30.やばい。これはまじでやばい。
雷雨である。
ちなみに姉のではなく。本物の。不吉な雲が青空を覆い。ゴウゴウと風を立て、鳴りやまない雷が永遠音を立てる。
前回から話とんでない?と思われるかもしれないが、安心していただきたい。飛んでない。
結論からいうとものずこい雨が降ってきた。バケツをひっくり返したような雨。
冒頭でのべたように雷雨である。
順をおっていこう。
メイリーンのは心地よい揺れと暖かさに包まれて、気がつくと意識がなかった。
しばらくすると耳元で、声がする。
「メイリーン、ついたよ。ね?おきて。まぁ僕としては起きなくてもこのままでも別にいんだけど……朝まで一緒になんてすごく良いよね?」
シエル様の声……だ。そうだ私シエル様と……。
はっと目を覚ます。
「シエル様!」
の、方をみるとすごく近い。
「おはよう?」
「……っっっ…はよ、ざいます、…私、ねて……寝てました?」
思わず目線を反らしてしまう。
「15分くらいだよ」
……死にたい。
「まぁまぁメイリーン。ほら、ついたから。君の来たい場所」
絶望しながら、森のふもとで手がかりを探していると、急にお天気さんか気分を翻してどしゃ降りの雨に見回れた。
雨に戸惑ったが幸いにもシエル様が森の入り口付近に小屋を見つけて、そのまま豪快に鍵をぶっ壊して入った。
大事だもの致し方ないよね。
王女と隣国の王子だもの致し方ないよね?とシエル様はすごくきらめいた笑顔で扉を壊していた。
私も雨は寒かったし、
致し方ないですね。とおもった。
なんなら、後で私のポケットマネーでめちゃ豪華な小屋を立て直してあげるから今は許してくれ。
小屋には誰もおらず、斧や縄など森林伐採道具などが揃っていた。
椅子もなければ机もない、ミニログくらいの大きさの小屋だった。
雨がやむまで座ってようかとシエルは座り出した。服から水がポタポタとこぼれるほんとに相当な雨である。
「べったべたになっちゃいましたね?ほらみてください。服が絞れちゃいますよ。足下も水の入ったバケツに靴ごと足を入れたみたいな感覚です。こんなに濡れること滅多にないですよね。そいえばラナック達飲みにいっちゃったけど大丈夫かな」
「人の心配してないで、自分の心配してほしいなぁ。なんで僕の目の前でスカートそんなめくっちゃうかな?服絞るなら僕の視界の外でやってくれないと心の平穏が保てないよ」
「でもほんとにべったべたでして……絞らないと風引いちゃいます。シエル様のも手伝いましょうか?」
「そんな発想やめてくれる?というか、僕の前でむやみに足さらすなっていってんの、わかる?いや、わかんなくてもいい。とにかくしまって?」
すごく有無を言わさない空気のシエル様をみた。ど、どうしたのシエル様……。
「風邪引いたら僕が毎日でも看病に行くからとりあえず足しまってくれる?淑女は足を晒さないと教わらなかった?」
「あ、なるほど、たしかにそうですね」
残念ながら私は普通の王女ではなく、戦争の英雄王とか言われちゃうくらいのおてんばである。つまり、おてんば王女は常に短剣を持っている。今回はシエル様がいるし太腿にバターナイフくらいの超小型を仕込んでいるが、それをシエル様に見られるわけにもいかないため、膝上少々くらいしか上げたつもりはなかった。それでも淑女はダメらしい。
っていうか怒ってる割には足下をすごく見られたきもすけど気のせいかな?
