42、やばい、やらかしてる。
前回までのあらすじ。
シエル様のことすっっっっっっごく。忘れてた。
以上。
「……」
ぎっぎっぎ……と機械の音が聞こえるように首を向ける。
笑顔の天使は笑顔のままだ。
「シエル様あの…」
「なあに?」
「あの……」
気のせいか?心なしか表情が固く見える。ば、ばれたのか?ばれたのか???
「えっと」
「別に……ぼくってカッコ悪いなぁって。君が王女でどれだけスゴいかわかっていたはずなのに……なのに僕だけの気持ちで…困らせちゃった。王女である君がこの場所にいて危ないはず……ないのにね……」
寂しそうに言うシエル様は元気がない。
「シエル様。心配して、下さっているんですよね」
嬉しいです。
ここには、誰も心配する人がいないから。
ラナックもアイリーナもエルウェンもたぶんユスタですら、この城の中ならば私を心配することはない。
え?メイリーンなら大丈夫でしょ?貴女の隣が一番安全なくらい!と、誰もがくちを揃えて言うくらい。心配なんてするだけ無駄なのだ。
「心配っていうか、自己嫌悪?」
いや、されてなかったわ。やっぱり誰にも心配されない。悲しきことよ。
「僕、そういえばアイリーナ殿に用事があったんだった。ちょっと先に戻ってるね」
「え?あ、はい」
急にどうしたんだ。まぁめちゃくちゃありがたいので、特には言及しないでおこう。この後の取引とかもしやすいし。ひどいときはグロ注意のときもある。シエル様はR17指定はまだ見れない年齢だった気がするので、このまま去っていただいた方がすごく良いだろう。
「私だって忙しいんだけど……?」
急に執務室にきた、仮面天使をキッと睨み付けるが、当の相手は窓の外をぼんやりみている。
「彼女の側に僕がいたら仕事進まないでしょ」
「呆れたわ。自分からついてっておいて……」
「辛い顔をさせたいわけじゃないんだ。あんな……まるで悪魔をみたかのような表情……」
天真爛漫な彼女は嘘をつくのが下手だ。姉君のように振る舞うことを心掛けているようだが、慣れていないのかうまくない。そこもかわいいと思うし、そもそも天真爛漫な彼女の本来の姿こそ、それはもぅ愛らしいと思うのだが、どうやら彼女はそれを隠したがっている。
「下手だからこそ、扱いが難しい」
そう言いながらシエルは長いため息をもらす。
気づいてない振りをするのもいい加減疲れてきた。気づいてない振りでは一向に彼女の本心に触れられない。いっそこの姉君のように隠すことが上手であれば。
「姉妹なのに随分と違いますね」
「あのこは素直でいい子だから」
ふふっと勝ち誇った勝ち気な表情はメイリーンと似ていた
「あぁその辺りは貴女も一緒ですよ。この間の騒動をみて、そう思いました。すみません。訂正します。そっくりですね。そういば、素でいる時の表情や、仕事熱心なところ。姉妹同士で大事にしあっているところ。すごく似ていますね。まるで双子のようだ」
ピクリと、彼女の体が反応した。
「え?」
暫く呆然としていたあと彼女はわなわなと震えだす
「私が?この私がメイリーンにそっくり?聞き捨てならないわね……?それってどういう意味なのかし」
「お姉様!」
ばあん!という扉の音が鳴り、メイリーンが入ってくる。
もちろん、ノックくらいしなさいよ!という姉からのツッコミも入っていた。
「どうしたのよ。メイリーン…」
「と、シエル様か。吃驚した~」
「僕の方がびっくりしたんだけど」
本当にシエルは驚いていた。足音も何もなく急に扉音と共に入ってきたからだ。自分が王族ともあって常日頃から人の気配には敏感である彼が、全く気づかないというのは、相当珍しく思った。
「暗殺者でも入ってきたかと思った」
「それは私の台詞ですよ~お姉様の執務室に気配が多かっ……あ。
そ、それで、ですね!」
メイリーンは自分の発言をごまかすかのようにつらつらと調べたことを報告した。
雇われた賊は、みんな大切な人を人質に取られていること。
相手は誰かはわからないが、あの日の招待客で来なかった人がいるのではないかということ。
姉に調べて欲しいことは全て伝えた。
全部ラナックが調べてくれたということにして。
すまねぇラナック。後で新しい工具かってあげる……屋根がこないだの豪雨でいかれちまったとか言ってたもんね。手伝わないけど工具だけかってあげるから許してくれ…。
「じゃあ私、ラナックに手伝えることないかきいてくるから!」
そう言ってメイリーンは扉の外に出ていった。
「そこは、隠さないんだね」
「そこは、そう言っちゃうのね」
二人の苦笑いだけが後を残した。




