別れ
俺は買い物から帰って来ると対侵入者用のトラップが全て発動してあった。猛烈に嫌な予感がした俺は荷物を投げ出して、ソニアさんとララちゃんを探し回った。
お願いだ!!
無事てでいてくれ!!
俺の願いは叶うことなく、血の海に倒れたソニアさんを見つける。
「ソニアさんっ!!!」
慌てて駆け寄る。抱きかかえて見るとソニアさんの胸は貫かれており血が流れていた。どう見ても致命傷だ。
「……ショウか?」
俺の呼びかけが届いたのか、ソニアさんが意識を取り戻した。
「ソニアさん! 一体誰が!!」
「わからない……黒のローブの男だった」
「黒のローブの男……」
心当たりがあった。ララちゃんを誘拐しようと襲撃して来た男と俺を闘技大会で嵌めた男と思われる。
くそが!!
ララちゃんの言うとおり残ってれば!!
「ゴフッ……ケホッ……」
「ソニアさん! 今治癒魔法を掛けますから!」
「無駄だ。心臓を貫かれている。今生きているのはエルフの生命力のおかげだ……」
「ソニアさん、喋っちゃダメっすよ!」
「君に伝えねばならないことがある。ララをある場所へと転移させた……ハァ……ハァ…ララはこの国を出た荒野にいる。そこには私の隠れ家がある。そこにララがいるはずだ。ゴホッゴホッ……」
「ソニアさん! これ以上は!」
「頼む。最後まで喋らせてくれ……」
俺にそう言うソニアさんの顔は全てを分かっているような顔だった。自分の命は残り僅かだと。
「ショウ……私はね、この国が好きなんだ」
「はい……」
「お願いだ、ショウ……この国を守って欲しい。勿論、無茶な事を言っているが、どうしてもこの国を守って欲しいんだ……」
「……」
「君たちと過ごしたこの国を守って欲しい。前にも言ったが、私は君達のおかげで本当に幸せの毎日だった。その思い出があるこの街をこの国を失いたく無いんだ。ララとチルと君と過ごしたこの国を……守って欲しい」
「守ります。守りますから、ソニアさん……」
「ふふ……そんな顔をしないでくれ……」
「でも、ソニアさんが!」
「私のことはいい…ゴフッゲホッ……」
「ソニアさん!」
「ショウ……いつものように了解っすと言ってくれ」
「そんな事を言ってる場合じゃ!」
「お願いだ……ショウ……私の最後の頼みなんだ……」
くそ……くそっっっ!!!
どうして、どうして!!!
最後なんて言うんだよ!!
俺やだよ……
最後なんて言わないでくれよ……
「そんな顔をするな……ゴホッゴホッ……」
「ソニアさん……」
「ほら、いつものようにカッコ悪くて締まりのない笑顔で了解っすと言ってくれ……」
そんな顔をしてたのか俺は……
俺はソニアさんに言われた通りにする。出来てるか分からないけど、精一杯の笑い顔をソニアさんに見せる。
「了解っす……」
「そう……その顔だ……その顔が一番私は好きだ」
ソニアさんはそう言いながら俺の頬を撫でるように手を伸ばして来た。俺の頬に触れるソニアさんの手が冷たいのが、とてつもなく悲しい、
「ふふ……私は幸せだな……こんな風に死ねるなんて……」
「そんな……そんな事言わないでください……」
「ショウ……私は……君のことが……好――」
ソニアさんは最後にそう呟いて死んだ。俺の頬を撫でていた手が床へと落ちる。零れ落ちる手を握り締めて名前を呼ぶ。
「ソニアさん……ソニアさん?」
俺はソニアさんを揺する。しかし、ソニアさんが二度と目を開けることはなかった。眠るように目を閉じるソニアさんが死んだと思えなかった。
なぁ、神様よ……?
そんなに俺が憎いのか?
俺が出会う女は何処かネジが抜けてておかしいけど、誰もが優しくて良い人ばかりだ。
何故ソニアさんが死ななきゃいけないんだ!!
返してくれよ……!
お願いします……
「うああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
俺は泣くこともせず、ただ大きな声で叫んでいた。生まれて初めて本気の告白をされて、初めて今生の別れをした。
俺はソニアさんを抱き上げると屋敷を出て裏の湖へと向かう。ソニアさんのお気に入りの場所と言っていたから。
ここにしよう……
俺はソニアさんを湖のほとりに埋めることにした。
「ソニアさん……今はこれで許してください」
俺はソニアさんと最後の別れを告げてララちゃんの元へと急いだ。
ソニアさんとの約束を守る為にも!!
改訂済み




