37.やばい。しんどい。
やけ酒ね!やけ酒!!
あの後憮然とした様で椅子に座っていた。様子をみた姉が明らかに困惑した顔をしていたが。気にすることもできなかった。 急に肩を叩かれ
「そういうときはね!やけ酒すんのよ!あと空元気をだしなさい!パーティーのときだけでいいから!」と言われ、気づいたら会場にいた。
空元気て自覚しながらやらなきゃいけないのか?
そう思ったが、は?仕事でしょ?一国の王女でしょ?みたいなことを姉の笑顔が語っていたので、やるしない。
パーティに来たメイリーンは適当な飲み物を手に取る。
あぁこのオレンジおいしい!甘くてでも酸味もあるどこの品なんだろう!酒じゃなくてもおいしいんだね!うん!私元気!元気!空元気!いぇい!!
…はぁ……空元気ってなんだろう…。
やけになりすぎたメイリーンは酒でもジュースでもなんでもよかった。とりあえず気まず過ぎてシエル様と目を会わせたくない。自分が一方的ひどいことを言う。なんて、幻滅されてもしかたないのだ。
でも情報戦でシエル様と一緒にいなかったら自分がここにいる意味などない。
どうしたもんかとふと、姉の方をみる。談笑中で、
アイリーナも手にしてるのはオレンジジュース。
ちょうどよいどこの品かアイリーナに聞けばわかるだろう。何せ彼女は城内で知らないことなどないらしいから。
意気揚々と姉の方へ向かう。
いや、おかしい、何かが違う。メイリーンは何故かそう思った。
違和感がどこにあるかを見るとオレンジジュースだ。
減って……ない。
あのモテる姉は杯を渡されたら必ず乾杯をして飲む。そしてこれおいしいですわと綺麗に笑って魅せる。男を虜にさせるための彼女の手口だ。
そう、だから、減ってないのがおかしい。
オレンジなら彼女も飲むはず。
……飲め……ないのか?
ボーイに頼んで新しくオレンジを貰う。談笑が途切れた隙に姉に声をかける。
「お姉様。乾杯しましょ?」
「メイリーン……?」
自分の持っていたグラスを渡し、姉用のグラスを私がもち乾杯をする
「え?何するのやめなさっ!」
小声での姉の静止も聞かず一口飲む。
ごくり
先程飲んだオレンジにはない味。毒かと思っていたがアルコールの度数が高いのかもしれない。舌がしびれる感じもないし、即効性もなさそう。これなら症状が後ででてもなんとかなりそう。
姉も私が渡した杯は飲んでくれた。
「アイリーナは私を守ってくれるでしょう?乙女的兵法で!」
と、姉に声をかけると。
「ばかっ…」
うーん。これは5時間コースかなぁ?お説教やだなぁ……。
お酒にあまり免疫がない姉にはしんどいかも。
私は……ほら、戦で勝つと祝杯やらなんやらで、中身40のおっさんだと思われてるからさ。鎧かぶりながら酒も飲むよ?少しだけどね。だってめちゃ暑くなるもん。
まぁちょっと強いお酒だったってところかな。
なんて考えていたら影響が出たのは30分後。
あ、これしんどいな……足下がおぼつかない。目の前がぐらぐらする。姉はまだ接客中…あぁ一緒にいる男性は新たに姉ファンクラブの人間になりそうだ……。おめでとう……。
姉に頼るのは難しい。ではシエル様は?
そう思い彼を見るが父と談笑中だ。まぁ父との談笑であればいつもの自分なら空気も読まず話かけに行くが…
いつもの私…なら。
そう思い足を止める。
シエル様とはまだ話にくいしなぁ。
まぁ私がいなくなっても滞りなくパーティーは進むだろうし、廊下の方にでよう。
「私、ちょっとお色直ししてきます」
「私、ちょっとお色直ししてきますわ」
自分が言ったのと同時に姉が同じ事を言う。つまり私の異変に気づいたのであろう。
姉は私にちらりと目配せしながら廊下へ行った。
あ、はい、来いと。そういうわけですね。お姉様。
心許ない足取りで姉の場所にいくと。あぁやっぱりという剣幕で姉が仁王立ちしてた。顔は般若である。綺麗な顔が台無しだよと、声をかけるとキレたように頭を捕まれる。こめかみがとても痛い。
「何考えてんのよ!このばかっ!っっばか!なんであんたはいつもそう!考え知らずで……!能天気で……!毒だったらどうするつもりなの!?」
あぁ。怒ってるなぁ。心配されてるのかもしれないなぁ。
「アイリーナ。私を守ってくれる、でしょ?」
先程と同じ事を姉に言う。ちょっと悔しそうな顔をしたアイリーナはいつもと同じような声色で
「当たり前でしょ。水持ってくるから大人しくさててよね!」
「じゃあついでにユスタも呼んできて。門のところろにいるから」
「今日はそこの警備なわけ!?なんでそんな遠いところの配置につかせたのよ!本当ばかなんだから!」
足早にアイリーナはユスタを探しに行った。
あぁー。立ってるのもしんどいなこれ。座ってもいいかな。ほんっと何いれたんだこれ。
「気分が優れないのですか?王女様。でしたら私が介抱を……」
侍女がちょうど通りかかってくれた。ありがたや。うちの城の侍女たちはね、私が起こす想定外の出来事になれてんのよ。悲しいね。また妹王女が奇行をした!って後で言われるんだろうね。あぁ悲しい……。
「あ、りがと」
差し出された手にメイリーンは手を伸ばした。
うそ、でしょ?
