黒のローブ
ショウは街に買い出しに行っているとある噂を耳にした。それは、エルフの姫君が誘拐されたと言うこと。
そのおかげで街は今騒然としている。何より、不味いのは獣人が疑われていること。
何故かというと人間の王子、エルフの姫君がたて続けに居なくなったから。ララだけが無事なので余計に疑われている。
しかし、ララも一度誘拐されかけた事がある。ガストンとチルの活躍により防がれたが。
この噂のせいで、今街は一触即発状態だ。もしかしたら三種族で戦争が起こるかもしれないと街は大騒ぎになっている。
ショウは屋敷へと帰り、そのことをソニアとララに報告する。
「そうか。今街ではそのうようなことが……」
「二人が心配……」
「何にも無いといいんすけどね……」
それから一週間が経ち最悪の事件が起こる。それは三国王達がそれぞれの種族に襲われたこと。
その事件のせいで種族間の争いが勃発した。街では騒動が絶えない。なんとか騎士達も止めているのだが止まらない。
それどころか騎士達も触発されて暴動に混ざる一方である。
本当にどうしたものかと悩ましい問題である。
そして、更なる事件が起こった。それはそれぞれの種族の国王達が戦争を決めたという衝撃の知らせだ。
つまり三つ巴の争い。
もう止めることは出来ない。ショウもガストンに話を聞きに行ったら国王がもう止められないと教えてもらった。
エルフの女王も人間の国王もゼオンと同じように止めることが出来ないという。
なんで、こんなことになってしまったのだとアルカディアに済んでいる国民は嘆いた。
この国は三種族が手を取り合い共に生きて来たから、ここまで繁栄したのに何故このような事になってしまったのだと。
ショウが知らない所で着々と事は進んで行った。
「じゃあ、俺は買い物に行って来ますね~」
ショウが買い物に行こうとしたらララに手を掴まれる。一緒に行きたいのかとショウは思ってララに顔を向ける。
「どうしたの。ララちゃん?」
「ダメ……」
「えっ、なんで?」
「お願い。今日は一緒にいて」
「ショウ。ララがそう言ってるんだ。今日は買い物を止めてここに居たらどうだ?」
「ソニアさんまで何言ってんすか。買い物なんてすぐ終わりますよ」
「しかし……」
「大丈夫っすよ~」
ショウは片手を振りながら買い物へと出かけた。だが、ショウはこの時の事をとても後悔することになる。
ショウが買い物に出かけてから、しばらくが経ちソニアがララに話しかける。
「ララ、何が不安なんだ?」
「わからない……でも、何か嫌な感じが」
「ほほう、それは良くありませんね~」
「だ、誰だ!?」
ソニアとララが話していたら、急に人が現れる。ローブを深くかぶり素顔を隠しているが声で分かるのは男だと言う事。
「トラップは発動しなかったのか!!」
「ああ、あの楽しいアトラクションですか? いやー、中々面白くて良かったですよ」
ソニアは侵入者用に仕掛けていたトラップの事を聞いた。目の前の男は飄々としており、トラップを潜り抜けたと言う。
ショウでも苦戦したあのトラップを全て無傷でクリアしたと言う男にソニアは苦虫を噛み潰したかのような顔を見せる。
非情に危険であることが分かる。少なくとも、ソニア一人では勝てない。
ソニアは思い出す。ララが今日に限ってショウを呼び止めたことを。もしかすると、この男が来る事を予感したのではないのかと。
だとすれば、ショウがいなければこちらに万の一つも勝ち目がないとソニアは焦る。
「おや? そんな脂汗をかいてどうしたんですか? そんなに暑くないでしょう?」
「ソ、ソニア」
怯えるララがソニアの後ろに隠れる。ソニアはララを守るように一歩前に出る。
「つれませんねぇ~ララ姫様」
「一体、私達になんのようだ?」
「貴方には何にもありませんよ。ララ姫様に用事があるんです」
「まさか、貴様か!! リーベル王子とニーナ姫を誘拐したのは!!」
「半分正解で半分ハズレです。私は他の人間を使って誘拐しただけです。まあ、ララ姫様だけは厄介な人がいて手が出せませんでしたが、運良く彼が買い物に行ってくれたおかげで私が来れた訳ですよ」
どうやら、全ての元凶は目の前の男だと言う。ソニアは驚愕の事実を知ってしまい、フラツキそうになる。
だが、今はなんとしてでも時間を稼ぎ、ショウが戻ってくるまでの間ララを守り抜くことが先決なのだとソニアは覚悟を決める。
「クフフ……」
「気味の悪い奴め! 水鞭!!」
水の鞭でローブの男に攻撃するも鞭はローブの男の前で消滅してしまう。
「何っ!?」
「クフフ……人形風情が私に敵うとでも?」
「どういう――」
ソニアが自分を人形だと言った事を男に聞こうとしたら、ソニアの胸が男の魔法によって貫かれた。
「カハッ……!」
「死んでいく貴方には言う必要が無いでしょう? さぁ、ララ姫様こちらに来て頂けましょうか?」
「ソニアッ!!!」
力なく倒れていくソニアを見てララがソニアの名を叫ぶ。床に倒れ伏すソニアは最後の意地と言わんばかりに魔法陣を起動させる。
「これは!?」
ローブの男が驚く。無理もない。何故ならソニアが発動させたのは、いざという時の為に用意していた脱出用転移魔法陣だから。
これならばララだけを逃がす事が出来る。
「ソニア! ソニアアアアアア!!!」
ララはソニアの名前を叫んだ後、魔法陣によって何処か別の場所へと転移した。この場に残ったのは男と、床に倒れ伏し貫かれた胸から血を流すソニアだけ。
「やってくれましたね。まあ、良いでしょう。どの道遅かれ早かれアルカディアは滅亡しますから」
「ゴフッ……貴様が……この戦争の黒幕か…」
「ええ。それでは私はこれで」
ローブの男は歩いて出て行こうとする。その時ある言葉がソニアの耳に聞こえた。
「クフフフフ……彼は一体どんな顔をするのでしょうねぇ……」
そう呟いた後は、何処へとも無く姿を消した。ソニアはそこで意識を失った。
改訂済み




