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41/51

41、やばい。やっちまった

 デートにしては、甘い雰囲気はない。

 デートにしては、甘い場所ではない。

 デートにしては、甘いムードもない。

 デートにしては、甘い言葉はない。


 つまり、これはデートではない。


 そぅ、デートでもないのにシエル様がとなりにいる。いつもメイリーンはその状況が起こると気ひとつ抜けない。


 ランプを片手にシエルは地下牢と続く階段を降りる。どうも表情は重い。ちらりとも笑わなければ、メイリーンに声をかけることもしない。

 メイリーンも下手に声をかけて、自分のことがばれると思うとうまいこと声をかけれずにいる。ただ彼の後ろを歩く。


 薄暗い階段を降りたところにラナックがいた。此方に気づくなり当たり前のことを疑問思った

「メイリーン殿下……どうして、彼とここに…」


 いや、もぅそれ私の台詞ー!

 なんっっで?話きくの私一人でいんだけど!

「アイリーナに…」


「あぁ……」

 一言で察するラナックはやっぱり優秀な部下。

「では此方へ」

 案内しながら灯りの点々とした薄暗い牢を歩く。

「俺たちが聞いても手紙をもらったとしか言いません。いつ、どこでもらったか忘れたとしか。殿下達で何か聞き出せればそれに越したことはありません」


「そう」

 まぁ、実際それ以上聞けることがないんじゃないか?言い出しっぺは私だけど、一体何を聞いてこればいんだろうか?


 考えているうちにメイリーン達は扉の前にくる。牢の中でも尋問室はよくある鉄パイプの連なる場所でなく。完全な部屋だ。話の内容が外に聞こえないようになっていると。伝えている。

 実際は全然外に聞こえるのだが。そういうはりぼて意識が大事らしい。


「メイリーン殿下、シエル殿下何かあったらお呼び下さい」

 お辞儀をしながらラナックは立ち去る。


 おいていかないで……

 というか、何かあってもお呼びするようなことって起きないから…私強いから…むしろ呼ぶなってことじゃね?とすら思える。

 後、ちょっと笑ってたでしょ?見えてるからね!


「今度は王女様と王子様か。俺に話せることは全部話したぞ。どうせ殺されるんだろ?さっさと殺せばいい。」

 へっとリーダーっぽい人は、そっぽを向きながら話す。


 それに噛みつくように返したのはシエル様だった。

「まぁ僕はあと3回くらい貴方を八つ裂きにしてやりたいところなんだけども、でも、それは彼女がお前と話してからでも遅くはないから」

 そう言いながら、出番を譲ってくれた。


 シエルからの視線を受け取り、ごほんと咳払いした後、メイリーンはリーダーっぽい人に向き直る。

「ねぇリーダーっぽい人。まだ言ってないことあるでしょう?」


「その呼び方、やめてくんねぇかな?俺はガラルだ。手紙の内容ももらった場所も忘れた。これ以上俺から聞き出すことあんのか?」

 リーダーっぽい人…ではなく、ガラルは鼻で嗤った。もうきっと彼は何回も聞かれているんだろう。「忘れた」とは都合のいい言葉。要するにお前らにはしゃべる気はねぇと言うわけだ。

 メイリーンは今聞いたことだけでも、彼について考える。


 こういう人間は2パターンある。何もかも失っても構わない、スリル大好きスリル君と、人質を取られてやらざるを得なかったかわいそう君パターンだ。


 この人はどうだろうか。

「ガラルはスリル君それともかわいそう君?」


「あぁん?」


「何が怖いの?誰に何をとられているの?」

 考えてみたら直ぐにわかること。スリル君はつるまない。王女を拐うというのは命懸けだ。そんな中に足手まといは必要ない。それにスリル君はスリルを味わうために技術も持っている。この人達はそうでもなかった。きっとリーダーっぽい人は誰かに頼まれただけじゃこんなことしない。彼にも何か事情があるのかも。

「私雇い主の性格当てて見せようか」


「あん?王女殿下が何を言う?目星はついてんのか?」


「まぁわかんないけど。考えたら、わかる。ちょっと待ってね」

 メイリーンは昨日の日を思い出す。

 パーティーで姉はどうやって薬の盛られた杯を手にしたのか。まずはその方法を考えてみる。まあ簡単だろう。1つは使用人に扮すればよい。もう1つは貴族として、姉と直接話し、杯をとる際に直接入れたか。

