↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/15

空腹

女は、最近よく人に会っていた。


一人と話せば、別の名前が出る。

その名前を知れば、その向こうにまた人がいる。


以前なら、必要かどうかを先に考えた。

使える。使えない。今いる。後でいい。


けれど最近は違う。


知らない名前を聞くだけで、腹の奥が動く。


その日も、小さな集まりで一人の人間と話していた。


「それなら、○○さんの話を聞いたほうがいいかもしれませんね」


知らない名前だった。


「どういう方ですか?」


「この分野では面白いことをやってる人ですよ。今度会うんですけど、よかったら来ます?」


腹の奥が、はっきりと蠢いた。


「ぜひお願いします」


隣にいた男が笑った。


「今、食いついたね」


「何ですか、それ」


「分かりやすいなと思って」


女も笑った。否定はしなかった。


その後も人が来た。 話を聞く。 知らないことが出る。 聞く。

答えの中から、また知らない名前が出る。 もっと聞く。


一つ知るたびに満たされる。


そして、満たされた場所のすぐ隣に、まだ空いている場所が見える。


帰宅した女は、机へ帰りに買った食事を置いた。


腹が減っている。

そう思って蓋へ手を伸ばした時、スマートフォンが鳴った。


『さっき話した○○さん、来週なら時間取れるそうです』


指が止まった。


腹の奥が大きく動いた。


『ありがとうございます。ぜひお願いします』


送信する。


そのまま名前を検索した。 記事を読む。 知らない言葉を調べる。

別の人間が出てくる。 また読む。


その向こうにも、まだいる。


女はようやく食事を見た。


腹は減っている。


けれど。


こちらではない。


女は腹へ手を当てた。


ずっと、これだった。


足りなかったのではない。 寂しかったのでもない。

誰か一人が欲しかったわけでもない。


知りたい。 触れたい。 その向こうを見たい。


一つ手に入れれば、その先が欲しい。


「……お腹、空いてるんだ」


口にすると、妙に腑に落ちた。


なら。


満たし方も分かる。


食事の蓋は開けないまま。


女は次の名前を押した。


まだある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。