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31/51

31,やばい。ん?やばくない?やっぱやばい。

「それでお嬢様を小屋に置いてきたのですか!?信じられません!あり得ません!!だいたい風邪ひいらたらどうするのですか!夏だとはいえ雨に濡れては風邪をひくのですよ!こんな方がお嬢様の婚約者だなんて、私許せませんわ!!!」

ユスタはきぃきぃと自分より身分が高く、ましてや王子であるシエルに苦情を申し立てている。


「僕だって、嫌だったよ。じゃあユスタさんはどうするのさ!」


「はぁ?そりゃ、お嬢様の命令には逆らえませんので貴方と同じ事をしましたけど!?」


「待って、僕なんで怒られてるの!?」

先ほどの雷雨は多少収まり、そろそろやみそうではあるが、それでも微妙に降り続ける雨の中、2人のケンカ声が響く。

その後ろを3匹の馬と3人の騎手がかける。そして1つの馬にだけ、2人乗りしている。誰も鎧など着てはいない。


4人の内訳は大方いつものメンバーである

「ユスタ、殿下を攻めても仕方ない。メイリーン様はいつでも無事であった。無謀な事はしないお方だ、信じようぜ」

とユスタに声をかけるのはお馴染みの騎士ラナックである。


その後ろを無言でかけているのはシエルの従者。彼は一緒に酒を飲んでいたがどうやらザルのようで短時間でワインを1人で3本開けていたが、緊急事態を伝えるとすぐに馬に乗ってくれた。

「俺は酔っていても、酔っていなくてもそう変わらないんだなぁ~、いつも全然仕事しないからさっ」

と颯爽と駆けはじめたのは見習いたいものがある。ちなみに他のやろーどもは、この従者とのみくらべしてもれなく全員潰されている。

のみくらべ+ワイン3本て正直ほんとにすごい。アイツの肝臓ヤバい。


そして、3人目は同じく居酒屋でのんでいたあの花屋の青年である。

背中の後ろで

「ユリアぁ。今行くぞユリアぁ」と顔を真っ赤にしながら叫び。たまにうえっぷ……といった馬に酔った声が聞こえる。


頼むから俺の背中にだけはリバースすんなよ。その馬の騎手、ラナックは願わずにはいられない。

そして殿下が戻ってきてから、こいつが行く、連れてけないの争いをしはじめ、ずいぶん時間がたってしまった。現在は21時30分。


ラナックが思うに

ゴリラ王女が、しつけられた犬のように、大人しく待てができる訳がない。


そんな事ができていれば彼女は今頃英雄王までのぼりつめていない。

婚約者に無理はしないと誓ったのだから、無理はしないだろう。しかし、大人しくすると誓ってはないから、大人しくしてはいないだろう。

もう一度いう。彼女は犬ではない。ゴリラ生まれのゴリラ育ちのゴリラ王女様である。




そして、ラナックの予想は

扉を開けたあと

すぐに当たったとわかった



「殿下、下がっていて下さい」

ラナックは案内された小屋に一番に入ろうとした。


入ろうとしただけであって

「お嬢様ー!!ご無事ですか!!!」

と、実際には叫びながら入った侍女が一番のりだった。



「あ、えぇ。ユスタ私は無事よ。来てくれてありがとう。待ってたよ」

「早速だけどこのかた達運んでくれる?」

そう言ってゴリラ王女が指指すのは。ロープで縛られ気絶している大男3人だ。


大事な事だが、大男3人だ。

ちなみに彼女は怪我一つ、返り血も一滴もついてない。なんなら髪も服も息すら乱れてない。夕方に別れた姿のままである。多少雨で濡れたのか泥ついた感があるのみだ。


この光景に目をぱちくりさせてるのはもちろん彼女の婚約者。

そして、当然誰もが思うであろう疑問を彼は口にした。

「メイリーン??この1時間たらずで何がおきたの?」


「・・・出口を、見張って、まして。そしたらたまたま、そっから男が出てきたので斧で対抗したらこんな感じになっちゃいました。出てくる所だったので相手も無防備でして!!」


「3人とも?」


「さ、3人とも!」


「この人達刃傷もあるよ?」


「じゃあ争って逃げてきたのかもしれませんね!」

すごく目が泳いでいるが、彼女は概ね答えを用意していたのであろう。思ったよりかはすらすらと殿下に嘘をついている。(ラナック談)

「ほ、ほらシエル様に貸していただいたこれ。使ってないでしょ?ほんとに、たまたま!ラッキーでした!」


「ふーん。まぁそういう事にしといてあげてもいいけど、メイリーンは怪我してない?本当に無理しなかった?」心配そうに婚約者を見つめた後。手や首もと腰元をに手を当て隅々まで視線を巡らす。


「え?無理は全然しませんでした!」

メイリーンはそこだけ目を泳がす事なく答える事ができていた。


「…………そぅ。無理はしなかったんだね。それならまぁ。いいか」ほっとしたような、表情でここでようやく殿下の表情がゆるむ。

「それで?後は何するの?」


「え、えぇと、この保存庫の下、道があるんじゃないかなぁって、もしかしたらユリアさんとか、今まで拐われた人この中にいるんじゃないかなぁとか、人身売買とかやってたのかなぁ。王女として許せないなぁとか!いろいろ思いまして!」

