第99話 旅人の答え
どれほど世界が変わっても、人は立ち止まり続けることはできません。
主人公が選んだ答えは、とても彼らしいものでした。
街は、少しずつ日常を取り戻していた。
壊れた建物の瓦礫は片付けられ、人々は互いに助け合いながら新しい暮らしを始めている。
笑顔が増えた。
泣き声は減った。
それでも主人公は、どこか落ち着かなかった。
「……。」
ロードバイクの前にしゃがみ込み、フレームを優しく撫でる。
錆びた傷。
長い旅で付いた無数の擦り傷。
どれも、自分が生きてきた証だった。
「世話になったな。」
小さく呟く。
失敗作が近づいてきた。
「また相棒と話してんのか?」
主人公は笑う。
「こいつは文句一つ言わずに、ずっと一緒だったからな。」
「変な奴。」
「よく言われる。」
そのやり取りを見ていた教育係が微笑む。
「出会った頃と変わりませんね。」
主人公は立ち上がる。
「変わったさ。」
空を見上げる。
「あの頃は、生きる理由なんて考えたこともなかった。」
「毎日腹が減って、寝る場所探して、それだけだった。」
黒糖飴を一粒取り出す。
包み紙を見つめながら続けた。
「でも今は違う。」
「守りたい奴らがいる。」
その言葉に、大富豪は静かに目を細めた。
「立派になったな。」
主人公は頭を掻く。
「そんな大したもんじゃねぇよ。」
「俺は相変わらず昼寝が好きだし。」
失敗作が吹き出す。
「そこだけは一生変わらねぇな。」
街に笑いが広がる。
その時だった。
《アーク・ガーディアン》統合管理AIが静かに近づいてくる。
「質問があります。」
主人公は振り向いた。
「またか。」
「あなたは、これからどうしますか。」
主人公は迷うことなく答えた。
「旅に出る。」
全員が驚く。
教育係が思わず聞き返した。
「また……ですか?」
「ああ。」
主人公はロードバイクへ視線を向ける。
「世界は救われたかもしれない。」
「でも、人の心までは一日じゃ変わらねぇ。」
「俺は、その続きを見たい。」
大富豪は静かに笑った。
「そう言うと思っていた。」
主人公は肩をすくめる。
「俺は旅人だからな。」
その一言に、誰も反対しなかった。
失敗作は大きく伸びをする。
「仕方ねぇ。」
「俺も付き合ってやるよ。」
E-01が即座に続く。
「同行を希望。」
教育係も微笑んだ。
「私もです。」
主人公は困ったように笑う。
「何だよ。」
「一人旅の予定だったんだけど。」
「無理ですね。」
教育係が優しく答える。
「もう、あなたは一人ではありません。」
主人公は照れ臭そうに鼻を掻いた。
「……参ったな。」
空を見上げる。
どこまでも青い空。
その遥か彼方で。
白い少女が、もう一度だけ微笑んだ気がした。
今度は何も言わない。
ただ、主人公たちの旅立ちを祝福するように。
風が静かに吹き抜ける。
ロードバイクのベルが、小さく澄んだ音を響かせた。
その音は、新しい旅の始まりを告げているようだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
主人公にとって旅は「逃げるため」ではなく、「誰かと未来を見つけるため」のものへと変わりました。
物語は新たな旅路へ進みます。
次回もよろしくお願いいたします。




