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爆美女悪役令嬢は処刑されたので、2度目の人生は幼なじみの伯爵令息と幸せになります  作者: 杜咲凜


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第17話 生徒会が終わった後で2

 放課後が訪れ、今日もいつもの中庭で二人はくつろいでいた。

 カテリーナは今日もマッティアの隣に座っている。


 目を閉じ、そのまま彼の肩に顔を乗せた。

 マッティアは動かない。

 本を読んでいる。


 最近は異国の本を読むことが多い。

 カテリーナには読めない言語のものも多かった。


 あとで内容を教えてもらうと、それが領地の発展のための知識だったりする。

 そのたびにカテリーナは思う。


(やっぱり、この人はすごい)


 肩に寄りかかっても、マッティアは動かない。

 ……いや、動けない。

 少しばかり緊張しているからだ。

 でも嫌がってはいない。


 ――むしろ。


 肩を揺らしてカテリーナの顔が落ちてしまわないか、そればかりを気にしている。


「……今日も大変だった?」


「そうね」


「無理しないでね」


 その言葉にカテリーナは小さく笑う。


「大丈夫よ」


 少しだけ肩に額をこすりつける。


「マッティアが待っているもの。ここがあるから、私は安心できるの」


 マッティアの顔が一瞬で赤くなる。

 カテリーナが見せる、婚約者だけの甘え方。


 普段は完璧な侯爵令嬢。

 爆美女だの、氷のご令嬢だの、いろいろな呼び名がついている。


 ――けれど、マッティアの前では違う。

 すべてをさらけ出せる。


 カテリーナはゆっくり目を開けた。


「ねえ」


 顔を上げる。


「この前のお菓子、とても美味しかったわ」


「ああ、あれ?」


「ええ。取り寄せてみたの」


 少し不満そうに言う。


「あれ、なかなか手に入らなかったわ。どうして言ってくれなかったの?貴重なお菓子だったなんて」


 マッティアが驚く。


「え、わざわざカテリーナが?」


「ええ」


 マッティアは少し照れながら言う。


「君が好きそうだったから」


 そして小さく続けた。


「言ってくれれば、すぐに君に渡したのに」


 カテリーナはしばらく黙っていた。

 それから、ぽつりと呟く。


「……やっぱり」


 マッティアが顔を向ける。


「あなたと、このままずっと一緒にいたい。離れたくないの。」


 また言ってしまった。マッティアは固まる。


「……それは」


「だめ?」


「だめじゃないけど……」


 耳が赤い。


「その……もう少し……待っててください」


 カテリーナは楽しそうに笑う。


「じゃあ、先に考えておきましょう」


「なにを?」


「家のことよ」


 真顔で言う。


「私たちが住む家、どんな家にする?」


 マッティアは真剣に考え始める。

 それが面白くて、カテリーナはさらに続ける。


「部屋はどうする?」


「え?」


「あなたは書斎が必要でしょう?」


「え、いや……」


「私は日当たりのいい部屋がいいわ」


 完全に未来の話だった。

 マッティアは少し慌てる。

 でも、止めない。


 カテリーナが今、少しだけ現実から逃げたいことを知っているから。


「家具は?」


「テーブルは大きい方がいい?」


「……二人なら小さくても」


「お菓子を置くから大きい方がいいわ」


「なるほど」


 二人は真剣に話していた。

 まるで、結婚前の恋人のように。


 ――そのとき。


 ガサッ。


 木の向こうから声がした。


「……え」


 振り向くと、そこには生徒会のメンバーが数人いた。


 上流貴族の子弟。

 そして王太子派の人間。


 全員が固まっている。

 目の前には、爆美女の孤高の令嬢カテリーナ。

 そのカテリーナが、甘えている。


 マッティアが最初に気づいた。


「……!」


 顔が青くなる。


「カテリーナ」


 小声で言う。


「見られてる」


 カテリーナはゆっくり振り向いた。


 一瞬、表情が変わる。

 柔らかい顔が消える。

 完璧な微笑み。


「あら」


 立ち上がる。


 そして自然にマッティアの腕を取った。


「場所を変えましょう」


「え?」


「ここは落ち着かないわ」


 そのとき、一人の男子生徒が前に出た。

 王太子だった。


「カテリーナ」


 カテリーナは止まる。

 ゆっくり振り返り、優雅に微笑む。

 でも、腕はマッティアに絡んだままだ。


「王太子殿下、何か御用でしょうか」


「……今、楽しそうだったな」


 ほんの一瞬、カテリーナの表情が柔らかくなる。

 けれど、すぐに戻る。


「ええ」


 そして、マッティアの腕を少し引き寄せる。


「大切な時間ですので」


 満面の笑みを浮かべる。これでもかというほどの迫力を乗せて。


「失礼いたします」


 そのまま二人は歩き去る。

 王太子はその背中を見ていた。

 そして小さく呟く。


「……あんな顔をするのか」


 そのまま中庭を離れ、二人は校舎裏の小さな広場へ向かった。

 王太子に見られたというのに、カテリーナはまったく動じていない。


 まだマッティアの腕を組んだままだ。

 一方でマッティアは完全に動揺していた。

 顔は真っ赤のままで、場所を離れてからさらに焦り始めている。


「……見られてた」


 カテリーナは平然としている。


「問題ないわ」


「え?」


「だって……」


 カテリーナは少し笑い、そして耳元でささやいた。


「――あなたは私の特別な人でしょう?」


 マッティアがさらに慌てる。

 それを見て、カテリーナはくすっと笑った。


 その笑顔は、氷の令嬢ではなくただの恋する少女だった。

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