29.やばい。誤魔化せるのかさっぱりわからない
冷や汗。
全然止まらない。最早洪水。防波堤も決壊しそうな量。
ともかく、あの状況下で下着姿はとりあえずいかんだろうと気づいたユスタがお着替えと表して、作戦会議を開いてくれた。
仕方ないから、アイリーナに報告して、エルウェン隊から、2人派遣してメイリーンとついでにユスタの鎧に入ってもらおう。そして私は先ほど合流した王女さまです。
シエルが来てるならと、参上しました王女さまです。
そうなった。
そんでもって、着替えといってもパジャマしかない。いや、だってさぁ鎧で来てるんだもん。ドレスなんて持ってくるわけなくね?鎧下用の服来てシエル様に会うわけにもいかないよね?ね??というかあれ下着とそうかわりないし!そしたらもぅパジャマしかないよね!
婚約者と会うのにパジャマ……どこの常識知らずの王女様だよ。そんなやついないよ。超泣きたい。派遣にされる人に絶対ドレス持ってきてと直筆で念押ししとこう。
鎧があちら此方に転がっているこの部屋に通す分けにも行かない。かといって私にあてがわれた部屋は英雄王の部屋だからそこに入る分けにもいかない。
というか、私はあの森に行こうとしてたんだっけ。
それなら、現場を見てみたいと言って、一度森にいこう。その間、部屋の準備はユスタたちに任せよう。そして、ラナックは飲み屋においてきた彼の従者と自分の鎧部下にフォローをいれることとなった。ユスタは私を行かせることに凄く反対していたが、現状この方法しか誤魔化すすべがないということで引いてくれた。
二人っきりで森の道へ向かう。なんだか非常時なのにデートみたいでドキドキする。
「シエル様先ほどはお見苦しい姿を……いや、今も変わらないですよね。寝る準備万端でして……」
現在はパジャマにシエル様の羽織を借りている状態。シエル様の香りに包まれるのと、自分の中の服装と辻褄合わせの嘘とで非常にドキドキが収まらない。
「僕以外の男にはできれば見せたくない姿だったねぇ」
や、もぅほんと胸なくてすみません。公害ですよねラナックにもこないだ言われました。
「でも僕にはうんと見せてくれてかまわないからね?」
え?何を?公害の話?大規模だよ。姉と比較するとさらにひどいよ。なんせ月とゴリラらしいから。
「そういえば、シエル様はどうして此方に?飲みにいったのでは?……………………と、聞きました。えぇ。他の騎士に」
「今回は本当にたまたまなんだなぁ。忘れものしたから、とりに来ただけなんだよねぇ。でも僕としてはこんなに近くにいるのに、メイリーンの顔見れないと思ってたからラッキーだよ」
「え……?」
どういうこと?あ、あれバレて、る?
え???いつ??
「……君の国で、馬で駆ければ数時間の所、だもんね?」
「あ、あぁ。そうなのです。はい。だから、その、あ、会いに、きま、来まして……」
「その……。久々に、会えて、う、嬉しいです」
「僕もものすごく嬉しいよ」
「ところでメイリーン、馬で向かうの?メイリーンて馬乗れるの?君が来た馬車は?」
「え?………………え??」
え??
もちろん馬に乗れるメイリーンは愛馬で来ており、馬車で来てる分けない。なんなら、私の視界のすみの馬小屋でスヤァ……している馬こそ私の愛馬です。
「えっと……」
ラナックもいない、ユスタもミエルダもいない。フォローしてくれる人が誰もいない。やば。これほんとにどうしよう……
「そういえば……ありませんね?」
とりあえず、とぼけてみた。
「っふはっ。…………く。そうだね。困ったね?」
「はい。こ、困り、ました」
本当に困っている。いろいろと。
「じゃあ、僕の馬に一緒に乗っていこうか」
「はい。………………へぁ?」
え?一緒?
と、思っている間に体が持ち上がる。
ふわりという感覚じゃなく。がっという感覚だった。強制連行に近い。
そして、そんなおとこらしいシエル様をみて頬をそめる自分がいたのも確か。
自分がすわったのをみてシエルもひょいと馬に乗る。
「メイリーン。僕にもたれかかってないと危ないよ」
といいながらシエル様は肩に手をおき、私との距離を縮める
ま、て、まって。近い。めちゃくちゃ近い。ゼロ距離!ゼロ距離ぃ!
