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落ちこぼれ勇者は史上最強と名高い魔王討伐を目指す〜なお、魔王の囁きには魅了効果があります〜  作者: 丹羽坂飛鳥
幕間

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好きなところは?(後編)

 夜。

 食堂の下働きをしながら情報収集を満足するまで終えた私は、オルディアの部屋に戻った。


「じゃあ、先にお風呂入ってこようかな」


 二人きりがなんだか照れくさい。

 だからお風呂場に逃げ込もうとした。

 しかし勇者は、背後から魔王の腕に捕えられていた。


「……オルディアもお風呂、一緒に行く? ……っんん」


 背の高いオルディアが耳を噛んでくるから、びくついちゃう。

 けど私から手を握ると、満足したみたいで頷いてくれた。


「なら一緒に。

 ……仕事が終わった今は、片時も離したくないんだ……今日はもう逃さない」


 顎に手がかかって、引き寄せられるままキスされてる。

 まさかこのまま、お風呂場で食べられちゃうかなって思ったけど……服を脱いで全身を清めるうちは、何もなかった。


 変に焦らされてるみたいで、ドキドキする。


 湯船に二人で入ったけど、隣り合ったオルディアがついに私を膝の上に乗せてきた。

 横向きになって、お互いを触りやすいような格好で抱きしめられたって気づいた心臓が、音を立て始める。

 オルディアの肌に密着したせいで全身が緊張して動けない私のおでこに、唇が触れたからびくついてた。


「今日はフルルの口から、僕の好きなところを聞けて嬉しかった。

 ……普段あまり好意を見せないから、僕もそこまで思ってくれているとは知らなかったな」


「え、ちゃんと好きだよ。魔王と勇者なんて関係でも、オルディアと結婚したいって思ってるくらい好き。

 ……逆にオルディアは、私のどこが好きなの?

 尊敬してるって言ってくれたけど……他にも理由ある?」


 小さい頃から好きだって聞いてるけど、私の何が良いのかな。

 生まれた頃からの幼馴染だから、全部曝け出してる安心感くらいはあるはずだけど……そう考えるうちに、オルディアの指に顔をあげさせられた。

 驚いて目を閉じた私と、唇が重なる。

 瞼を開けたら深緑の瞳と見つめ合って……見惚れるうちに、綺麗な顔が微笑んだ。


「僕はまず、フルルの無邪気で可愛いところが好きだ。

 『仲間として支え合う勇者』でもあるけれど、明るく笑って前を向かせてくれる一人の大切な女の子として、フルルを見ている」


 微笑む魔王の銀の髪から水滴がしたたって、見上げる私の肌を伝い落ちる感覚が、くすぐったい。

 ……オルディアにも私を好きなところ、ちゃんとあるんだ。

 色っぽい顔を見てるせいで、水の感触にまでドキドキするけど……柔らかい唇が重なるだけで鼓動が跳ねるのも心地よく感じながら、目を閉じてた。


「勇者として胸を張って、仲間を引っ張る姿が格好いいことも好きだな。

 昔からフルルがそばにいないと落ち着かないくらい、恋しくも感じる。

 『絶対に置いていかれたくない』と思って追いかけてきた相手だからこそ、そばにいるだけで幸せになれるんだろうな……こうして触れ合えることが、今……僕は何より幸せに思える」


 唇がまた、重なる。

 好きなところを言うたびにキスされて……見つめ合う深緑の瞳に飲み込まれそうなほど、心も体も惹かれていく。


「誰かと交わした約束を守ろうとする真っ直ぐさも、そのために自分に出来る最大限まで努力出来るところも好ましく思っている。

 そうだ……初めて抱いた時に、抵抗するため『レムス』の名前を呼んだだろう。

 幼い頃に亡くしたはずの僕のことも想って戦ってきてくれた、純粋で一途なところも好きだ」


 魔王に組み敷かれながらレムスの名前を必死に口にしたのを思い出して、真っ赤になった。

 目の前の相手は自分のことだって分かってるから、体を繋げながら『そのまま呼び続けろ』って言ったのかな。

 あのあと生まれて初めて迎えた絶頂も、オルディアに無理やり抱かれ続けたことも何もかも思い出しちゃって、目が回る。


「大人になったフルルはますます強くて、綺麗になっていた。

 ……でも何より笑顔が可愛らしいんだ。

 ずっと離れていたけど、中身は昔のままのフルルだと感じられる姿にも安心して……敵対者であっても笑いかけてくれた時には、魔王として接しなければならないことも忘れてしまった」


 甘く微笑むオルディアを見ているだけで、囁かれてないのに魅了されてる気がする。

 交わしてるのは軽いキスなのに、心の底までふわふわし始めて……まとめ上げた小麦色の髪に触れたオルディアが、頭を撫でて抱き寄せてくれる。


「いつもフルルと話していると楽しいし、心地いい。

 大切で守りたいと思えるくらい、そばにいると愛おしさが込み上げてくる。

 ……そんな相手は、フルルしかいない」


 好きな理由を伝えてくれるたび、いっぱいキスされて……心も体も蕩けてく。

 髪に触れてた指が頬に降りて、首筋をなぞった。


「んんっ」


 体がオルディアを欲しがって、疼く。

 触れ合う太ももで察されちゃいそうなのが恥ずかしい。

 でも肌を撫でる指はもうわかってるのか、息が上がる私の胸にも触れてきた。


 大人になった幼馴染の体と、やがて一つになる。


 正体を知らないまま『弱点探しだ』なんてお風呂に入ったあの頃より、ずっとずっとオルディアのことを好きになってる。

 覆い被さる幼馴染とキスするだけで気持ちが込み上げてきて、こうして男女として体をつなげたくなるくらい大好きななんだって、熱い肌でも感じてた。


「好きだ、フルル……こうして共に時間を過ごせることが、何より幸せだ」


 言葉に体が反応して、炭酸の泡みたいに小さな快感がたくさん弾けて止まらない。

 今まで一緒にいられなかった分を埋めるみたいに、触れ合ってる。

 私を抱えて愛情を交わすオルディアの熱がこもった表情にも、胸の奥が締め付けられて……唇を重ねて息を止めるだけでも、感度が上がってる。


 こうやって男女で愛を交わすんだって実感してる私の唇を塞いで、オルディアが舌まで潜り込ませてくる。

 私も欲しくなっていっぱい粘膜を舐め合ってたら、唇を離した魔王が、耳元に作りの良い顔を寄せた。


「……大好きだよ、フルル」


 涼やかな囁き声に目が眩んで、体からますます力が抜ける。

 今日も魔王に恋した勇者は、魔族の長い行為に泣きながら、朝まで体を重ねたのでした。

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