まぁひととおり絞ったしいいか。
メイリーンはシエルの隣に座ることにした。
しばらく他愛のない話をした後、メイリーンはふと思う
「今何時頃なんだろ……」
メイリーンは窓の外を眺める。窓の外は一向に雨足が引かず、外は一定時間立っては光り、凄まじい音をたてる事を繰り返している。
「そいえば僕時計持ってたんだった。メイリーン僕の上着の胸ポケットに入ってないかなぁ?」
そういえば上着どのタイミングで借りてたんだろう。いつの間にか私の肩にかかってたなぁ。できる王子って違うなぁ……。私もこんどさらっと部下に甲冑を貸してあげてみる?いや、重たいし、どこを貸すんだよってなるか、やめとこう。
いろいろと考えとながら、ごそごそポケットを探すと、コロッと硬いものがあった。取り出してみると、シエルの時計だった。薄暗くてよく見えないが銀細工が施してあり品のよい品物だ。
流石王子持ってるものが違うなぁ
「8時半だ……。もうそんな時間なんだね……。うーお腹すいた…」
ユスタ達心配してないかなぁ。
「だいぶやんできてはいるけど、傘があるわけでもないし雨がもう少しやんだら、すぐに帰ろうね」
「それにしてもここら辺は人気がないね。メイリーンの言う通りだよ。皆が森に入っている間、何かの理由でふもとに来てしまえば、目撃者がいなかった事に納得できる。それに森の奥に入るならまだしもふもとであれば警戒もしないし……」
「だから、目印となるものが何もなかったんですね。森に入っていないから。誰にも声をかけなかったのは切羽つまっていた状況なのかもしれないですね?」
「このふもとで仮に何かあったとして、例えばほんとに人さらいが起きたとして、誰にも見つからずどこにその方を隠すのでしょうか」
「国境を越えるのであれば自分の意志でないと難しいかもね。できないことはないとはおもうけど。森に近いし、誰も見てないってのも考えにくい」
「隠す……か、僕ならそのまま拐ってしまうかもしれないけど……」
「でも例えばこことか?」
「……え?」
「……っ、誰だ!!」
シエルが急に身を乗り出し、窓の外を見る。数秒の沈黙の後
「人影が見えた気がするんだけど気のせいだったのかも」
とメイリーンの隣に戻ってきた
話の内容が内容だったためにメイリーンは回りに目を向けた。そして目を凝らしはじめたとき、がたっ!っと物音が立つ。
空気が変わる。
メイリーンとシエルは一瞬にして顔を会わす。
シエル様のまとう空気が違う。
たぶん私のまとっている空気も違う。
今、自分たちがまとうこの緊張感。あえて言葉にするとしたら
警戒。
「メイリーン。僕の後ろに」
私を庇うように前に出たシエルは右手に短剣を構え、左手にランプを持つ。ずっと御腰につけていて、ここの扉を壊した短剣である。
「誰か……いるのか?」
その言葉に返事は帰ってこない。
緊張した世界の中、雷雨の音が建物に響く
音がした方にシエルが2歩、3歩と歩きだす。そんなに広々としたログハウスではない。5m四方ほどの本当にミニ小屋だ。
ランプを照らした先に篭が落ちていた。
「花……篭?」
「シエル様……これ……」
よく見ると、ついさっき、そう、つい先ほど見ていた花。ユリアという女性を必死に探していた花屋の青年が、目印変わりに植えていた花。
「どうして、こんな所に」
「メイリーン……ここだ」
声の方角を見るとシエルがしゃがみ混んでいる。何がそこなの?除きこむと床下ボックスをシエルが開けた所だった。
「これ普通の貯蔵庫じゃない。細工されてる」
「……シエル様。人をよんできて下さい。このくらいの雨足。シエル様お一人なれば、15分、いや10分で帰れるのでは?」
「なにいってるのメイリーン。ここが、よくない場所とわかって君ひとり置いていけるわけないでしょ?」
「大丈夫です!そこに斧かけてありますから!」
「いやいやいやいや」
「シエル様おっしゃいました!今回は王子ではなく、臣下としてこの件にお手伝いして下さる、と、でしたらここは私の国、私が一番偉いのです。私が貴方に命令をします!!命令がダメでしたら、お願いです」
「私の部下を呼んできてください!1人でも二人でもよいのです。酔ってなくて確実に使えるものたちを」
少なくともミエルダとユスタは酒を飲みにいってないはず。あの二人が此方に向かってくれるだけでもありがたい。
「なにそれ、卑怯では?僕は君のお願い断れないよ」
「構いません、卑怯でも姑息でも、私たちはこうして勝利を掴みとってきたのですから!」
「見つけた以上、大将はここを離れません。シエル様、私無理はしないと約束します。ですからどうか」
「もぅ、わかった!わかったから!メイリーンは暑く語る時に僕の腕を両手でとるのやめて!そんなのものすごくずるいから!あと、これ持ってて!それから!ぜーったい無理しないでね!」
シエルは短剣をメイリーンに押し付けた後、駆け足に外に出ていった。
メイリーンは先ほどのシエルの時計を見る。今は8時45分。
9時15分くらいには戻ってくるだろうか。
制限時間は30分
メイリーンは斧にちらりと目線を送ったあと、細工された保存庫に手をかけた。




