく撫でる。
「こいつがあったから、俺はここまで来られた。」
国道を走った日々。
雨の日も。
真夏の炎天下も。
腹を空かせながらペダルを漕いだ夜も。
ホームレスだった頃も。
このロードバイクだけは、文句ひとつ言わず隣にいてくれた。
主人公は小さく笑う。
「ありがとな。」
もちろん返事はない。
それでも、不思議と伝わった気がした。
老人――大富豪がゆっくり近付いてくる。
「出発するのか。」
「ああ。」
主人公は頷いた。
「まだ世界を全部見たわけじゃねぇし。」
老人は懐から、小さな封筒を差し出した。
主人公は首を傾げる。
「何だ?」
「旅の資金だ。」
主人公は苦笑した。
「いらねぇよ。」
「え?」
周囲が一斉に主人公を見る。
「必要になったら、自分で働く。」
「腹が減ったら、その辺でバイトでも探すさ。」
失敗作が額を押さえる。
「お前……世界一の金持ちの金を断る奴なんて初めて見たぞ。」
主人公は笑った。
「金があるから幸せなんじゃねぇ。」
ポケットから黒糖飴を取り出す。
「俺には、これがある。」
包み紙越しに握り締める。
「あの日、母ちゃんから貰った一粒が、俺をここまで連れてきてくれた。」
大富豪は静かに封筒をしまった。
そして深く頭を下げる。
「君には、最後まで教えられてばかりだった。」
主人公は慌てて手を振る。
「やめろって。」
「そんな大した人間じゃねぇ。」
「ただの旅人だ。」
その時。
《アーク・ガーディアン》統合管理AIが静かに歩み寄る。
「お願いがあります。」
主人公が振り向く。
「何だ?」
「旅を続けてください。」
主人公は少し驚いた。
AIは穏やかに続ける。
「私は、この街を見守ります。」
「ですが、人の心は数字では測れません。」
「だから。」
「あなたが見てきた世界を、いつか私にも教えてください。」
主人公は笑った。
「いいぞ。」
「土産話くらいなら、いくらでも。」
AIも静かに笑みを浮かべる。
「約束です。」
主人公はロードバイクに跨った。
ペダルへ足を乗せる。
その瞬間。
風が優しく背中を押した。
まるで。
世界そのものが、新しい旅立ちを祝福しているようだった。
主人公はゆっくりと走り出す。
振り返らない。
国道は、どこまでも続いている。
そして、その先には。
まだ誰も知らない景色が待っている。
主人公は笑った。
「さて。」
「次は、どんな出会いがあるかな。」
ロードバイクのベルが澄んだ音を鳴らす。
その音は、どこまでも続く国道へ響いていった。
第100話までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
主人公は再び旅へ出ます。
ですが、この旅は第1話の頃とは違います。
何も持たずに走っていた旅人は、多くの仲間と、守りたい世界を胸に、新たな国道を走り始めました。
ここから先の物語は、新たな出会いと、まだ明かされていない世界の真実へと繋がっていきます。
これからも、よろしくお願いいたします。




