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爆美女悪役令嬢は処刑されたので、2度目の人生は幼なじみの伯爵令息と幸せになります  作者: 杜咲凜


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22/23

後日談  夜の向こう側

 

 その日は澄み渡るほどの晴天。

 そして、2人の結婚式が行われた。


 親戚も、友人も、両親も。

 大切な人たちが皆、二人を祝福するために集まった。


 親しい友人たちは遠方からも駆けつけてくれ、

 領地へ戻れば、領民たちからも温かい祝福を受けた。


 ドレスも完璧だった。


 その日のカテリーナの美しさは、

 隣国まで吟遊詩人が歌にするほど話題になったという。


 そして幸せなカテリーナとマッティアは、正式な夫婦となった。


 緊張しながら迎えた夜を過ごし、翌朝には二人で紅茶を飲んだ。


 結婚して、初夜を迎えて数日がたった。


 ――といっても。


 今夜は何かを急ぐ夜ではなかった。

 柔らかな灯りの中、二人は並んでベッドに横になっている。


 数日間は、ゆっくり休もうと決めていた。

 無理はしない。焦らず、自分たちのペースで。

 それが、二人の最初の約束だった。


 マッティアは天井を見つめながら、

 まだどこか現実感を失っていた。


(……妻)


(カテリーナが、僕の妻)


 その事実だけで、胸がいっぱいになる。


 正直に言えば、初夜も何度も意識が遠のきかけた。


 あまりにも幸せで。

 あまりにも信じられなくて。


 そのたびにカテリーナが小さな声で励ましてくれて、

 そっと手を握ってくれた。


 どうにか最後まで迎えられた。

 それだけで奇跡みたいだった。


 ――なのに。


 横を見ると、カテリーナが静かに泣いていた。


「……カテリーナ?」


 思わず身を起こす。


「どこか痛い?無理させてた……?」


 声が震える。カテリーナは慌てて首を振った。


「違うの」


 涙をぬぐいながら、それでも止まらない。


「ただ……」


 少し言葉を探してから、ゆっくり話し始めた。


 カテリーナは思い出していた。


 一度目の結婚生活。

 愛されなかった日々。

 孤独だった夜。


 ――それを、マッティアには言わない。


 ……でも。


 皆に祝福され、笑顔が絶えない結婚式。

 家族に祝福されたこと。

 穏やかな新婚の日々。

 そして、愛された夜。


 そのすべてが初めてで、愛しくて、胸にあふれてしまっただけだった。


「――わたしね」


 カテリーナは涙をこぼしたまま微笑む。


「あなたに出会った三歳のころから、ずっと毎日、幸せだわ」


 マッティアの喉が鳴る。


「とても優しくて、ちゃんと愛されて」


 彼女はそっと胸に手を当てた。


「世界一の幸せ者よ、わたし」


 少しだけ不安そうに続ける。


「……あなたの、よい妻になれてるかしら」


 その瞬間、マッティアの胸の奥で何かが崩れた。


「いや……」


 首を振る。


「僕こそ、ずっと思ってた」


 彼女のほうを向く。


「カテリーナには釣り合わないって。こんな幸せ、許されないって。でも……君に触れたら……」


 言葉がかすれる。


「もう、手放せなくなった」


 震える声で、はっきりと言った。


「絶対に、誰にも触れさせない」


 カテリーナは少し驚いてから、ふふ、と肩を揺らす。


「私だって……」


 そう言って彼の手を取る。


「あなたを、誰にも触れさせないわ」


 ゆっくりと、やさしいキス。

 深くはない。

 でも、確かに愛のあるキスだった。


 しばらくして、マッティアが思い切って聞いた。


「……明日は、どうする?」


 するとカテリーナは少し身体を起こして、いたずらっぽく微笑んだ。


「……そんなこと、わかってるでしょう?」


 その笑顔を見た瞬間、マッティアは悟る。


(……勝てない)


 最初から、ずっと。

 こうして二人の夜は、静かに、やさしく、ゆっくりと更けていった。

明日、後日談2話目。

最終回です。

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