 次に考えるのは計画。犯人の立てた計画はシンプルだ。王女に薬を盛り、一人になったところをメイドに扮した賊が拐う。しかし、シンプルだがらといえど、王女を拐うとなるとなかなか難しい。逃走手段の手配というものは結構難易度が高いのだ。拐う相手が王宮からの王女となれば危険な道は通れない。万が一見つかったら最後、すべての兵が追いかけてくるからだ。故に案パイ作る必要がある。逃走までのルート、逃走馬の確保。万が一のときのプラン。

 実際私は会場ではなく、王家専用の通路で倒れた。あの場所に入るには扉の前で見張っている兵を自分の兵とすり変えるか、賄賂か、はたまた注意を引くかのどちらかだ。

 さらに疑問は続く、

 何故私を連れ去ったか。あの日狙われたのは姉である。姉の誕生日パーティーに姉を狙った。主役がいなくなるというのは結構大胆。でも、明確に姉を狙っていたというのがわかる。私と姉はパッとみにているけど姉の取り巻きなら間違えない。(姉の方が儚く美しいから)なのに、何故か私を連れ去った。

 知らなかったからだろう。グラスを交換したことを、私がパーティーにいることを。

 最後に集められたメンバーだ。緻密な作戦を立てた割には実際に集められたメンバーにより計画が崩れている。それに、私と対峙したとき3人衆は仲が良くなさそうだった。元々グループではなく、個々に集められたのだろう。

「知将タイプでしょ?」

 このタイプの敵とならたくさん戦ってきた。ただまあ闘争の結果。基本的には惨敗が多い。何故なら相手の基本が姉だからだ。だが今回は姉が相手ではなく。基本以外の相手。つまり私が勝利を修めてきた相手である。



「手紙で最初は来たけど、その後依頼人の代理人みたいな人と会ったでしょ?そこで初めて他のメンバーと会った。違う?」



「そこで、貴方達、脅されたでしょ?」

「何を、とられたの?」

「私が取り返してあげようか?」

 相手が驚くようにこちらをみる。これは交渉成立だろう。

 ニンマリとメイリーンは笑う。




 こゆ戦略をとる人はね。注意深いんだけど己の作戦が自身あるんだよ。自分では動かず駒を操る知将タイプですな。兵法を読むと知将タイプはよくこういう案パイ作戦をまずとってくるからよくわかる。実際にここ数年でそういうタイプの知将とは何回かぶつかった。暗殺仕掛けてくるやつは結構知将タイプか多い。奴らは総じて、成功が重なるにつれてスキが多くなる。

 しかし、今回彼は誘拐事件を失敗に終えた。次に彼が望ましい手は、何も話す前に手駒が死ぬこと。


 うーむ。しょうがない。この人には死んでもらうしかないなぁ。



 それにしても、今回の知将報酬額からしても、かなりの財力がある。

 でも間違えたことを考えると、雇い主は来ていない。


 姉の誕生日パーティーに来ない男なんてそうはいない。だって姉だよ?王女だよ?招待状回ってたら普通くるでしょ。

 つまり…要点をまとめると…

 ・城の配置図を手に入れる

 ・財力がある

 ・人員にコネクトできる術がある

 ・当日会場にいなかった


 この辺りで絞れそうなものを姉に絞ってもらおう。


 ついでにガラルには死んでもらって、大事な人を取り返さなきゃ。生きたまま殺すって難しいんだよなぁ。戸籍消さなきゃだし…代わりの死体探さなきゃだし…。

 あぁ~やることいっぱいあるなぁ。もぅ全部ラナックに放り投げようかなぁ。さっき笑ってたもんなぁ。そうしよう。



 ふぅ~と長いため息をついた後に。

 はっと思い出したかのように、メイリーンはその存在を思い出す。

 やっっっっっっっっっっっっっば!!!!

 ものすごく忘れてた。

 これっぽっちも思い出さなかった!もうちょっと視界に入るかしゃべってくれてはどうなの!!シエル様!

 やばい私、どんな感じだった?

 どんな様子だった!??



 怖くて、恐すぎて、メイリーンは暫く動くことができずにいた。

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