ラナックは一瞬メイリーンと目があった。

あぁ。なるほどつまりこういうことなのだ。

この1時間弱の間に、ゴリラ王女殿下は細工を突破したのち、地下に道を繋がっていることを発見した。

その先で今ユスタに運ばれている3人の大男をさくっと倒し事情を聞いたところ、そいつらが今回事件の犯人であったということがわかった。さらに話を聞くと、彼らは若い女性や子供をさらい人身売買を行っていたとわかる。そのまま地下を探索すると、どうやら拐われた人間らしき人がいた。

その後彼らを偶然倒せたと下手な嘘をつくために、彼らを引きずり、こちらまで持ってきたという事になる。

地下へ続く道に真新しい、何かを引きずった血の後をみる。

ラナックは確信できた。

この予測も当たっているだろうと。




そして先ほどのシエルからの質問の解答。

「無理はしていない」ということだったが、嘘が下手なメイリーンが自信を持って言えてたところをみると、彼女に取ってこれだけの事は無理なことではないのだろう。


流石は我等が英雄王だな……

「後は俺がなんとかしておきましょう。英雄王とまで言われてますし。この状況、任せていただきたい。王女殿下、通路の発見及び偶然なれど3人の男性を見つけて頂いてありかどうございます。しかし、大変お疲れな様子、いち早く殿下とお戻り下さいませ」


流石ラナック!!!やっぱり私の片腕!

私の言ってる事わかってくれた!後は拐われたお姉さん達しかいないから!よろしく!


「そ、そうさせてもらおうかなぁ?」

私は領主にこの大男届けなきゃいけないしね!


「そしたらメイリーンは僕と帰ろうね。雨も上がったし、ちょうどいい風が吹いてて気持ちいいよ」

シエルは、強引にメイリーンの手を引き、行きと同じようにメイリーンを馬に乗せる。

「ね?一緒に帰ろ?」


「は、はい。一緒に帰りましょう」







「…………」

「…………」

ぱかぽこぱかぽこと馬はゆっくり歩く。乗り初めてしばらく、シエルは無言だった。


メイリーンは先ほどの事に突っ込まれることも怖いためへんに話しかけれない。


なんだろう。すごく空気が思い。心なしか風もベタついてくるような気がする。シエル様の言ってた気持ち良い風どこ?そんな感じだ。


……どうしたらいいんだろ



「今回、僕、良いとこなしだったね」

不意に頭上から声がかかる。


「え?」


「たくさんのイベントがあったけれど、君の役には立てなかった」


「……?シエル様は手伝って下さいましたけれど?それに」

凄く役に立ってくれた。だいぶ優秀。

森での捜索は彼がいなかったら、青年の話は聞けなかったし、小屋での鍵ぶっ壊しは潔くてかっこよかった、そして人を呼んできてくれたし。

何より緊張感の中で一瞬で過ぎ去ってしまったが、小屋で物音がした時、彼は自分をかばってくれた。今思い返すと非常にときめくものがある。

すごく心地よい気分で思い出に浸りはじめた時、全身が凍りつくような感覚に襲われる。


それはシエル様の一言だった。







「ねぇ、メイリーンはいつまで、僕に嘘をつくの?」









「……」

思わず見上げた先、澄んだ瞳と目が合う

馬の上で、逃げる場所など何処にもない。

何、に……対して……?

今回たくさんの嘘をついた。

今日1日の中で何回シエル様に嘘をついたのだろう……。

小屋でのこと?私が最初からここに来ていたこと?私が英雄王であること?それとも……

「あ、あの、わたし……」

何を言えばいいのかわからない。どうすれば嫌われずにすむのかわからない。でも今さら本当の事など何一つ言えない。

「…………」

目が泳ぐ、どこを見ればいいのかわからない。言葉も上手くでない。

どうしよう?どうしたらいいの?




「…………」

「ほら、やっぱり怪我してる」

困ったように笑うシエル。シエルは冷たくなった左手をとった。彼の手は暖かい。



「これは、その」

こんな傷あったんだ、3対1で争っている間についたのだろうか?服で隠れてたのに何でわかったんだろ。

「対した傷じゃあない……ですよ。」

ほんとに全然今まで気づかなかったくらい。きっとラナックやユスタでさえ気づかないような小さな傷。嘘ってこの傷の事か……なんだ、良かった。



「それでも、隠されたら、心配するよ」

「そんなに、困った顔をしないでメイリーン。嘘をついていてもかまわないけど、できれば言ってほしいと思うこともあるんだと、伝えたかっただけなんだ」

先ほどとは違い、優しい笑顔だ。天使でもイタズラめいてもなく、本当優しい顔。






「それじゃメイリーン。また明日」

重ねられた唇に、はっとした頃。いつの間にか左手は手当てされ、いつの間にか部屋まで送られていた。




メイリーンは部屋に入りそのままベッドの上に倒れこむ。

今日一日でたくさんの事があった。

絶望したり幸せに浸ったり……

ほんとに濃い一日であった。



その中でも、メイリーンは一番残る言葉を思い出す……。





「ねぇ、メイリーンはいつまで、僕に嘘をつくの?」





本当に私……いつまで…………嘘をつくの?


後何回……シエル様に嘘を重ねるの?






先ほどのシエルの質問に








メイリーンはまだ解答を出せずにいる



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