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爆美女悪役令嬢は処刑されたので、2度目の人生は幼なじみの伯爵令息と幸せになります  作者: 杜咲凜


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第20話 最高のプロポースをあなたに1

 音楽と笑い声が満ちるホールの中で、カテリーナは少しだけ不思議な気持ちになっていた。

 一度目の人生では、ここに立っていなかった。

 そして、こんなふうに友人に囲まれて笑うこともなかった。


「カテリーナ様!」


 声をかけてきたのは、マッティアの友人たちだった。

 彼らとは、ほとんどがマッティアを通じて出会った。

 最初は少し距離があった。


 侯爵令嬢と伯爵令息の婚約者。

 身分だけ見れば、カテリーナの方が上のことも多い。

 それでも彼らは、いつの間にか自然に接してくれるようになった。


「卒業したら、会えなくなるな」

「領地が遠いんだよなあ」


 一人が笑いながら言う。すると、隣にいた彼の婚約者が言った。


「でも手紙くらい書けるでしょう?――それに」


 彼女は婚約者をみてから、そっと親しい友人のまなざしでカテリーナを見る。


「カテリーナ様の結婚式には呼んでいただけるのでしょう?」


 カテリーナは少し驚いて、それから笑った。


「もちろんよ」

「みんな来てくれるなら嬉しいわ」


 するとマッティアの友人が肩をすくめる。


「逆に、俺たちの結婚式にも来てくれよ」

「領地が遠くても」

「お互い様だ」


 別の友人も笑う。


「そうそう」

「どうせこの先、何十年の付き合いになるんだ」

「今さら距離なんて関係ない」


 すると、友人の婚約者たちも楽しそうに言った。


「将来は、子ども同士も友達になるかもしれませんね」


 一瞬、皆が笑う。

 マッティアは顔を赤くする。

 カテリーナは少しだけ頬を染めながらも、穏やかに微笑んだ。


「そうね」

「きっと、その頃も」


 グラスを軽く持ち上げる。


「またこうして集まっているわ」


 誰かが言った。


「学園の友人ってさ」

「たぶん、一番長い付き合いになるよな」


 マッティアが、少し照れながら言う。


「……そうだね」


 カテリーナは思った。


 一度目の人生では、知らなかった。

 こういう時間を、こういう人たちを。

 そして、隣を見る。マッティアがいる。

 彼がいなければ、きっと出会えなかった人たち。


 だから――カテリーナは静かに微笑んだ。


(ありがとう)


 その言葉は、声にはしなかったけれど。

 マッティアには、ちゃんと伝わった気がした。


 そして、卒業パーティーでは皆で語り合いながら、学園生活の終わりを惜しんだ。

 最後のダンスもマッティアと一緒に踊る。

 マッティアはたくましく成長した。その凛々しさと頼もしさは、カテリーナに全力で向けられ、カテリーナは思い出深い一日になった。


 *******


 

 そして卒業後。

 カテリーナは結婚に向けて忙しい日々を過ごしていた。


 マッティアの領地のこと。

 伯爵家の家業や領民の暮らし。

 それらはすでに長い時間をかけて学んできたことだった。


 幼いころから家族ぐるみの付き合いがあり、家令や使用人とも顔なじみである。

 いつでも嫁げるよう、準備は整っていた。

 それでも結婚式の準備は想像以上に忙しい。


 ドレスの仕立て、招待客の調整、親戚とのやり取り。

 気が付けば、結婚式まで残り二か月。


 一年かけて準備してきた日が、ようやく近づいていた。

 だがその頃、二人はなかなか会えなくなっていた。

 マッティアは領地の仕事で忙しく、カテリーナも結婚式の準備で時間を取られている。



「お嬢様、こちらのレースはいかがでしょう?」


 侍女がドレスの布を広げる。


「式当日のベールにぴったりかと」


 カテリーナは微笑みながら頷いた。


「素敵ね。でも少しだけ控えめにしてちょうだい」


 レースをよく見てから、侍女に視線を向ける。


「派手すぎるのは、マッティアが驚いてしまうわ」


 侍女たちはくすくす笑う。


「伯爵令息様は、きっとどんなお姿でも驚かれますよ」

「それはもう、毎回のように」


 カテリーナは少し頬を染めた。

 それでも――最近、彼に会えていない。


 手紙は届く。

 忙しい合間に書かれた文字。

 彼の癖のある筆跡を見るだけで、胸が少しだけ軽くなる。


(けれど――やっぱり……)


 カテリーナはふと窓の外を見る。


(……会いたい)


 そんな気持ちが、静かにこぼれる。



 その日の夕食の席で、父がふとカテリーナの様子を見た。


「カテリーナ」


「はい、お父様」


「最近、少し元気がないな」


 カテリーナは少し驚く。


「そう見えます?」


 母が穏やかに微笑む。


「わかるわよ」


「マッティアに会えていないのでしょう?」


 カテリーナは少し視線を落とした。


「……少しだけ」


 すると、隣からすぐ声が飛んできた。


「姉上、寂しいの?」


 弟だった。

 カテリーナは思わず笑う。


「そんな顔してた?」


「うん」


 弟は真面目な顔で頷く。


「でも仕方ないよ」


「兄上……いや、まだ婚約者か」


 言い直して少し照れる。


「マッティア様、とても忙しいんでしょ?」


 父が頷く。


「領地の整備をかなり進めていると聞いた」


 弟は嬉しそうに言った。


「すごいよね」


「この前も父上と話してたじゃないか」


「新しい橋を作るとか、学校を増やすとか」


 それから少し胸を張る。


「姉上の婚約者、ほんとうにすごい人だよ」


 カテリーナは少し驚いた顔になる。

 弟は続ける。


「だからさ」


「姉上。そんな顔してたら、あの人心配するよ。姉上のこと、とてもとても大事にしているの知ってる」


 カテリーナは小さく笑った。


「そうね」


 弟はさらに続けた。


「でも、もし姉上を泣かせたら」


 可愛らしいけれど、どこかカテリーナに似た表情で笑う弟。 


「……その時は僕が許さないけど」


 父が苦笑する。


「お前では勝てないだろう」


「勝つよ!」


「だって姉上の弟だぞ」


 母が楽しそうに言う。


「ふふ……でも、きっと大丈夫よ。二人とも、お互いのことが大好きだもの」


 カテリーナは少し照れながら笑った。そして心の中で思う。


(……会いたい)


 そんなカテリーナの心情を察したのか、母が優しく続ける。


「それに、きっと向こうも同じ気持ちよ」


 カテリーナは小さく頷いた。


次回、最終回です。

さらに2話、後日談が続きます。

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