第103話 優しさは巡る
旅とは、景色を見るためだけのものではありません。
人と出会い、人を知り、自分自身を知るためのもの。
主人公たちは、新たな国道で、また一つの出会いを迎えます。
国道を走り始めてから数時間。
街並みは少しずつ姿を変え、賑やかな景色は田園風景へと移り変わっていた。
「やっぱり、この景色が落ち着くな。」
主人公は風を受けながら笑う。
ロードバイクのタイヤが、一定のリズムでアスファルトを刻んでいく。
失敗作が欠伸をした。
「腹減った。」
「お前、それしか言わねぇな。」
「腹が減るんだから仕方ねぇ。」
教育係が思わず笑う。
E-01も静かに告げた。
「エネルギー補給、推奨。」
「お前までか。」
主人公は苦笑しながら国道沿いの小さな商店を見つけた。
昔ながらの個人商店。
色あせた看板。
店先には自動販売機が一台だけ置かれている。
「少し休憩するか。」
四人は店の前で足を止めた。
主人公が飲み物を買おうと財布を取り出した、その時だった。
店の裏口から、小さな男の子が飛び出してきた。
慌てた様子で転び、そのまま地面へ尻もちをつく。
「あっ……。」
主人公はすぐに駆け寄った。
「大丈夫か?」
男の子は唇を噛み締めながら頷く。
「うん……。」
膝から少し血がにじんでいた。
主人公はバッグから絆創膏を取り出す。
「じっとしてろ。」
慣れた手つきで傷口を軽く拭き、絆創膏を貼る。
「これでよし。」
男の子は目を丸くした。
「おじちゃん、お医者さん?」
「違う違う。」
主人公は笑う。
「昔、転びまくってたから慣れてるだけ。」
その言葉に男の子も笑顔になった。
店の奥から女性が飛び出してくる。
「すみません!ありがとうございます!」
主人公は首を横に振る。
「気にしないでください。」
「誰でもすることです。」
女性は深く頭を下げた。
「最近は、そんなふうに言ってくださる方が少なくて……。」
主人公は少し照れ臭そうに頭を掻く。
「俺も昔、助けてもらったんですよ。」
「だから、今度は俺が助ける番です。」
その言葉を聞いた教育係は、静かに微笑んだ。
失敗作は腕を組みながら頷く。
「らしいな。」
主人公は男の子へ黒糖飴を一粒差し出した。
「泣かなかったご褒美。」
男の子は嬉しそうに受け取る。
「ありがとう!」
包み紙を大事そうに握る姿を見て、主人公はふと昔を思い出した。
裸足で歩いていた、あのホームレス。
必死に黒糖飴を守ろうとしていた姿。
「あの時……。」
自然と笑みがこぼれる。
失敗作が不思議そうに尋ねた。
「どうした?」
「いや。」
主人公は空を見上げる。
「優しさってさ。」
「案外、巡るもんなんだな。」
その瞬間。
優しい風が国道を吹き抜ける。
ロードバイクのベルが、チリン、と小さく鳴った。
どこか遠くで。
誰かが優しく微笑んだような気がした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回のお話は、戦いではなく「人との繋がり」を描きました。
主人公がホームレスから受け取った優しさは、今度は別の誰かへ受け継がれていきます。
そんな小さな積み重ねこそ、この物語の本当のテーマなのかもしれません。
次回もよろしくお願いいたします。