うそと言ってよ。
持ってきた水は目的を果たされることなく、その場に落ちる。輪になり広がりカーペットに染みになっていくが、誰も気を止めない。
今宵は城で大規模なパーティーがある。庭にも会場にもテラスにも人はわんさかというほどいるだろう。
でも、メイリーンが先程まで一緒にいたここは、王家専用通路。当然ながら、誰も来ない。
だからこそ、今誰もいないということがわかる。
私に知らないことなどないはずなのに……
何故いないの?どうしてそれがわからなかったの?
「メイリーン!返事をしなさいよ!あんた、私をからかうなんていい度胸じゃないのよ!何考えてるの!」
10分よ。なんで、大人しくしていられないの……。
「アイリーナ様……」
「大丈夫ですよ。お嬢様は私が必ず見つけます」
メイリーンの侍女が力強く頷き、笑ってみせるが、どうにも今自分はその笑顔につられそうにない。
「何が……あったの……ですか」
どうやって入ってきたのか、現れたのは妹の婚約者。彼は何故目を離したと罵るだろうか。
アイリーナは自分の頭を整理するために。先程の事を話す。
「成る程。狙われたのはアイリーナ殿なのですね。それはメイリーンもご存知なのでしょうか?」
「知ってると思うわよ。あの子から気づいてくれたもの。なんであの子が連れ去られないといけないの!」
「メイリーンが貴女のふりをしたのかもしれないですね。何かいってなかったのですか?」
「何も……ただ、私を守ってくれるでしょって自信たっぷりに……」
「では守ってあげましょう。僕も彼女を守るためにいるのです。力を合わせて直ぐに彼女を見つけますよ」
「何かつかめた情報はあるか?」
シエルの従者は抑揚のない声で話す
「えぇ、門番やその頃近くにいたメイドたちの話を聞くと20時頃でた馬車は3台。西へ2台南へ1台だそうです」
ミエルダが続く
「家紋は確かラグナル家と、スピチル家、それとブランド家ですね」
「しかし、各家が王家に牙を向けるとは考えにくい。馬車が盗られたのでしょうか。この家のものはもう会場にいないのか、ユスタが探しております。」
「馬車だけでなく取られた馬などいないだろうか。僕なら小柄なメイリーン様一人拐うくらい、1頭いれば十分だ」
それぞれが話合ってる中。いつも揚々と話している彼女が珍しく発言していない。そのことに気づいた騎士が、彼女のもとへ寄る
声をかけるまでもかく彼女は騎士のけはいに気づく。
「…………」
「ラナック……どうして……誰も責めなかったのかしら……私のせいで、メイリーンが……」
「それは……一番傷ついているのは誰か、ということがわかるからですよ」
「アイリーナ殿下、メイリーン様が拐われたのは確かな事実。ですが、彼女は自信たっぷりに、貴女は私を守ってくれると言ったのでしょう?信じているんですよ。メイリーン様も私たちもアイリーナ殿下の事を」
「傷つくのも、反省も両殿下とも後にしましょう。二人で帰ってきた時に騎士代表で、年上の俺が首覚悟で貴女方を叱って差し上げます」
「今は、涙をふいて前を向いて下さい。共にメイリーン殿下を助けに参りましょう」
「ラナック…」
「ありがとう」
「でも、助けに行くのは貴方たちにお任せするわ。私は私にできることをするわ。昔メイリーンに言っといて私がやらないなんて話にならないわ」
「あと、私は泣いてないわよ?不敵に笑ってるでしょ?」
「……えぇ。俺の見間違えでした。」
メイリーン。私はできることをするから。あんたもしなさいよね!
そうじゃなかったら5時間コースじゃすまさないんだから!!!