シエル様の心音が聞こえる!それ以上に私の心音のが大きい!
これは無理、これは無理!私の心臓が脈打ちすぎてえらいことになってます!
「し、しえるさま、わたし、ふつうにすわれます、ふつうにすわれ、るのです、すわりなおしちゃあだめですか?」
「え?駄目」
「だめ!?なんで?すわれます!だいじょうぶ!すわれます!」
「落ち着こうメイリーン。テンパってる君が面白くて、僕のイタズラ心が止まらなくなってしまう。でも訳があって、君ネグリジェでしょ?そんな姿で馬に股がろうと思ったらスカートだいぶまくらないといけなくない?」
「おっしゃるとおり!でも、でも。」
おっしゃるとおりなんだけど!
「次はズボン型か、もう少し広がりのあるスカートタイプのネグリジェにしてね。僕の好みは後者だからよろしくね。」
「わかりました。つぎは、ふんわりぱじゃまします!だからふつうに……」
「わかってないねぇ。ほらいくよ」
「ひゃっ」
急に動いた反動で驚き、メイリーンはとっさに掴めるものを掴んだ。
とっさに掴めるものはここでいうなれば、シエルである。
つまり、驚いて抱きついた形になる。
そして、いつも股がっている故に、お姫様座りで馬に乗りなれていないメイリーンは彼に捕まるしかない。
「!!!????」
「…………っ……」
メイリーンは思った。もぅ頭真っ白でいいや。何も考えられないのは彼のせい。
心臓がものすごい音を奏でているのも、奏ですぎて死んだとしても彼のせい。姉に怒られるのは私じゃない。
「…………」
「はぁ~…………」
「不意討ちだなぁ」
頭上から降ってきた声はとてものびのびとしている。が、なんだかいつもと違う。
「こっちの台詞です。急に動いたのはシエル様ですよ」
なんだか攻められている空気にメイリーンは、冷静さを少し取り戻し抗議の声を上げた。
しかし、帰ってきたのは独白のような言葉。
「メイリーンはなんで今僕のものじゃないんだろうねー。いずれはそうかもしれないけどさぁ。そんなかわいいネグリジェ着て、僕の上着羽織って僕に抱きついているわけでしょ?これで僕のものじゃないってんだから、こっちが気が狂ってしまうよ。本当に今すぐにでも僕のものだって勘違いしたい」
「…………んえあ??どういう?」
「わからないよね。わからないのがメイリーンだもんねぇ」
「要はアイリーナ殿がいたら、とても怒られそうだねということだよ」
残念そうで、それでも少し期待されていうかのような視線がメイリーンに届く。
「ね、メイリーン。暴れないで、二人で落ちちゃうよ」
「う、はい。……シエル様は2人乗り慣れていらっしゃらないのですか?」確かに落ちたら痛い。
「なにその口ぶりメイリーンは慣れてるの?」
「昔お姉様と練習したのです」
姉が現在の自分のポジションの練習だったが。そして私がシエル様のポジションにいた。
お姫様座りで馬にのるのはかなり大変らしく、姉が平気な顔をして乗れるのにずいぶん練習に付き合わされた。
もたれたらいいじゃないと伝えたが、それでは意味ないそうだ。主導権は此方にないと意味はないのよ。必要な時に持たれて、必要でないときにはもたれない。これが大事なのわかる?
と、すごい剣幕で言われたののを覚えてる。
もたれた方が……楽なのになぁ。安心だし。眠たくなるし……
…………
………
「僕の腕の中ってそんなに安心しちゃうのかなぁ……?嬉しいような。悲しいような。というかどれだけ疲れていたの?そんなに気を張らせちゃったかなぁ」
自分の胸に頭を預ける少女は歩き始めて10分だというのにすぅすぅと寝息をたてている。
文句をいいつつ苦笑している王子が幸せそうなのは、もはやいうまでもない。




